感想@アニメ「不滅のあなたへ」第4話:大きな器*ネタバレあり [アニメ感想]
TVアニメ「不滅のあなたへ」の感想です。
今回はこちらについて記します。
第4話:大きな器
以前の感想はこちら。
【感想@アニメ「不滅のあなたへ」第1話:最後のひとり*ネタバレあり】
https://himezakura.blog.ss-blog.jp/2021-04-26
【感想@アニメ「不滅のあなたへ」第2話:おとなしくない少女*ネタバレあり】
https://himezakura.blog.ss-blog.jp/2021-04-28
【感想@アニメ「不滅のあなたへ」第3話:小さな進化*ネタバレあり】
https://himezakura.blog.ss-blog.jp/2021-05-02
第4話のあらすじはこちら。
https://www.nhk.jp/p/fumetsunoanatae/ts/B2XW2X1ZMN/list/
フシの不死身の能力に興味を持ったハヤセは、フシ、マーチ、パロナ、そして身分を明かしたピオランをヤノメ国へ連行する。華やかで活気にあふれたヤノメの街を楽しむフシたち。しかし、ハヤセが密(ひそ)かに進める恐ろしい企てにより、フシたちの自由が危うくなろうとしていた。
ハヤセの機転により、オニグマへの生贄から一転、
ヤノメ人として生きることを許されたマーチ。
馬車での長い移動の後にようやく到着できたヤノメの街では、
ハヤセの大盤振る舞いにより、
騒がしい街の風景や美味しい食べ物を堪能しますが、
ハヤセが単なる親切心でそうするわけがなく、
案の定、睡眠薬で強制的に眠らされてしまいます。
ハヤセは、良くも悪くも生粋の軍人でした。
ヤノメがどういう国なのかはよく分かりませんが、
街の賑わいっぷりからして豊かなのでしょうし、
ニナンナを精神的に支配しようとしているあたり、
領土を広げる目的においては
(実際に戦争するかどうかは置いておくとして)
好戦的な部分があるのかもしれません。
ハヤセがフシに目を付けたのもそれですよね。
フシを命令に忠実な兵士に仕立て上げた後、
戦地の最前線に放り込むなんていう目論見は、
私ですら容易に想像できました。
ハヤセにとってマーチは、当初こそ護衛の対象でしたが、
オニグマが瀕死となり、捕獲にも成功したとなっては、
フシの世話以外に価値がなくなっていたのが
ちょっと悲しかったです。
尤も、マーチが何者でもなく、
どこにでもいるただの幼い女の子であるのを踏まえれば、
ハヤセの扱い方は当然でしょう。
もしハヤセが軍人でなく、情けに篤い人だったならば、
祭壇でマーチとパロナを見逃したはずです。
でもハヤセは、徹頭徹尾、軍人なんですよね……。
仮に祭壇でマーチたちを逃がしたなら、
これまで悪しき因習を利用してニナンナを縛っていたヤノメに
不利益を齎してしまいます。
オニグマらしきものがいなくなった今、
あの生贄の儀式を来年以降も継続するのかも含めて、
ヤノメの国としての方針が分からない状態では、
真実を知る者をうかうかと手放すわけにはいきません。
まさにマーチたち二人は、
あそこでハヤセに殺されて死ぬか、
ヤノメ人として生きるかの二択だったなと
改めて思いました。
ハヤセの目的が秘められていたとはいえ、
ヤノメの街での描写を見るのは楽しかったです。
フシだけでなくマーチもパロナも、
あそこまで大勢の人が行き来するのは初めて見たのでしょうし、
村では店という概念すら持っていなかったのかもしれません。
年相応に無邪気にはしゃぐマーチがとても可愛くて、
私にも良い息抜きとなりました。
「頭かゆいかゆい棒」の誤解のくだりは、
何度見ても笑ってしまいます。
マーチは生贄に選ばれてから辛いことばかりでしたが、
ニナンナの村にいては知らなかった世界を見聞きできたのは、
救いでした。
手紙の一件は、ヤノメとニナンナの違い(文明の大きな差)を
よく表していたと思います。
パロナが興味を示した地図をハヤセがすぐに丸めたあたりも、
ハヤセが厚意を見せているのはあくまで建前で、
実は軍人として捕虜には余計な情報を与えない冷たさがあるのだと、
よく分かりました。
お団子を上手に食べられるようになったフシについても、
興味深く見ました。
お団子と共に齧った串の先が口の中に刺さる
→痛みや出血など、口の中に不快感が生じる
→その不快感を回避するためにお団子だけ食べるようにする
の流れが、実に素晴らしかったです。
また、この時点でのフシはまだ「痛い」を知らないんですよね。
負傷してもすぐに治るとはいえ、
僅か一瞬でも痛みをちゃんと感じているはずなのに、
ここではそれを表現するすべを所持していないせいで
言えませんでした。
その後、フシが「いたい」という単語を覚えてから
そればかりを口にしているのとは、対照的でした。
「ありがとう(ありがとオ)」と同じく
覚えたての「いたい(いタい)」の言葉を連発していた点が、
まるで喋り始めの子供のようだったフシ。
そんなフシが再び目にしたオニグマは、本当に痛々しく、
可哀相だなと思わずにはいられなかったです。
マーチの「あなたは人間のお肉が好きなただの熊」という言い方には
「人間の肉が好きな熊って……」とツッコミを入れたくなりましたが、
それを悪いこととして責めずに淡々と言ったのが
マーチが事実をもって対象を本質的に語ったのだという点に繋がるのだと
思いました。
フシの世話を積極的にしていたマーチは、
ここでも瀕死のオニグマの棘(刺さっている矢)を取ったり、
傷口に薬らしきものを塗ったり、食べ物を口に運んだりと、
甲斐甲斐しい動きをしていました。
マーチは普段からままごとを頻繁にしていたお陰で
ぬいぐるみを相手にした母としての疑似体験は豊富だったでしょうが、
深く傷ついたオニグマを懸命に世話する彼女は
単なる「ままごと遊び」で終わっていませんでした。
元からの面倒見の良い性格ということもあり、
特にオニグマに「よしよし」と言いながら優しく撫でるところは、
何とも言えない温かみが伝わってきて、
まるで母のような深い慈愛も強く感じました。
オニグマにはそれに応えるだけの力が既に無かったようなのが
とても残念だったものの、
きっとオニグマが安らかな気持ちで逝けたのは明らかです。
最後の「ありがとオ」はフシが発したように思えましたが、
オニグマの心情であるのは間違いないはずです。
さて、マーチを救うために頑張ってきたパロナ。
この放送では、その行動の原点であろう
「おねーちゃん」との過去が描かれました。
原作の漫画では明言されていませんでしたが、
やはりお姉ちゃんはパロナの代わりに生贄になったそうです。
その辛い事実を踏まえると、当時、村にいた子供は
パロナだけだったということになります。
しかも、お姉ちゃんの顔に墨が無かったことからして、
既に大人だった(でも一番年下であろう)彼女が選ばれたあたり、
儀式で最も重要な要素のはずの
「穢れの無い少女を生贄として捧げる」という前提が
あっさり崩れていたことが分かります。
もし本当にそこが大事だというなら、
改めて他の村で子供を選び直すはずなので……。
(尤も、対象の村も年ごとに選んでいるようなので、
優先順位があったのかもしれません)
パロナとマーチがまだ村にいた頃に、
外で(誰にでも見られる状況で)二人が仲良く遊んでいても
マーチの両親が咎めず、好意的な対応をしていたり、
パロナが男性に交じって弓の練習をしていたりしたことから、
村人による彼女への迫害は今はもう無いようです。
それでもパロナの孤独は相当なものだったようで、
だからこそ、偏見もなく接してくるマーチの存在が
有難くて嬉しくて、大事だったのだと分かりました。
もしお姉ちゃんの機転が無かったなら、
パロナが因習を疑うことはなかったでしょうし、
そもそも生贄としてとっくに死んでしまっていましたし、
マーチの話まで繋がらなかったと思うと、
私も感慨深くなりました。
お話のシリアス要素を担ってばかりのパロナですが、
ヤノメでうどんを啜る時には
マーチと一緒にお箸を頭に刺しているのがおかしかったです。
「頭かゆいかゆい棒、恐るべし」でした。
いよいよ次週でマーチ編は完結するのでしょうか。
既に漫画を読んだことで、この先の展開を知っているからこそ、
フシたちの必死の頑張りが映像でどう描かれるのかが、
とても楽しみです。
2021-05-04 11:57
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