さくらもちモチ

感想@劇場版「きのう何食べた？」*ネタバレあり　[映画・舞台] [編集]

劇場版「きのう何食べた？」の感想です。
以下の記述にはネタバレを含みます。

https://kinounanitabeta-movie.jp/

私はよしながふみ先生のファンで、
かつては漫画の単行本を必ず買い、
同人誌目当てでコミケの長蛇の列にも並んでいましたが、
ここ五、六年は、熱がちょっと落ち着いている感じです。
この「何食べ」についても途中から全く追っておらず、
ドラマも見たり見なかったりしていました。
（劇場版の公開に合わせて、現在BSテレ東で放送中のものは、
欠かさず見ています）

「何食べ」の京都編と言えば、
かなり前のエピソードですし、
私も単行本で読んだ覚えがありましたので、
最近の彼らの話を知らなくても大丈夫かなと思えたことから、
早速、映画館に足を運びました。



まず、序盤でテレビドラマ版のOPの曲が流れてきた上に、
映像もちゃんとそれに合わせて作られていて、
スマホによって二人のいちゃいちゃが映されている仕様だったのが、
最高でした！
ドラマを中途半端にしか見ていない私ですら嬉しかったので、
ドラマ版のファンにはもうもうたまらなかったはずです。
映画になっても特に何かが大きく変わることはなく、
同性カップルである彼ら二人の日常が楽しく描かれていました。
ただ、これはこの映画の欠点でもあり、
「わざわざ映画化する必要があったのか？」とも思いました。
この内容なら、去年のお正月のように
二時間のスペシャル番組として放送しても良かったと思います。
とはいえ、観客動員数はかなり良いようなので、
お金を払ってでもこの作品を観たい客がたくさんいる！と
世間にちゃんと示せたのを思えば、
映画化した甲斐はあったと言えます。
映画が成功すれば、その後の続編も作りやすくなりますしね。



上記のとおり、私が元々よしながさんの作品が好きで、
「何食べ」についても、部分的にとはいえ、
漫画を読んだりドラマを見たりしていたということもあり、
今回の劇場版も最初から最後まで楽しめました。
生真面目で照れ屋のシロさんは相変わらず格好良く、
乙女なケンジはとにかく可愛かったです。
また、これはもう当たり前なのでしょうが、
作中で登場する料理がとにかく美味しそうでした！
調理シーンが映像化されたことで、
作り方や手順がより分かりやすくなり、
私も作ってみたくなりました。

「何食べ」では、
老いていく両親との関わり方も主題の一つとなっています。
この映画でも、
シロさんとケンジそれぞれの実家の話が出てきました。
勿論、私にとっても親の老いは他人事ではないので、
色々と考えさせられました……。
シロさんの両親がケンジの来訪を拒んだ件については、
私は「どちらかが無理をする羽目になるなら
会わない選択をした方が良い」と思ったので、
シロさんが出した結論に賛成します。
ケンジの気持ちを思うと、
どうしても淋しさを感じてしまいますが、
適度な距離を保っていくのも、
人と仲良く付き合っていくコツの一つなので、
間違ってはいないと思います。



終始、楽しめたこの作品ですが、
途中で「ん？」と思ったこともいくつかありました。

まず、CMで京都での映像が多々使われているにもかかわらず、
映画での京都編はOPを含めた序盤のみだった点です。
実際に見るまでは、
京都での二人の様子をもっと見られると思っていたので、
「CMで京都をアピールしまくっていたのに、これだけ？」と
ちょっと拍子抜けしました。
「何食べ」のファンは、
二人が仲良くしているシーンを見られるのが一番の幸せなので、
CMを見た時の印象より京都編が短いことに対して、
不満を抱く人は少ないのかもしれませんが、
他の作品だったなら
「CMで騙された」という感想も出ると思います。
原作の漫画でも、京都編はたったの一話なので、
映像化にあたり長くするにしても限度があるとは思いますが、
CMでの煽り具合を考えると、やはり短いです。
（とはいえ、以前、宮藤官九郎さんのラジオ番組で、
映画広告制作の人の愚痴を聞いたことがあるので、
そうせざるを得ない事情もあっただろうとは思っています）

また、これはドラマを見た時にも思ったことなのですが、
漫画でさらりと流されている部分を丁寧にやるのは、
人によって評価が分かれる点だと思いました。
この映画で言えば、シロさんがケンジに
「おまえ、本当は傷付いてるんじゃないか」と
尋ねるシーンです。
原作の単行本では、たしか、
ケンジがシロさんに向かって
「あれってやっぱりひどくない？」と、
愚痴を吐くぐらいで終わっていましたよね。
私は、丁度、NHKの朝ドラの「おかえりモネ」で
安達奈緒子さんの脚本に触れた直後でしたので、
シロさんが真剣な表情で上記の台詞を口にした時は、
「おかえりモネ」で似たシーンが何度もあったのを思い出し、
変に懐かしい気分になりました。
安達節が炸裂していましたね……。
きっと安達さんはこういうのが好きなんだろうなと、
改めて実感しました。
勿論、映画として話をより盛り上げたいがために、
登場人物の感情を深く描くのは悪いことではないのでしょうが、
上記のシーンについては、私は蛇足だと思いました。

（11/11追記）
……と書きましたが、
上記のとおり、私は原作を途中から読んでいないので
（具体的に挙げると、九巻ぐらいまで読みました）
それ以降の話で二人がそういう会話をした可能性も
ありますよね。
もしそうだったならすみません。



というわけで、
ドラマ版を楽しく見れた人には、
この映画も間違いなく楽しめると思います。
不快なシーンは皆無なので、
美味しいポップコーンを食べながらのんびり見るのを
お勧めします。