SSブログ

感想:ドラマ「日曜劇場 JIN-仁-」第6話 生きてこそ…*ネタバレあり [テレビドラマ感想]

TBS「日曜劇場」枠のドラマ「JIN-仁-」の感想です。
今回は第6話「生きてこそ…」の感想です。

JIN-仁- DVD-BOX

JIN-仁- DVD-BOX

  • 出版社/メーカー: 角川映画
  • メディア: DVD

原作の漫画については、
第2話視聴後に単行本の第1〜4巻を読み、感想も書きました。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-10-25-4
こちらの記事およびリンク先には、ネタバレを含みます。


前回の第5話「神に背く薬の誕生」の感想はこちら。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-11-08-9

各話の感想記事のURLは
他作品と合わせてこちらでまとめています。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/drama200910



────

前回の放送は、視聴率20パーセント超えだったそうで!
最近はテレビの平均視聴率が下がっていて、
15パーセントを超えるのですら大変なようですが、
そういう中で
良質のドラマがちゃんと支持を得られているのは
大変嬉しいです。
私が面白いと思うか否かは
他人の意見や感想に左右されませんので、
たとえ世間の評判が低くても、
それにつられる事はありませんが、
自分の好きなドラマが世間的にも好評だと知るのは
とても嬉しいです。
「ドラマの“JIN”が良いんだって」と聞く度に、
そうなのそうなのと、こっそり頷いてしまいます。



さて今回は、西洋医学所と医学館の対立を主軸として、
南方仁がこの世界に現れた事から生じた影響と、
己の生死に対する考えをはっきりと自覚した彼の姿が
描かれました。

まずは、西洋医学所と医学館の対立について。
最後に描かれた、
実は西洋医学所内で問題が起こっているらしいと
判明する点も含めて、
ここは原作の漫画の流れを汲んでいたので、
初めてここを原作で読んだ時に感じた憤りと虚しさを、
思い出してしまいました。
人の為を思うなら
──その精神が医師としてのものなら、
緒方洪庵先生を始め、
西洋医学所のほとんどの医者がそうであるように、
高度な技術と知識を持つ南方に教えを請おうとするのが
当然だと思います。
でも、自分の立場(や、所属している医学所の面子)の為に、
優秀なものの排除を望むという考えは
非常にひもじいですよね。
何の為に医者になったのかと、問いただしたくなります。

そりゃ、まぁ、
最初に皆が南方を訝しく思ったように、
出自も不明、言ってる事もやってる事も不明
──でも患者を確実に治す事ができる南方は、
これ以上なく怪しい存在です。
見事としか言い様のない南方の手術の手際、
そして、彼の治療を受けて確かに回復した患者を目の当りにしなければ、
とても信じられないのは、至って普通の事だと思います。

だからこそ、
南方が持つ医療の知識と技術が本物だと気付いた瞬間に、
その人間の本性が出ますね。
南方がした事・言った事が正しいと知って尚、
彼をやっかむ人間が決して少ないのを思うと、
偉い立場にありながら
南方の講議を率先して受けていた緒方洪庵には
本気で人を救いたいという気持ちがあった事が
よく伝わってきます。



その緒方洪庵。
今回、腑分けの件で過ちを犯していた佐分利祐輔を
叱っていましたが、
以前でもそうだったように、彼の説教シーンになると、
私は“金八先生”を連想せずにはいられなくなるので、
失礼ながら、ちょっと笑ってしまいました。
でも、緒方先生の
「道を開くという事は、自分だけの逃げ道を作る事ではない」という一喝は、
私の心にも響きました。
言葉に重みがありましたし、
緒方先生が言うからこその台詞だなぁと思いました。
はっきり言って、南方にはまだ言えない
(たとえ言ったとしても、ここまで説得力を持てない)
言葉だったと思います。



話が前後しますが、
咲の代わりに手術を手伝った佐分利が、
実は、圧倒的な技術を持つ南方に少しでも近づく為に、
秘密裏に腑分け(今で言う死体解剖)を行なっていた事が
判明しました。
これは、今回の手術において
佐分利が初めて人間の内蔵を見たにもかかわらず、
何故か彼がそれに馴れていた理由でもありましたし、
南方がこの世界(幕末)にやって来た事からくる
悪影響でもありました。

ただ、間違えてはいけないのは、
佐分利が腑分けを積極的にやりたいと思った気持ちは、
自分も南方のようになりたい、南方に少しでも近づきたいという
医療技術修得への熱心な意欲が元になっていて、
これ事体は、とても良い事なんですよね。
南方が強く望んでいる
“この時代の医療が発達すれば
現代にいる友永未来を救えるかもしれない”事は、
佐分利も抱いた熱心さが
日本中に広まった結果として存在するので。

悪かったのは、その為に佐分利が取った行動です。
でも、今でこそ検体というシステムが存在しますが、
当時の世情を思うと、
腑分けを行ないたくても行えない事からくる不満は
私にも感じられます。
医療技術を会得するには実践が一番だと、分かっているのに
思うように練習すらできないのは、歯痒いですものね……。

ましてや、これは仮の話ですが、
南方の傍について、彼の手術を見学した後で、
やっとの事で、見よう見まねながらもその手順を必死に覚えたものの、
いざそれが必要とされた際に、練習不足で失敗するというのでは、
患者は勿論のこと、医者自身も悔しいと思います。
いつもいつも、
南方が全ての患者を診られるわけではないのを思えば、
佐分利の一件で明らかになったこの問題は
早急に何らかの対処を必要とするんだなと、思いました。

処置について、以前のように全く知らなかったならば、
涙をのんで、患者に「手の施しようがない」と言って
放置する事もできるでしょう。
でも、なまじ南方の医療行為を見てしまうと、
知っていながらも何もできない自分を痛感させられるので、
その人物の心が本当に医者のそれであればあるほど
苦しくなるのかもしれません。

ところで、今回の感想を書いていて一番驚いたのは
「腑分け(ふわけ)」の漢字変換を、一発で行なえた事です。
これはそんなにメジャーな言葉だったのかと
びっくりしました。



上記の一件から、南方は
幕末にタイムスリップしてきた自分自身について
ちゃんと現実として捉えてなかった部分があるのを
自覚しました。

自分にとって、ここは夢の世界のようなものだから、
死ぬ事についても、欲を持つ事についても無頓着で、
まるで仏のような言動になっているというのには
私も物凄く共感できました。
それに、タイムスリップ後の南方の行動を振り返ってみると、
彼は常に受け身なんですよね。
通りすがりに厄介事を見たり、
問題を持ち込まれたりするばかりで、
彼が自主的にどうこうしたのは
医療器具を誰かに頼んで作ってもらったぐらいでしょうか。
でも、これにしたって、
医療関係のトラブルに巻き込まれなければ
南方が治療を行なう事もなかったので
必要なかったですし……。

そんな南方が、人斬りに襲われて初めて
死に対する恐怖を感じた
──生に対する執着を見せたのは、大きかったと思います。
このシーンは、確か原作の序盤で描かれていたはずですが
(記憶が曖昧ですみません)
このドラマでは、死に対する恐怖が薄い……というか、寧ろ、
持ってないと言ってもよかった南方の心が
よく描かれた後の出来事として、放送されたので、
更に強い実感として私にも感じる事ができました。
南方を演じる大沢たかおさんの手が
ずっと小刻みに震えっぱなしだったのも
良かったと思います。
他人に刃物で命を狙われるなんて、
現代ではあまりないのを踏まえれば
(全く無いと言い切れないのが悲しい……)
あそこでは南方が失禁していても
決しておかしくなかったと思いますので。



さて、今回もかわいらしかった咲さん。
手術の際に、珍しく失敗を繰り返してしまいました。
南方は、「初めて内蔵を見たのだから〜」と言って
咲さんを庇いましたが
あれは、内蔵に怯んだというより
友永未来の写真に対する動揺をずっと引き摺っていた事が
原因として大きいように思えました。
年頃の女性なら、仕方ないですよね。

その咲さんが
梅毒の検査で鈴屋を訪れた際に野風と交わした会話も
面白かったです。

野風が、咲さんを
「お武家の娘さん/おひいさん」と
からかい半分で呼んでますが、
この時代、旗本の娘なんてエリートですよね。
それこそ箱入り娘のはずです。
そんな恵まれた立場の咲さんから
遊女が「うらやましい」と言われたら
「(咲さんに)莫迦にされた」と言って怒ってもいいと思います。
皆、好き好んで女郎をやっているわけではない
──これが、花魁にまで成り上がった野風ですら
例外でないのを踏まえれば、
彼女に対する大変失礼な言葉だと思います。
あそこで、フッと鼻で笑った程度で留めたなんて
野風は心が広く、大人だなぁと思いました。
また、ああいう事を平気で言えてしまう点も、
咲がすれていない(世慣れしていない)証拠なので、
自分と咲の身分の違いを彼女以上によく知っている野風には
笑って聞き流せたのかもしれません。

咲「……羨ましくて」
野「お武家のおひい様が? あちきの何が」
咲「顔が」
のやり取りは、本当に良かったです。
この分だと、野風が写真の存在を知るのも
そう遠い事ではないのかもしれません。

南方が吉原に訪れない事を淋しがったり、
彼の傍にいられる咲をからかわずにはいられなかった点では、
野風も女だなぁと思いました。
梅毒の検査を受ける前に
裸足で咲の顔をちょんとつついたり、
彼女の顔の周りで足をうろちょろとしたり……
からかい方が、またかわいらしくて
私にはたまりませんでした。
(野風を演じる中谷美紀さんの足の甲も、
めちゃくちゃきれいでした!)

南方の危機を、野風が咲に手紙を出す事で
彼女に伝えたシーンは
せつなかったです。
野風の気持ちは、咲のそれと同じでしょうから、
彼女も大門を抜けて、南方を助けに行きたかったんでしょうね。
でも、禿(かむろ)に
「花魁、どこへ」と声を掛けられた瞬間に、
籠の中の鳥である自分の立場を思い出してしまった……。
自分がそうしたいところを必死に抑えて、
咲を信頼し、後を任せたのは、本当に辛かったと思います。
まさに、上記の医者と練習の話じゃないですが、
ここぞという時に自分の無力を痛感する辛さ、悲しさは
とても言葉では表せないのではないでしょうか。
それこそ、こういう時に自由に動ける咲さんに対して、
野風は妬いてしまったかもしれません。
でも、野風は咲さんを頼った
──それだけ彼女も必死だったという事が
よく分かりました。

話が逸れましたが、
今回の咲さんの見せ場は、何と言っても
南方の窮地を救うシーンでした。
原作でも素晴らしいシーンでしたが、
ドラマの方がキャラクターの感情が膨らまされているので
より感動の要素が強まっていたと思います。
咲さんにしてみれば、
男性の身体に触れるなんて、とんでもない事だったでしょう。
しかも、あの時の咲さんは
南方を完全に庇っていましたね。
彼女の愛情の深さが、よく分かりました。
いざという時にああいう行動が取れるのは
本物の愛がある故だと思います。



野風にも咲さんにも
そして緒方先生にも愛されている南方ですが、
私が「あんた、どんだけ南方が好きなのよ」と思ったのが
坂本竜馬です。
「無欲だ」「死人だ」と南方を責めておきながら
彼を好きで好きでたまらない気持ちが
竜馬からはバンバン溢れていました。
本当、毎回毎回、出番はそれほど多くないのに
強烈な印象を放ってますね、竜馬は。
竜馬という役が“アタリ”なのもあるんでしょうが
やはり内野聖陽の演技が、
作品の脚本や演出と合っているんでしょうね。
本当にこの竜馬は凄いです。
ぶっちゃけ、彼で来年の大河ドラマを見たいです。




南方の活躍を知らせる瓦版が配られたり、
“南方大明神”と書かれた絵姿入りの護符が売られてたりした
一件には、笑ってしまいました。
人が何でもすぐに商売にしてしまうのは
現代でも変わらないのかもしれません。
また、写真という技術が庶民にはまだ広まってない中では、
いくら絵姿を配られようと、
外見にこれといった特徴がない限りは
当人だとバレにくいんだと、実感しました。
あそこにいた人々が、
南方が近くに居る事を知らなかったのも、おかしかったです。



OPの音楽が良過ぎて、MISIAのEDが霞んでいるなぁ……。
そして、遠藤憲一さんによる提供ナレーションは
聞いていて物凄く落ち着きます。
この人の声がこんなに良いなんて、
このドラマを見るまで気付きませんでした。
エンケンさんにキャスティングした人は本当にGJですよ。
めちゃくちゃ当たりだと、いつも思っています。



そして、次回は
皮膚移植とペニシリンの安定増産の問題が
放送されるのでしょうか。
“平成二十二年”の年号入りの十円玉の存在も
大変気になります!





────
ランキングに参加しています。
記事がお気に召しましたらバナーを押してやって下さい。
*別窓でランキングサイトが開きます
にほんブログ村

続きの第7話「生きる遺言…」の感想も書きました。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-11-22-3

宜しければ合わせてどうぞ。


2009-11-16 20:49  nice!(1)  コメント(4) 
共通テーマ:テレビ

nice! 1

コメント 4

プラム

こんにちは。初めまして、私もこのドラマに嵌った一人です。
私も武田さん演じる洪庵先生のセリフは「金八先生」を
イメージしてしまいました。(笑)
実際の洪庵先生は温厚な方でどんな時にも感情を
あらわにすることはなかったそうです。
私は原作コミックではなく、特別編集の総集編コミックしか
読んでいませんが、もともとがそのような方なので
テレビでも原作コミックでも懐の深いキャラクターに
描かれているように思います。
主人公を取り巻く女性たちのことも気になります。
次回が楽しみですね。
by プラム (2009-11-17 16:04) 

ぱる

こんばんは
JIN、第6話も面白かったですね
咲さんにも野風にも愛されている仁先生はうらやましいです

by ぱる (2009-11-17 18:43) 

さくら

■プラム様
初めまして、こんにちは。
コメントをお寄せ下さり、ありがとうございます。
洪庵先生は、やはり金八先生のイメージがしましたよね。
勿論、演じられた武田さんの芸風もあるのでしょうが、
同じTBSなので、多少狙った部分もあるのかなぁと
私は邪推してしまいました。

本物の洪庵先生のエピソードもお教え下さり
ありがとうございます。
全く知らなかったので、勉強になりました!
by さくら (2009-12-07 21:47) 

さくら

■ぱる様
初めまして、こんにちは。
コメントをお寄せ下さり、ありがとうございます。

南方先生がちょっと鈍感なのか、
野風さんにも咲さんにも好かれているのに、
彼のハーレムうはうはドラマになってないのが大好きです。
私もあの二人が大好きなので、
ぱる様と同じように、南方先生が羨ましいですw
by さくら (2009-12-07 21:50) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証: 下の画像に表示されている文字を入力してください。

 


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。