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感想@アニメ「さんかく窓の外側は夜」第9話:交錯*ネタバレあり [アニメ感想]

アニメ「さんかく窓の外側は夜」の感想です。
今回は第9話「交錯」について記します。
以下の記述には、先の展開を含むネタバレがあります。
原作の漫画については読了済みです。
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さんかく窓の外側は夜 その後 (クロフネコミックス)

さんかく窓の外側は夜 その後 (クロフネコミックス)

  • 作者: ヤマシタ トモコ
  • 出版社/メーカー: リブレ
  • 発売日: 2021/12/20
  • メディア: コミック

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第9話「交錯」のあらすじはこちら。
https://sankakumado-anime.com/
 母親の手引きで先生の元から逃走する英莉可と逆木。母親はいつか英莉可を逃がそうと少しずつ手筈を整えていたらしい。自分の知らなかった母親の思いを知る英莉可。
 三角達とコンタクトを取った英莉可は、自分だけでなく先生にも、もうあんな仕事はして欲しくないと話す。協力することを決めた三角。しかし冷川は、そんな三角や英莉可の気持ちが理解できないようで――。

宗教施設の帳簿を盗むために
父親の事務所に潜入した英莉可ちゃんと逆木さんが、
彼女の母親や”先生”に見つかってしまってからのお話でした。

逆木さんの変化に目ざとく気付いた”先生”。
英莉可ちゃんの母親の機転により、
彼はその場で気絶しますが、
”先生”の呪いの力が死となって逆木さんを襲います。
英莉可ちゃんは動じながらも腹を据えると、
逆木さんを蝕む死に向かって語り掛けました。
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英莉可ちゃんがかつて
「悪いことにしか使えない」と自嘲していた力を、
状況によっては良いことにも使えるのだということが
具体的に示されました。
考えようによっては、
少し前に半澤刑事の妻を治したのが
最初だと言えるのかもしれませんが、
あれは彼女自身の後始末というか
やったことの責任を取るという意味合いの方が強いので、
ノーカンだと思います。

逆木さんがとりあえず生き返ると、
英莉可ちゃんの母親は小さな巾着を娘に渡し、
ここから早く逃げるように告げます。
袋の中に入れられていたのは、
車や家のものと思しき鍵にスマホ、通帳、
そして一枚の写真でした。
そこには、誕生日を祝われて幸せそうな
まだ幼い英莉可ちゃんの姿がありました。
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このシーン、
英莉可ちゃんの誕生日の数字が
スマホの暗証番号だという手がかりであるのは勿論ですが、
今も母親が英莉可ちゃんの写真を持っていたと分かる点から、
愛情をしっかりと感じられるのが、とても好きです。
前回の放送の終わりで、
父親が管理しているらしい宗教施設の金庫は
その数字で試してみても開かなかったと
わざわざ強調されていた点も、好きです。
(とはいえ、金庫はあくまで父親の仕事のものなので、
暗唱番号が娘の誕生日でなくても当たり前なのですが)

母親が実際に娘を逃がすまで、
かなりの時間を要してしまったけれど
以前から用意していたらしいこの巾着といい、
”先生”に使ったスタンガンといい、
彼女なりに覚悟を決めていたのだと分かるのも、
とても良かったです。
英莉可ちゃんが車中で泣きながらこぼしていたとおり、
母親はもっと早く実行するべきだったでしょう。
英莉可ちゃんにはそれを責める権利があります。
しかし逆木さんがすかさずフォローしたように、
母親にはそれができなかった事情がありました。
母親は、今後もこの罪と向き合っていくのでしょうが、
ここで実際に動き、娘の危機を救ったという事実は
非常に大きいです。
孤独を強く感じていた英莉可ちゃんにとっては
これ以上ない励みになったはずです。

英莉可ちゃんが前々から薄らと抱いていた
この仕事をできれば辞めたいという望みは、
三角くんたちとの出会いを経たことで
強い覚悟が伴うようになり、
はっきりとした目的に変わりましたが、
母親が味方だと判明したこの一件は、
そんな彼女の背中を
精神的にも物理的にも強く押すものでした。
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翌朝の英莉可ちゃんは、とても格好良かったです。



逃亡により以前のスマホを使えなくなった英莉可ちゃんは、
三角くんたちとの連絡手段を新たに持つために、
ボイスチャットのURLを記した手紙を
冷川さんの事務所宛に送ります。
ネット上ながらも皆が一堂に会したところで、
英莉可ちゃんが現状報告を行ないました。
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ハンドルネームに個性が出ているのが笑えます。
ちゃんと本名で入室した半澤刑事は、
きっとネットにあまり慣れていないんでしょうね。
また、三角くんについては、
名字の漢字の印象が強いせいか、
平仮名で「みか」とあるのを見る度に
一瞬「『みか』って誰?」となり、
「あ、そうか、三角くんのことか」と思い出すのを
繰り返しています……。

皆との会話の中で、英莉可ちゃんが、
自分が”先生”から逃げるだけでなく、
”先生”の仕事による被害者をもう出したくないと言い切り、
それが自分なりの贖罪だと続けました。
英莉可ちゃんの真摯な反省と熱意が伝わったのか、
三角くんに迎くん、半澤刑事は、
そんな彼女を後押しするような発言をして、
このチャットでの会話を締めましたが……
冷川さんだけは、終始、無言でした。

英莉可ちゃんの逃亡作戦に対して
冷川さんが興味を持っていないようなのは
以前から明らかでしたが、
三角くんは彼に不穏なものを感じてしまい、
慌てて問いただします。
幼少時から自分の全てを勝手に奪われ、
他人に無理を強いられる日々を送った冷川さんにしてみれば、
直接的でない三角くんたちのやり方は
まどろこしいものだと思えたようです。
平然としながら
「(”先生”から)全て奪えばいい」
「奪うことが(”先生”への)罰だ」と言う冷川さんに、
三角くんは驚き、戸惑い、咎めます。
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表面上はいつもの冷川さんのようでも、
発言に怒りが含まれているのを感じ取った三角くん。
すかさずそれを指摘したところ、
冷川さんは不快さを露わにします。

冷川さんの極端な考え方についていけない三角くんと、
どうして三角くんが感情を乱すのかが分からない冷川さんによる
いつものすれ違いなのですが、
少し前に三角くんが呪いの浄化を試みたり、
今回の三角くんの指摘が冷川さんの癇に障ったりしたことで、
この時は本当に冷川さんが感情的になっているのが
見て取れます。
ただ、その感情の始末の仕方が大人げない……!
冷川さんは三角くんをこの場から追い出すことで
一方的に会話を終えてしまいました。
口調こそ穏やかでしたが、
した事は癇癪を起こした子供と同じです。
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三角くんが追い払われた先は、
かつて除霊の仕事で訪れたことがある
一度入ったら出られない家でした。
空にある黒い三角形は、
前回の来訪時に冷川さんが開けていった穴だそうです。

案の定、ここに囚われてしまった三角くんは、
この家の主と融合したという池の中にあった呪いと
じっくり会話をします。
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これまで他人を呪うこととは無縁だった三角くんが、
誰かを呪わずには生きていけないという負の気持ちを
全く理解できないのは、当然のことです。
それでも、分からないからと言って手放さずに、
そんな冷川さんを何とかしたい、
彼が呪うのを止めたいと必死に望んだあたりは、
三角くんらしい言動でした。
その強い願いが本物で、
そうするべく、今、全力でもがいていることが示せたからか、
会話が一段落すると、
三角くんはその家から出られるようになりました。
その家の子孫代々を呪っているという池の中の呪いの感情は
あまりにも深すぎて、
きっと三角くんが何とかしようにも
どうにもならないレベルに達しているのかもしれませんが、
ここでの会話で
冷川さんを救いたいという三角くんの真摯さに当てられて、
呪いにも少し救われたところがあったのではないかと
私は邪推しています。
「助けるに値しない人はいない」と言われたことが、
実は嬉しかったのではないか、と。

さて、ここでは、
「憎しみが全てである人からそれを奪ったら、
あなたはその代わりになれるのか」という問いが出ました。
この時の三角くんは何も言いませんでしたが、
結局、今後の彼の言動がこの問いの答えとなり、
冷川さんを救うんだなぁと思ったら、
ちょっとしみじみとしてしまいました。
愛ですね、愛!



一度入ったら出られない家から脱出した三角くんは、
想定できる範囲で最悪の行き先
……つまり、”先生”の家に向かいます。
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案の定、冷川さんは、
かつて自分が大事なもの(呪い)を残していたそこに
ふらふらと向かっていました。
「(自分が三角くんを)支配する側にならなければ」
という台詞が不穏すぎますし、
三角くんの思いや優しさが
冷川さんにはまだ正しく伝わっていないと分かるので、
私も辛い気持ちになりました。



家の前で座っていた”先生”と初めて会う冷川さん。
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お互いに姿を見た瞬間、
相手のことがよく分かったようで、
冷川さんは「(自分の呪いを)返せ!」と言い、
”先生”は掴みどころのない様子で
それを入手した時のことを語り、過去を振り返ります。
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とばっちりを受けたヤクザ一家のシーンは、
残念ながら大幅に省略されていました。
きっと、アニメ初見の視聴者には
よく分からない内容になっていたと思います。
是非、原作の漫画を読んで補完してほしいです。
一番怖くて分かりやすかった坊ちゃんの変化が無かったのが、
とても残念でした。



そこにようやく三角くんが到着します。
このシーン、
”先生”は、かつて自身にかけた呪いのせいで、
彼の妻子についての単語は聞こえない
(耳にした瞬間に呪いが発動して、
音の情報が脳に達するまでにかき消される?)ので、
アニメではどんなふうに表現されるのかが楽しみでした。
先生の視点で描かれたCパートの最初では、
冷川さんが発した「三角くん」との呼びかけに、
ノイズが加えられていましたね。
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お互いにまだ知らないとはいえ、
息子との久々の再会により無意識に触発される”先生”。
愛しい記憶の一部が蘇ったこともあり、
”先生”は激しく混乱し、動揺し、
呪いの力の自制が効かなくなります。
三角くんは冷川さんを連れて逃げようとしますが……。

冷川さんがこぼした「私はそうされてきた」発言が、
絶望的に重いのが、見ていて辛かったです。
あの過去を知っている視聴者(読者)には
むちゃくちゃ響きますよね……。
加えて
「かつて自分がそうされたから、自分もする」
という考えは、
他人に反論の余地を与えないのがまずいです。
この発言を簡単に覆せる返答はまず無いですし、
もし「じゃあ、勝手にすればいい」と見放したら、
自分の目の前で事がどんどん悪い方に進むだなんて、
とても耐えられません。

そして、タイミングが悪いことに、
近所の住民が騒々しさを注意しに来た途端、
”先生”の呪いの力が暴走します。
咄嗟にどちらかを助けようとした三角くんは、
住民の方を選びます。
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三角くんが下した判断は適切でした。
ここはどう考えても、
能力が無い一般人の住民を守るべきです。
しかし、この決断に不満を覚えた冷川さんは、
三角くんへの不信感が募ったようで、
自ら作り出した空間の穴の中に消えていきました……。
(12/12追記)
空間に消えたのは、冷川さんでなく、
彼に飛ばされた三角くんたちだったようです。
(追記終わり)


かつて冷川さんが、
ごくごく普通のことを言うような感じで、
「人助けをすると損をする」と言った人であるのを踏まえれば、
そもそも三角くんが見知らぬ人を無償で助けた時点で
冷川さんには彼のことが理解できないでしょう。
しかもこの時は、
三角くんが助けたいと思う対象として、
どうでもいい人(住民)と、
運命の相手である私(冷川さん)の選択肢があったわけで。
そりゃ、冷川さんにしてみれば、
三角くんが自分を選ぶ以外はあり得ないです。
より弱者の方を守るという三角くんの信念や、
冷川さんなら自身でどうにかできるから大丈夫との判断は、
無いに等しいものだったようです。
悲しくて淋しいことだけれど、
この時の冷川さんの心の中には、
やはり彼自身しかいないのだと分かります。
そして、この危機的状況において、
三角くんが冷川さんに自分の判断理由を伝えることができず、
たとえそれが可能であっても、
すっかり落ち込んで自分の殻に閉じこもった冷川さんには
もう話を聞いてもらえなくなったというのが、厳しいです。

原作の漫画では、三角くんがこの直後に、
自分は悪手を打ったかもしれないと悔いますが、
ここはもう仕方が無いと思います。
もし三角くんが冷川さんを選んで助けていたら、
冷川さんは拗ねなかったかもしれないけれど、
あの住民には(後で助けるとしても)苦しい思いをさせるので、
三角くんが心に深い傷を負う羽目になったはずです。
何より、暴走した”先生”の呪いが及んでも、
冷川さんは平気でしたしね……。
三角くんに見捨てられたという心のダメージの方が
”先生”の呪いより大きかったというのは、
三角くんにとって予想外だった分、
失敗したと思い込みやすいのでしょうが、
決して間違いではなかったと思います。



さぁ、いよいよクライマックスですね!
三角くん、英莉可ちゃん、逆木さん、迎くん、半澤さん、
そして冷川さん……と、皆で大団円を掴むまでを、
私もしっかり見届けたいです。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。



続きはこちら。
【感想@アニメ「さんかく窓の外側は夜」第10話:覚悟*ネタバレあり】
https://himezakura.blog.ss-blog.jp/2021-12-12



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2021-12-05 20:23 


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