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感想:ドラマ「不毛地帯」第19話(最終回) 約束の地*ネタバレあり [テレビドラマ感想]

フジテレビのドラマ「不毛地帯」の感想です。
今回は第19話(最終話)「約束の地」です。

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以下の記述にはネタバレを含みます。
私は原作の小説を読んでいません。


前回の感想はこちら。
第18話「汚れた英雄」

各話の感想記事のURLは
他作品と合わせてこちらでまとめています。
テレビドラマ感想一覧:2009年秋冬 放送開始作品


────

今回が最終話でした!!
骨太の素晴らしい作品なのに、
最終回直前の特番もなければ、
放送時間の延長も無し(一時間放送)なのは
少々淋しかったです。
(朝のフジテレビの情報番組「とくダネ!」で、
以前からこの番組を押していた笠井アナが
今日が最終回である事に対して少し触れていましたが……)



一か八かの賭けに兵頭君が勝って
五号井(せん)からやっと石油が出た時のことについて。

会社としては、石油開発に対して
60億円もの大金をすでに突っ込んでいるので
ここで石油を掘り当てないと、
会社としての面子が丸潰れになるのは勿論のこと、
大損害を被るわけですが、
ここで壱岐正を完全に倒しておきたかった大門社長と里井副社長が
この吉報を素直に喜べなかったらしいのが
見ていて大変面白かったです。
また、腰巾着である角田が、
壱岐正に向かって一番早く──いの一番にお礼を言ったのも、
いかにも彼らしいなと思いましたww


さて、この石油開発の成功を手土産にさせて
大門社長に対して勇退を勧めた壱岐正が、
会社(近畿商事)を守る為に、
大門社長が綿花相場で大損をしている情報を
新聞社に売りました……。
この物語の主人公は、壱岐正です。
よって、作中での壱岐正の行動は、
どんな事でも常に正当化されるのが基本です。
たとえ今回のように壱岐正が悪事を働いても、
その心情は視聴者から共感され、時には同情を受けます。
壱岐正が自身の辞表を出した上で、
大門社長に勇退を再び勧めたシーンでは
“制作側がそういう風に描いている”と分かっていても、
壱岐正の辛い胸中がひしひしと伝わってきて、
見ていて辛かったです。
そして、壱岐正の心からの言葉を聞いていたら、
この二人にも、近畿商事にも、
長い年月が等しく流れたのだと
強く実感しました。
「壱岐君、退陣や」「……はい」の締めは
壱岐正として涙ぐんだ唐沢寿明さんの熱演もあって
大変素晴らしいシーンだったと思います。

二人の会話のシーンが良かったからこそ、
近畿商事の役員たちに
「ほんまにありがとう」と礼を言う大門社長の
抜け殻のような小さな姿と、
次世代に会社を任せる為に
未練もなく近畿商事を去る旨を発表した壱岐正の潔さが
際立ったと思います。

回想で出てきた大門社長も壱岐正も若くて
驚きました。
壱岐正も大門社長も、上手く老けましたね……。
というか、老け演技が自然だったんだなと
この最終回を見て、改めて思いました。
大門社長の壱岐正に対する感情も、
最初は「壱岐くんにだったら社長の地位を譲ってもいい」と
余裕たっぷりに言っていたのに、
ここ数回は
「壱岐の野郎、最初から(自分を)追い出す気やったんや」に
変わっていた辺りが
何とも淋しかったです。
壱岐に対する感情に悪意が含むようになったのもそうですが、
大門社長が地位と名誉に固執すればするほど、
彼はもう昔の彼ではない(会社を牽引する力がない)と
感じられました。



壱岐正と秋津千里さんの関係も
とりあえず終わりを迎えました。
しかし、進んで含みを持たせた事で、
今後、もしかしたら二人が一緒になる可能性と、
壱岐正に対する千里さんの深い愛情を感じられたのは
大変良かったと思います。
正直に言うと、最後の千里さんとの会話については、
彼女の物わかりが良過ぎだなぁと思わないでもなかったですが、
ここをきれいに清算しておかないと
壱岐正の人生に汚点がついたまま放送が終わりますので、
こうなるのは当然かなとも思いました。



壱岐正が、亡き谷川正治さんの意志を継いで
朔風会(さくふうかい)の会長となり、
未だシベリアの地に眠る戦没者の遺骨の引き上げに対して
力を尽くそうと決めた件について。

壱岐正が、根っからの商社マンらしい鮫島辰三に、
空港で「辞めるなよ、辞めるな!」と言われて
おもわずニヤッと笑ってしまった愛嬌も見せましたが、
地位も名誉も捨てた部分には
彼の清廉潔白さ、情の深さがよく出ていたと思います。
とっくに戦争は終わって過去のものとなり、
日本は充分な高度経済成長も果たしたのに、
未だにこの人の心は
シベリアの白い大地に囚われたままなんですね。
壱岐正が、かつて「二度と行かない」と決めたソ連の地を
自らの意志で踏み、再び雪中を歩き、
昔の仲間が眠る墓に参ったシーンを見ていたら、
(モスクワに行くのには強い抵抗があったけれど
シベリアには行けたというのがもう……。
尤も、行きたくないモスクワに行きを経たからこそ
このシベリア行きがあったとも言えますが)
もしかしたら、この冷たい地で亡くなった戦没者の魂以上に、
壱岐正の心の方が
この地に楔を埋め込まれてしまったようだとさえ思えました。
見ていて、私も涙が止まらなかったです。

一面の雪、そこに立つ多くの墓標の映像……
そして、カメラが段々後ろに引いていくと、
直立する壱岐正の姿ですら墓標の一本のようになりました。
この映像を見て、私は
言葉は変ですが、
壱岐正は生きた墓標だったんだなぁと思いました。
彼の心は、常にシベリアの大地に眠る抑留者たちと共にあり、
これは今後も変わらないのでしょう。
おそらく、壱岐正自身が亡くなるまで、
彼の戦争は終わらないはずです。
最後の映像は、壱岐正の心象風景でもあったと思います。



こちらは大変素晴らしいドラマだったと思います。
この半年間、毎回毎回、続きを見るのが楽しみでした。
こちらは、視聴率が振るわなかった割に
世間の評価が割と高めであるのを思うと、
見る人は見る/見ない人は見ない……と、
視聴者の好みがはっきりと分かれた作品だったかもしれません。
しかし、最初から最後までリアルタイムで放送を見た
一視聴者としての私は、
この作品を見られて、とても幸せでした。

確か最初の予定では、
10話+10話の全20話だったと思うので
もしかしたら1話分が端折られちゃったかもしれないのが
残念と言えばそうでした。
(でも、この最終回の駆け足展開は悪くなかったと思います。
テンポが良かったですし、何より、
最後、シベリアで壱岐正に墓標の前で泣かせる事で
彼の全てを語ったのが素晴らしかったです)

スタッフ様、キャスト様、ありがとうございました。
私の拙い感想をお読み下さった方もありがとうございます。


とりあえず私は、
「ドラマが終わるまで!」と思って封印していた原作の小説を
これから読むつもりです。
とても楽しみです!






────

感想は以上です。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

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2010-03-12 23:55  nice!(2)  コメント(0) 
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