さくらもちモチ

感想@映画「ソラニン」*ネタバレあり　[映画・舞台] [編集]

映画「ソラニン」の感想です。

私は原作の漫画を読んでいません。
以下の記述にはネタバレがあります。


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私がこの作品に興味を持ったきっかけは、
ソラニンの作中で出てくるウサギのマスコット
（顔に×印がついている）が
戦国BASARAでの最愛の武将・竹中半兵衛のAAに
似ていることでしたζ･×･ζ

公開前にテレビか映画館かでCMも見ていて
その時に主人公の井上芽衣子（宮崎あおいさん）が
ライヴで歌をうたっているシーンが印象に残っていました。
なので、この映画を見始めた当初、
芽衣子が観客で、
その恋人・種田成男（高良健吾さん）がボーカル兼ギターであることに、
少し面食らいました。
私の記憶違いかな？と思ったんです。

ただ、冒頭が主人公のモノローグで始まり、
「あの時の私たちはああだったよね」と過去を振り返る時は
大抵、主要な登場人物の誰かが亡くなるパターンが多いので、
種田が途中で死んで、その夢を芽衣子が引き継ぐのかなとは
推測できました。



中盤までは、種田と芽衣子が悩まされる現実の閉塞感が凄く、
リアルに描かれているので、見ていて結構辛いです。
確かに、種田も芽衣子も、
いかにも“今どきの若者”という感じに描かれていて、
堪え性がなく、一見ちゃらんぽらんに見えます。
ただ、当人たちも決してなまけているわけではありません。
日々の不満に悩まされ、未来に不安になり、
それらを上手く発散できないまま、
時々、負の感情を持て余して爆発させてしまいます。
二人とも年齢的にはとっくに大人なんですが
精神が未熟なんですよね。

なので、当初は経済的な柱だった芽衣子が会社を辞めたのを機に、
二人の関係が徐々に行き詰まっていきます。
プロのミュージシャンになる！唄いたいことをうたう！という
夢を掲げていた種田を応援するだけだった芽衣子が、
現実への不満や不安を募らせるにつれて、
次第に、彼に自分の夢を重ねるようになり、依存してしまいます。
また、種田も、上手くいかない現実に迷走した後、
芽衣子によって背負わされる夢を負担に思うようになります。

種田が発した「俺が何とかする」という言葉は、
言った当人の種田自身も、それを聞いた時の芽衣子も
冗談半分というか、
話の流れでただ口にしてしまった無責任なもののはずだったのに
（二人ともそれを分かっていたのに）
それを聞いたことで無意識に箍が外れてしまった芽衣子は
あっさりと会社を辞めてしまい、
その言葉に重い意味を持たせてしまいます。
作中で、芽衣子が二度ほど
「種田が『俺が何とかする』って言ったんじゃない！」と
彼を詰るシーンがありまして、
勿論、そう言われる種田に悪いところはあるんですが、
そう言ってしまう芽衣子も、
精神的に彼に寄生しているのがよく出ていたと思います。



種田が芽衣子のアパートを出ていった後、
芽衣子が親友に向かって
「この五日間が楽だった」と懺悔するように呟きますが、
彼がいなくなったことで、
それまで自分たちがこんなにも追いつめられていたんだと
芽衣子は自覚したんだと思います。
そして、お互いに気持ちを改めて
二人一緒に頑張っていこう！と決めた後に起きた種田の死
──これは、事前に想像がついていても悲しかったです。

そして、このどうしようもない悲しみは、
種田の遺品であるギターと共に、芽衣子を変えました。
ただ、私が想像したような「種田の夢を継ぐ」のではなく、
芽衣子が彼の代わりにギターを弾き、歌をうたうことで
彼と共に在るのを感じているようでした。
本格的にギターを弾こうと決めた時から、
芽衣子は本当に、いい顔をするようになっています。
心の中に一本の大きな柱が立ったというか、
自分の中で大事なものが確立したので、
些細なことでは動じなくなったようでした。
これが“心も大人になった”ことなんだなと思えました。



芽衣子の歌も良かったです。
洋服ブランドの「earth,music,ecology」のCMでは
宮崎あおいさんが調子っぱずれなブルーハーツを披露していましたが、
そのCMでわざとらしいと感じられた大袈裟な感じや気負いもなく、
最後まで好ましく聞けました。
歌唱自体は、素人さんの域を出ていないので、
決して上手くはないのですが（すみません）、
そこが逆に、
数カ月前まで音楽とは関わってなかった芽衣子らしかったです。



不満だらけの現実に潰されそうになる
芽衣子と種田の描写は長く、
ちょっとだらだらとしている部分もありますが、
終盤の、芽衣子がギターを弾くようになってからは面白いので
そこまで頑張って見て頂きたいです。
最後には、やりきった芽衣子の笑顔を見ることができ、
気持ちのよい爽快感を味わえると思います。