感想@映画「白ゆき姫殺人事件」*ネタバレあり [映画・舞台]
映画「白ゆき姫殺人事件」をDVDで観ましたので
簡単ながら感想を記します。
主なキャストはこちら*敬称略
城野美姫:井上真央
赤星雄治:綾野剛
長谷川:染谷将太
狩野里沙子:蓮佛美沙子
三木典子:菜々緒
篠山聡史:金子ノブアキ
満島栄美:小野恵令奈
間山先輩:宮地真緒
小沢文晃:草野イニ
谷村夕子:貫地谷しほり
前谷みのり:谷村美月
以下の記述にはネタバレを含みます。
原作の小説は未読です。
劇場公開時から気になっていたものの、
レンタルDVDとはいえここまで時間が経ってしまったのは、
原作の小説の作者である湊かなえさんが人の悪意を書くのがお上手だから……です。
といっても、彼女の作品については「告白」しか読んだことが無いのですが、
テレビドラマ化された他の作品などのあらすじを見ていると、
彼女の作品にはそういった事が共通して存在しているようなので、
心が疲れている時は無意識に避けていたのかもしれません。
(それと単純に、身近なレンタル店が潰れてしまったのも理由の一つです)
で、以前より元気になったらしく、
レンタル店をぶらぶらと歩いてこの作品を見つけた時に
「あ、観たい」と瞬間的に思ったので、借りてきました。
とても面白かったです。
真実を語っているつもりでも、その人の主観が入る時点で捻じ曲げられる
(関わった人の数だけ歪んだ真実が存在する)のは事実で、
「告白」もそうでしたが、この作品はそれを上手く使っています。
人のちょっとした思い込みや勘違いから生まれる無意識の悪意や、
SNSに代表されるネット社会の怖さが、非常に印象的に描かれていました。
赤星雄治(綾野剛さん)が本当に馬鹿過ぎて、
途中まで苛々させられていましたので
終盤で彼が事の責任をきっちりと取らされる流れにはホッとしました。
でも、のうのうと椅子に座っているところを注意されたり、
冷たく「お前が来る必要は無いだろ」と咎められたりしていた点は、
赤星の上司がテレビ局の人間に同じことを言われていた分、
皆同じというか、同じ穴のムジナなんだと思えました。
犯人については意外性が無かった……というか、
これで城野美姫(井上真央さん)が本当に犯人だったらつまらないので、
最後にどんでん返しが起こるに違いないと想像できたものの、
徐々に真実が明らかになっていく展開はとても面白かったです。
容疑者だった彼女の告白が最後になされましたが、
この作品のテーマから言うと、
実はそれですら真実ではないのかもしれない点に怖さを感じました。
それは、被害者である三木典子(菜々緒さん)のモノローグが一切無いので、
彼女が言われっぱなしで終わっている点も同様です。
確かに、痛烈な物言いをして人を傷つける三木典子は
特に同性の間では好ましい人物ではなかったようですが、
彼女なりの言い分もあるでしょうし、
何より、彼女に傷つけられた他の人にも非があったかもしれません。
それが作中では全く明かされないことに、ぞっとしました。
ただ、人というのは、自分のコンプレックスを解消する為に、
他人から受けた中傷をそのまま使い、また違った誰かを攻撃することがあります。
作中では、三木典子の中に
短大卒であるという学歴コンプレックスがあったのではないかと語られていましたが、
たとえば、彼女が入社日に城野美姫の名前をからかったように、
過去に「美人のくせに名前が地味」だと嘲笑された経験があるのかなと伺えました。
個人的に最も嫌だなと思ったのは、
芹沢ブラザースが出演するコンサートのチケットを使った、三木典子の嫌がらせです。
これは、私が舞台やライブによく行くこともあり、めちゃくちゃ腹が立ちました。
それと、「あぁ、なるほどー」と思わず納得してしまったのは、
社内でのお茶入れ・お茶出しの件です。
当初は、作り手の誘導通り、「この課長の指示って酷い」と思ったものの、
いざ他の証言を聞いたら、すんなり納得できました。
あそこで、三木典子がむっとした顔をしなければ、
課長も、城野美姫にそのままお茶出しまでさせたでしょう。
ちょっと引っかかったのは、谷村夕子(貫地谷しほりさん)の存在です。
妄想少女だったかつての城野美姫が、
赤毛のアンの世界に憧れて谷村夕子と親友ごっこをしたり、
好きな同級生との恋の始まりを想像したりしたというのは分かるのですが、
唐突に赤毛のアンという要素が出てくるので、観ていて戸惑いました。
タイトルが「白ゆき姫~」ということで、
童話の白雪姫つながりでこれを出したのでしょうが、
どうせ過去にそういうモチーフを使うなら、
タイトル通り、白雪姫にちなんだエピソードにした方が自然だったのではないでしょうか。
事件の被害者・容疑者が働いていた会社の主力商品の名前
+被害者が美人だったことから、
ネットで「白ゆき姫殺人事件」と呼ばれるようになったという設定は
とても上手く、説得力が充分にあった分、
赤毛のアン云々が却って煩く思えました。
本当は凄く可愛いのに、城野美姫として地味な女子社員を演じた井上真央さんが
とても素晴らしかったです。
それでも、時折、その可愛さが顔を覗かせる時があって
(三木典子が殺害された件をビジホのテレビで見て起き上がるところとか)
魅力的でした。
菜々緒さんも、顔の美しさやスタイルの良さが嫌味になっていて、
黙っているだけで他の同性社員を威圧する美人社員という役どころが
上手くハマっていたと思います。
そして、綾野剛さん!
赤星はネット弁慶で、チャラチャラしていて、何に対しても不真面目で、
努力するのは嫌いなのに、簡単に一発当てたいという野心があって……と、
非常に嫌な役でしたが、
彼が二枚目である点も含めて、現実にいそうな感じが終始していて、
最も素晴らしかったです。
私が言うのもなんですが、上手い役者さんですねー……!
赤星が愚かであればあるほど、
最後、城野美姫に車で轢かれそうになった直後に彼がぽろっと漏らす
「嫌なことがあって……」という呟きに説得力が出ると思います。
凄い役者さんだと実感しました。
人の裏というか、嫌な面を突き付けられるので、見ていて疲れますが、
お話がテンポよく進むこともあり、面白かったです。
時間がある時に一気に観ることをお勧めします。
2015-11-02 13:52
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