映画「THE FIRST SLAM DUNK」感想 [映画・舞台]
映画「THE FIRST SLAM DUNK」の感想です。
以下の記述には軽いネタバレがあります。
https://slamdunk-movie.jp/
THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE (愛蔵版コミックス)
- 作者: 井上 雄彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2022/12/15
- メディア: コミック
ようやく時間が取れたので、先週、映画館で観てきました。
劇場版のスラムダンク!!
最新作!!
私は週刊少年ジャンプでの連載をリアルタイムで読んでいた
まさにスラダン世代です。
当時は紙の単行本をせっせと買い集め、
テレビアニメもちゃんと見ていた記憶があります。
なので、連載が打ち切りになったわけではないのに
ああいう形で唐突に終わってしまったのは、
とてもショックでした。
好きなキャラクターは、流川楓くんです!
叶うものなら作中の親衛隊に入りたかったです……。
原作者の井上先生による映画化が決定!との報を
初めて知った時は、
勿論、めちゃくちゃ喜びました。
今はそれほど興味が無く、
単行本も数度の転居で処分してしまったようで、
鑑賞前に久し振りに読み直そうにも叶いませんでしたが、
やはりスラムダンクは
私の魂に刻まれた作品の一つなので、大歓迎でした。
まさか令和の時代で
スラムダンクの新作映画を観られるなんて
嘘みたいだと思いました。
発表時にネットが荒れた声優さんの変更にも、
前売り券の販売方法の是非はともかく、
私は全く気にならなかったです。
これは、原作の漫画と比べると
アニメには深い思い入れがなかったのと、
新しい声優さんが割と好きだったのと、
そもそも私が声優さんにこだわりを持ってなかったのが、
理由です。
昨年秋に別の映画を鑑賞した際に
このスラムダンクの予告映像も観ました。
わぁ……!と興奮したのもつかの間、
映画がCGで作られているとは知らなかったので、
ぬるぬるとした独特の動きに大変戸惑いました。
「え? ずっとこれ? この動きが続くの?」と、
不安も募りました。
そして公開初日!
Twitterでは朝から関連の単語がトレンド入りし、
意識的に避けなければ
内容のネタバレをうっかり見てしまう状況でした。
私もそれをざっと見たところ、
上記の不安要素も含めて大絶賛の嵐だったので、
これはもう一日も早く観に行かねば!と決めました。
しかし数日が経過すると、
絶賛評価ばかりだった反動がきたのか、
観た人の気持ちも落ち着いてきたのか、
そうではない感想が多く目につくようになりました。
そんな中、
・今回の映画の主役は宮城リョータ
・他のチームメイトについてはあまり掘り下げられていない
・流川の出番もあまりなく、ほぼ空気のような状態
・リョータの母親の言動に問題がある
という感想が特に気になった結果、
年末年始を迎えて忙しくなったせいもあって、
今の今までずっと延び延びになってしまいました……。
前置きが長くなりました。
「まぁ、半年もすれば配信サイトで観れるだろうけど、
やっぱりまだ気になっているから一度は観ておきたいし、
本当に内容が自分に合わなかったとしても
話題にできるからいいや……」と、
観なければ良かったと後悔するのも覚悟した上で、
映画館に行きました。
結果をまず書きますと……
嬉しい方に予想が外れました!!!!!
めちゃくちゃ良かったです!!!!
鉛筆画でさらさらとリョータが描かれた後、
残りの湘北メンバーの四人が足され、
その後に山王の五人が改めて描かれ……というOPに
まず感動させられてから、
怒涛の終盤を経てEDのスタッフロールが流れるまで
あっという間でした。
上映時間は約2時間でしたが、
長いとは全く感じず、
「え? もう終わり」と思うぐらい熱中できましたし、
凄く凄く面白かったです。
特に、湘北対山王戦の試合のシーンが最高でした。
私は、原作の漫画を最後に読んでから
十年以上の月日が経過しており、
試合の詳細については勿論のこと、
大雑把な試合経過についてもうろ覚えの状態でした。
ぼんやりと記憶にあるのは……
途中で花道が背中を痛めて大変なことになるのと、
三井さんがスタミナ切れを起こしてバテバテになるのと、
最後、紙の漫画では見開き2ページで、
桜木と流川が無言で手を叩き合い、讃え合うというシーンが
あったということです。
なので、「どうなるんだっけ……」と
ほぼ覚えていない記憶を必死に探しつつ、
固唾を飲んで試合の行方を見守りながら、
湘北の得点シーンでは
(特に三井さんが3Pシュートを決めるシーンでは)、
他の観客が近くにいなかったこともあり、
思わず小さくガッツポーズをしたり、
音を出さない程度の拍手をしたりしていました。
この映画は、対山王戦が主に描かれつつ、
時々リョータの過去が入れられるという構成でした。
それぞれにはどうしても、温度差というか
テンションの差が発生してしまうので、
割と序盤から
「試合のシーンだけ抽出して観たい」と思っただけでなく、
見終わった後も同じことをより強く思いました。
攻防が目まぐるしく変わる試合の描写は、
終始、臨場感がたっぷりでした。
まるで、凄く面白いバスケの試合を
マルチアングルで観ている感じがしました。
CGとはいえ映画はあくまで二次元なのに、
実際のバスケの試合を観ているような錯覚にも
何度か陥りました。
各キャラクターの動きもカメラワークもリアルで、
没入感が半端なく凄かったです。
特に素晴らしかったのは、
最後の最後……時間が残り僅かになってからの表現です。
山王にずっと大差を付けられていた湘北が、
終盤でようやく逆転に成功し、
普通であればこれで勝てる……と思えたところで、
まだ全く諦めていない山王が反撃に出るシーンから、
画面の音が消え、色も消え、
線画のみが早回しでバババと動いていったのは、
いわゆる「スポーツ選手がゾーンに入った」感覚というか、
極限まで集中できた時の体感そのものだったので、
見ていてゾクゾクと身震いするほど興奮しました。
このシーンは、本当に凄かったです!
試合が終了し、
スクリーンにスタッフロールが流れ始めてからも、
私はそこを思い出しながら感嘆していました。
鑑賞後も、余韻に浸るというか、
あのシーンでのドキドキがずっと止まらず、
時間が少し経ってから軽い頭痛に襲われたほど
興奮状態が続いてしまいました。
重ねてになりますが、
試合のシーンが圧巻で、最高だったので、
円盤化の際は購入特典として
それだけでまとめた映像を収録してほしいです。
試合に深く深く浸りたいです。
次は、シナリオについてです。
上記のとおり、
今作はリョータが主人公だということを知った上で
鑑賞したので、
私は戸惑わずに済みました。
ただ、もしそれを知らずに今作を観たとしたら、
やはりテレビアニメ版のように
花道が主人公である話を強く求めたと思うので、
大きな不満に繋がった可能性は高いです。
出番が少ないと言われていた流川については、
私には許容範囲内だと思えました。
確かに、流川の出番は多くなく、
もっと観たかったとの思いは私の中にもあります。
しかし、原作の時点で見どころ満載だった山王戦を
再構築して描き直すにあたり、
リョータが主人公に据えられたのだから、
流川を含む他のメンバーの描写は最低限に留め、
残り全てをリョータに当てるという構成は、
当然だと思いました。
それに、流川については、
最後の花道との感動のタッチは当然として、
彼が誰よりも負けず嫌いであるというのが
ちゃんと描かれていたので、
そこを大事にしてもらいたかった私には、
不満までには至らなかったです。
そしてリョータの母親の言動については、
彼女を毒親だと評する感想もネットで見ましたが、
私はそうは思わなかったです。
私は結婚しておらず、子供もいないので、
夫だけでなく子供も失ってしまった
(一家の大黒柱を続けて亡くした)彼女の悲しみを、
私がちゃんと理解することは難しいのかもしれません。
しかし、彼女とは年齢が近いせいか、
無理なく自然に共感できました。
特に、母親が長男の遺品を無理に整理しようとしたり、
彼の服を勝手に着たリョータを罵ったりするシーンは、
観客によって評価が分かれる部分かもしれませんが、
私は、強がることしかできなかった彼女の心境や、
思わずリョータに声を荒らげてしまった時の怒りは、
仕方が無いことだったと受け止められています。
現実の辛さに打ちひしがれている時だからこそ、
心がまいってしまって、
普段以上に感情的になるのはよくあることです。
そもそも他人より遠慮がない家族間の会話であれば、
あの程度の諍いは現実でも珍しくはないです。
肉親を二人も亡くしてただでさえ辛いリョータが、
母親に責められたことで心に傷を負い、孤独を募らせた件は、
可哀相でしたし、残念でもありましたが、
母親の精神状態も悪かったのを踏まえると、
彼女を毒親と呼んで責めるのはちょっと違うかなと思いました。
それは、彼女に限らず母親というものは聖人ではないし、
子供に対して常に優しい存在でもないと
私が日頃から思っているからかもしれません。
母親なら息子に当たり散らすなどもってのほかだと
憤る人もいるかもしれませんが、
結局のところ、母親も一人の人間です。
子供に当たりたくないという思いはあっても
状況と感情次第でついやってしまう時はあるでしょう。
それにあの時のリョータは、
彼以上に深い悲しみに母親の心が蝕まれているのを
ちゃんと察していた気がします。
(リョータは良い子なので、
彼自身も相当辛いけれど、
より辛そうにしている母親が相手では、
もう何も言えなくなってしまうと思います)
声優さんの変更については、最初に記したとおり、
テレビアニメに深い思い入れが無かったからか、
大丈夫……なはずでした。
実際、ほとんどが大丈夫でした。
でも!!
観る前は一番歓迎できていた木村昴さんの声が、
私には無理でした。
これには、自分のことながらちょっと驚きました……。
思い入れはなかったとしても、
かつてはずっと見ていたアニメだったからか、
花道の初代声優である草尾毅さんの声の記憶は、
きっと私の脳にしっかりと残っていたようです。
私は木村昴さんのファンなので、
彼がどんなふうに花道として喋るのかは
公開前から大体想像できていたものの、
実際にこの映画で花道の台詞を聞いてみたら、
これじゃない感がひときわ強かったです。
何なら、この映画の花道には、
木村さんが声を当てているドラえもんのジャイアンを
思い出してしまう時もありました。
別に木村さんが悪いわけではなく、
単に私の脳が違和感に耐えられなかっただけなので、
おそらく暫くすれば自然に慣れるとは思います。
しかし、放送が毎週あるテレビアニメと異なり、
慣れるまで映画の鑑賞を繰り返すのは難しいので、
下手をすればずっと慣れないままでいる可能性も
無いわけではないのを思うと、
残念な気持ちになります。
映画では、CMで使われているED主題歌の印象が
やたらと強いですが、
The Birthdayが歌うOP主題歌も良かったです。
私はTMGEが好きだったので……
チバさんの歌声を聞くと、脳内のスイッチが勝手に入ります。
作中も、音楽の使い方が非常に上手いなと思いました。
特に湘北が有利となるシーンでは、
動画の勢いと音楽の爽快感が相まって、
観ていて気持ちが良かったです。
同時に、劇伴が素晴らしいからこそ、
最後の無音のシーンがより効果的になるという
相乗効果もありました。
この映画の制作に関わった人の本気と愛を、
まざまざと見せつけられた作品でした。
原作の漫画に対して強いこだわりを持っている人ほど
あれが足りないこれが駄目だという感じで
今作に対して不満を感じやすいのかもしれないのを思うと、
私のように軽い興味(+思い入れ)しかない人間の方が
より楽しめるのかもしれません。
ただ、上記の無音のシーンは、
家のテレビでの視聴では最大限の興奮を得られず、
とても勿体ないので、
もし観ようか否かで迷っている方がいるなら、
映画館の大スクリーンでの鑑賞が可能なうちに、
是非、体験してほしいです。
興奮で満たされた大きな水槽の中に
ドボンと勢いよく叩き落されたような衝撃を、
味わっていただきたいです。
お勧めです!
【おまけ】
映画化決定の報を最初に知った時から、
湘北カラーの赤い服で絶対に観ると決めており、
それが叶えられたのも嬉しかったです。
【20230120:裾スカラップJSK(metamorphose temps de fille)】
https://himezakura.blog.ss-blog.jp/2023-02-04-2
2023-01-26 16:43
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