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感想:アニメ「空中ブランコ」第11話(最終回) カナリア*ネタバレあり [アニメ感想]

ノイタミナ枠のアニメ「空中ブランコ」の感想です。
今回は第11話「カナリア」です。
最終回です!
私は原作の小説のファンで、テレビドラマ化された時も見ています。
以下の記述にはネタバレを含みます。


前回の感想はこちら。
第10話「オーナー」

各話の感想記事のURLは、他作品と共にこちらでまとめています。
アニメ感想一覧:2009年10〜12月


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最終回です!
私は原作を読んでいるとはいえ、
単行本ではなく、初出の雑誌に掲載された時しか
読んでませんので
(しかも公立の図書館で借りて済ませている)
今回も記憶にありませんでした。
なので、新鮮な気持ちで見られました。

今回も大変面白かったです。
これまでの回でも、既存のキャラクターが
ちょい見せ程度に出ていましたが
(一番出ていたのは板東選手かもしれません)
今回は、かつての主人公キャラの父親が主人公でした。
このアニメ版「空中ブランコ」は、原作の小説と違っていて、
マユミちゃんが日めくりカレンダーを捲っている日にちから
推測できます通り、
一話ごとに時間(日にち)がループしています。
つまり、私達は毎週新しい話を楽しめていましたが、
アニメ版のお話は、時系列順に並んでいるのではなく、
ほぼ同時に起こっていることとされていました。
現実世界でも、医者は一日に何人も患者を診ていますように、
この伊良部先生も
各回のゲスト主人公を診察・治療していたわけです。
つまり、毎回の放送において
伊良部先生は好き勝手に遊んでましたが、
彼はまさに朝から晩まで、相手を取り替えて
そうしていた事になります。

今回の主人公は
以前の「フレンズ」回で登場した携帯電話中毒少年の父親です。
少年の目から観た話を
父親の視点から描いた部分もありますが、
救命救急医という職業上、
家にほとんど帰れないという設定が彼にはありましたので、
同じ話を他視点で遣ると、必ずついて回る“飽き”が
上手く消されています。

「フレンズの」携帯少年(今回の主人公の息子)は、
友達と携帯電話のメールで繋がる事を
自分の存在証明としていました。
なので少年は、家族(父母)に対して
「自分にご飯をくれる人」
「自分の暮らしを保証してくれる人
(携帯電話代を払ってくれる人)」程度の
認識しかありませんでしたが、
それは父親も同じでした。
お話の中盤では、
父親にとって妻も息子も、
果たすべき義務の対象でしかなく、
彼は一体何の為に結婚したのか(家族を作ったのか)が
分からない状態になってました。
娘が誕生日を迎えた同僚に、
早く帰るように言える気配りはできたのに……。

でもこれらの問題は
こちらのアニメでは極端な例として描かれていますが
ふと思い返してみると、現実世界でもよくある事なので
風刺が利いていると思います。
家族三人で食事をするシーンで、
母親ができあいの物を並べただけで、息子に勧めましたが、
現実でも普通にあるシーンなのに、
私は見ていてゾッとしました……。
三人の心がバラバラ
(母親の心は息子だけに向いてますが)なのに、
一時的に家族の団欒を取繕ったって無駄だろう、
できあいの物を食べるだけなら別に家に帰る必要はないし……と
思ってしまいました

あ、誤解を受けそうな記述なので、
念のために書いておきますが、
私は中食(外で買ってきた惣菜を食事として食べる)を
全く否定していません。
母親が作るべきとも決め込んでいません。
食事なんて、
時間がある人、好きな人が作ればいいと思いますし、
時間が無かったり、料理があまり好きでなかったら、
できあいの物を買って済ませるのも充分にありだと思います。
でも、こちらのアニメでは
間違った愛情の象徴の一つとして
豪華な食事が描かれていたように思えます。
ただ、たとえあのシーンで
母親が頑張って調理をしていたとしても
問題が根本から解決する事はまずないのですが、
あのご馳走が豪華なら豪華なだけ
見ていて虚しくなるなぁと思いました。



そして、息子や妻が歪んでしまった原因には、
上記の通り、父親も含まれています。
こちらの家庭では、父親のみが働いているので
収入を得ること=父親の役割である事は確かですが、
お金さえ稼げば彼は役割を全て果たした事にはなりません。
「家の事は全部お前(妻)に任せてある」って
凄い言葉ですよね……。
そして、家庭の様子がおかしくなっていくにつれて、
父親はカナリアの声も聞かず、耳穴に栓をするようになり、
仕事を理由にして家庭から逃げたわけです。

と、まぁ、こうして書くと
父親は非情な人間のようにも思えますが、
上記の通り、こういう事は現実でも珍しくないですし、
似たような事も身近で頻繁に起こっています。
たとえば、この放送が流れた当時、
私は年末の冬コミ用の同人誌の原稿をやっていたのですが、
「部屋が汚いと全然はかどらないから」という言い訳を印篭にして、
原稿を疎かにし、部屋の掃除に逃げようとしました。
目先の嫌な事から逃げる為に、
「自分は××をやるから、今は○○をしなくていいんだ」という
代替による甘えに負けてしまうのは、
本当、日常茶飯事です。



息子にとって、掛かってこないと困る携帯電話の着信が、
父親にとっては(妻からのSOS電話なので)
逆に恐怖になっている対比も、面白かったです。
両方とも、心情がよく分かりますし、
そうなったらまずい状態というのが良かったと思います。

父親が、自分ばかりが苦しいのではなく、息子も同じであり、
息子が家庭崩壊を知らせるカナリアであると知った事で
考えを改めた展開も
大変良かったと思います。
また、今回はカナリア=息子でしたが、
他の回で登場したゲスト主人公(一連の患者たち)も、
皆、カナリアだったと示されていたのは
最終回に相応しい描写だったと思います。

何より、最後のクリスマスパーティーのシーンが良かったなぁ。
息子が、携帯電話の呪縛から逃れて、
自分は一人であると痛感した後、ちょっと自嘲してから、
自分を本当に愛してくれる両親がいるという事を知るのは、
ベタベタのコテコテですが、素敵でした。



最初にこちらのアニメの第一回を見た時は、
マユミちゃんや声優陣を始めとする実写パートや、
大中小の伊良部先生などに対して
「ないない(あり得ない)」と思い、苦笑気味に見ていましたが、
この奇妙な世界観に馴れてしまえば
どうという事もなくなりました。
振り返ってみると、回の出来不出来に波もあったように思えますが
この辺は個人の好みに強く左右される部分もありますし、
何より、各回の平均点は高かったと思います。

まぁ、まず無いでしょうが、
原作のストックがもっともっと溜まったら
この伊良部先生のアニメで他のお話も見てみたくなりました。
面白かったです。





────
感想は以上です。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

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2010-01-01 15:02  nice!(1)  コメント(0) 
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