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感想@相棒-劇場版II-警視庁占拠!特命係の一番長い夜*ネタバレあり [映画・舞台]

「相棒-劇場版II-警視庁占拠!特命係の一番長い夜」の感想です。

相棒−劇場版㈼−オフィシャルガイドブック (NIKKO MOOK)

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 産経新聞出版
  • 発売日: 2010/12/24
  • メディア: ムック

以下の記述にはネタバレを含みます。
私はこのシリーズのファンで、ドラマ版は一通り視聴済みです。

ドラマSeason9各話の感想記事のURLは、他作品と共に
こちらの一覧(インデックス)ページでまとめています。
テレビドラマ感想一覧:2010年秋 放送開始作品

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お正月(1/3のレイトショー)に観た事から
右京さんのポストカードを頂きました。やった!
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今回も、映画はテレビ放送を待たずに劇場で見るんだろうなと
思えていた事から、
ネットでネタバレを見るのを極力避けていましたが、
小野田官房長(岸部一徳さん)の死亡だけは
被弾してしまいました。
でも、どこで亡くなるかまでは見なかったので、
それが一つの見所でもありました。

正直なところ、前作の映画(マラソン)は、
泣けたけれども
“相棒”の話としてはいまいちだったと思えた事から
今回のお話にもあまり期待していなかったので、
それが良い意味でハズレとなって良かったです。
結論から言いますと、今回の映画は面白かったです。


“相棒”という作品を語る上で、幾つかのポイントがありますが、
真実を貪欲に求め、何があっても正義を貫こうとする杉下右京と、
そんな彼を煙たく思い、邪魔をする警察上層部の対立も、
そのうちの大きな一つです。
今回は、これが一番のポイントである他に
警視庁対警察庁の見苦しい争いがあり、
人々がやたらと「正義」を挙げながらも
実質的にはそれが蔑ろにされているやりきれなさが
深く描かれています。
ドラマ版でこういう内情明かしの回を好む方には
是非お勧めです。
一部の殺人快楽者は別として、
普通の人は、まず理由が無ければ
復讐もしないし殺人も計画しないというのを
深く実感させられたお話でした。


終盤において、公安の存在意義が語られる場面があるのですが……
そりゃ国防において予算が縮小されるのは
日本の危機に繋がる可能性が高いですが、
かといって、公安の存在意義を示す為に
(公安はあるべきと思わせる為/予算を削らせない為)
国際テロ事件を未然に防ぐという自作自演を行なった結果、
死者まで出し、捜査員の命まで軽んじるということは
人としてどうなのかと思わざるを得ませんでした。
右京さんが「捜査員も国民の一人ですよ」云々と発した時は
私もそれを言いたかったので、
よくぞ代弁してくれた!と思いました。


また、捜査において、普通の刑事が
「誰が殺したか」という犯人探しを主にするのに対して、
右京さんが「何故、その犯人は対象を殺したのか」という
動機に重きを置いて行なうのは、“相棒”の特色ですが、
今回の映画版の事件は、その動機がせつなくてやりきれないので
見ていて辛かったです。
警察上層部としては、警視庁を占拠した犯人は
人質の救出時(強行突入時)に射殺されていますので、
痛いところを探られる前に、とっとと片付けたいのでしょうが、
「何故、犯人はそんな事をしたのか」を
知りたくてたまらない右京さんにとっては、
それが明らかにならないうちは、事件は全く終わってないわけで。
だからこそ、右京さんは上層部に疎まれるわけですが……。
それと、強行突入はあくまで最後の手段としていた右京さんと、
それをあっさりと決めてしまった警察上層部の考え方の違いも
見ていて面白かったです。

また、人質となった幹部たちにとっては、結果として、
自分たちを拘束した犯人は“飛んで火に入る夏の虫”であり、
まさに、あのタイミングでの犯人の射殺(正当防衛)は、
口封じの為に彼を殺す上では絶好の機会だったんだなと思えました。



今回の事件の犯人について。
「そりゃ復讐したくもなるよ!」というのが最初の感想でした。
警察学校を卒業した後、真面目に職務に就いていた人間たちが
とある事件を機に人生を狂わされる
──こういう現場の人たちは、
仕事で死ぬかもしれない事に対して覚悟もしているでしょうから
「仕方ない」と割り切る必要もあるのかもしれません。
だからこそ、くだらない事で犠牲を強いられた事を一度知ると、
その生真面目な気持ちが深い復讐心に変わるわけで。
自分のせいで婚約者が死んだとして
何年も悔恨の念に苦しんでいたところに、
「実はあの事件には裏があるんだ」と言われ、
婚約者が亡くなった事件そのものが茶番であったのを知ったら、
そりゃ暴走するだろう……と、私も同情しました。

犯人の 八重樫哲也(小澤征悦さん)の「庇う」行為についても
自然だと思いました。
あの、お墓参りにて、八重樫は最強の協力者を得られたわけですが、
自分以上に過去に囚われていそうな彼女を協力者にした事に対して
多少なりとも
「これではいけない」という気持ちがあったように思えました。
恋愛とか仲間意識とか云々でなく、ただ純粋に、
最後は自分だけの犯行にする事で、
彼女には真っ当な人生をその後に送ってほしかったんだろうなと
想像しました。


それにしても、右京さんが翳す“青臭い正義”は、
見事、神戸尊に伝染し、
彼の熱意が大河内(ラムネ/神保悟志さん)を動かしましたね。
終盤、殺人容疑で警察幹部に任意同行を求めた際に、
右京さん達にトリオ・ザ・捜一が一緒にいたのも印象的でした。
また、尺としては非常に短かったですが、
それが不起訴になるだろうという予測を話す
イタミンと神戸さんの会話も良かったです。
二人して同じような事で苦々しく思っていても、
立場上動けないイタミンと、
割と行動力がある神戸さんとの差が出ていたのも面白いです。


ノンキャリの星の最後も哀れでした。
どうせ皆、同じように汚い事をやっているだろう
……というのは、とりあえず置いておいて。
真っ先に首を切られそうになったのも
彼がノンキャリだからでしょうし、
“皆がやっている事”とはいえ
目に余る不祥事を繰り返してきたのは出世の為でしょう。
上層部のご機嫌を取り、必要とあれば進んで手を汚して
ここまでのし上がってきたのに、懲戒免職とは……。
そりゃ「俺の人生返せ!」ともなるわ、と
私も納得してしまいました。
とはいえ、小野田官房長を殺したところで
彼にとっては何の解決にもならないのが現実の厳しさですが。

そして、そんな彼に刺殺された小野田官房長。
彼の死については、上記の通り、ネタバレで知っていましたので、
それがいつ起こるかというのが一つの注目点でした。
「もういいよね」の三回念押しで、
「あぁ、いよいよだなぁ」と思えたので、淋しかったなぁ。
また、小野田の苦悶の声も本当に苦しそうでしたし、
「おかしいね」から始まる右京さんとの最期の会話も
しんみりしてしまいました。
せっかく、回転寿司の皿を戻さないようになったのになぁ……!
ただ、小野田の汚い部分を、これまで散々見せられてきたせいか、
彼の死に対して同情しなかったのが、自分でもおかしかったです。
ある意味、こうなって当然とも言える死に方だった気がします。


さて、作中の見所について。
まずは“協力者(共犯者)”についてですが、
これは、神戸さんが最初に会う時に
(エレベーターのドアが開いた瞬間に)
二人が向かい合って口論をしていたので
「あ、この二人って、単なる犯人と人質じゃないんだ?」と
思えました。
まぁ、この協力者については、最初から明らかに怪しいので、
制作側も、観客に注目してほしいんだろうなと思いました。

右京さんのアクションは、
あまりにも淡々と……いきなり始まったので、
「え……えええええ、おいおい」と思いましたww
危なっかしいよ、右京さん!!
若い人がやるならまだしも、
あの年でひょいひょいとやっちゃうのが凄いww
そして、右京さん提出したカメラの返却が
ああした事に繋がるとは思ってなかったので、意外でした。
大河内さんが本当に夢の島まで拾いに行ってたら笑えるww

そして、モールス信号。
ここ、音がやけに煩かったので、
「これって絶対にモールス!!」と思いながら見ていました。
でも本当に煩過ぎて、犯人によく止められなかったなとも
思いました。
まぁ、八重樫にしてみれば、
警察幹部を安易に拘束できたまでは良かったものの、
刻一刻と状況は悪くなるばかりなのに、
真相は全く得られず、非常に焦っていたでしょうから、
あの音に意味があるなんて気付く余裕もなかったのかも
しれませんが……
ただ、八重樫みたいな職務に就いていた人なら、
声を出せない際の伝達手段として、
手話やモールス信号ぐらい勉強しているんじゃないかなと
思いました。



最後に役者さんについて。
とにかく相棒コンビの二人
(水谷さん/及川さん)が出まくりなので
主演のお二人が好きな人にはたまらないと思います。
レギュラー陣も相変わらずの安定感があり、
彼らを見られるだけでホッとできます。
ゲスト陣も凄かったなぁ。
特に朝比奈圭子役の小西真奈美さんは良かったです。
小西さんは、近頃こういう役が多い気がしますが、
それは、彼女の特性である“凛とした強さの中にある脆さ”が
非常に魅力的なものとして
制作側から請われているからだろうなと思いました。
取調室で、失意の中、顔をぐっと顰めながら泣く姿には
鬼気迫るものがありました。
朝比奈さんの辛さがよく分かりましたし、
その辛さが右京さんにも伝わったからこそ、
彼も目に涙を浮かべていたんでしょう。


ちょっと惜しかったなと思えたのは、
船爆破シーンの繰り返しがしつこかった(回想は一度でいい)のと、
警察庁の金子長官(宇津井健さん)が
ちょっと飄々とし過ぎていた点です。
宇津井さんは、先月まで放送されていた
日本テレビのドラマ“黄金の豚”でもそうでしたが
ラスボスには不向きというか、ちょっと甘い感じがします。
小野田さんの相手役としては良かったですが、
今後は彼が一人で出てくるかもしれないと思うと
物足りなくなるかもしれないなと
余計な心配をしてしまいました。


ラストシーンについては
“あんな事があっても、杉下右京は信念を絶対に曲げない”のを
観客にアピールするのが目的だと思いますので、
あそこで中途半端に(?)終わった事こそ
“相棒”らしいなと思いました。
どうせ、上手くいきっこない(上層部からの邪魔が入る)のも
お約束ですし。


この映画は、ドラマでの時系列でいうと、
Season9:9話「予兆」
 ↓
今回の劇場版
 ↓
Season9:1〜8話
となるので、
現在放送中のSeason9において
小野田官房長が全く出てこないのは当たり前なんですよね……。
なので、ドラマ版を欠かさず見ている人には
有料でスペシャル回を見る感覚で見に行くのを
お勧めします。
どうせSeason9の最終回あたりで、
小野田官房長の死が間接的に伝えられる気がしますが、
作品のファンなら映像で見ておくに越した事はありませんので。

私も、機会があったらもう一度見る予定です。


以下は、観る前&観た直後のツイートです。
  • sa9raribbonsa9raribbon25日の日記をブログにアップしました(http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2011-01-03)今から「相棒」劇場版をレイトショーで見てきます!楽しみ!
  • sa9raribbonsa9raribbon劇場版「相棒II」を観てきた!http://f.hatena.ne.jp/twitter3/20110103233218お正月だったからか、右京さんのポストカードを貰えて嬉しい。でも裏面にたまきさんとかがいるのに神戸君が不在で寂しい
  • sa9raribbonsa9raribbon前回があまり好みではなかったので、今回については正直あまり期待してなかったけれど、ちゃんと面白かったです。まさに「正義とは何か」な内容でした。ゲストの役者さん達が演技派な方ばかりで固められていたのも凄かった
  • sa9raribbonsa9raribbon個人的な好みで言えば、トリオザ捜一の三人をもうちょっと活躍させてほしかったけれど、主演のお二人がもう出ずっ張りで、まさに彼らの作品!という王道な内容だったを考えれば仕方ないかなと思えました
  • sa9raribbonsa9raribbon最後の“オチ”についてはネタバレで知っていたものの、まさか最後だとは思わなかったので、その直前に複数回行なわれた確認で「いよいよかー」とせつなくなりました。スタッフさんの「相棒」はこれからも変わるよ!という意気込みを感じました
  • sa9raribbonsa9raribbon映画を観た事で、右京さんも神戸さんもイタミンもより好きになれた事が、自分がこの映画を気に入った証だと思います。暇があったらもう一回行きます



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2011-01-05 23:52  nice!(1) 
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