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感想@宝塚歌劇「ファントム」2004年宙組新人公演(東京宝塚劇場) [映画・舞台]

宝塚歌劇団 宙組を退団される七帆ひかるさんが
2004年の夏に新人公演の主演を務められた
「ファントム」の感想です。
スカパーの「スカステ」を録画する機会があったので
視聴しました。

ご存知の方も多いかと思いますが
「ファントム」は所謂「オペラ座の怪人」です。
で、「オペラ座の怪人」と言えば、
あの印象的な曲と共に「劇団四季」の名が挙がるかと思います。
私も、四季のオペラ座の怪人は大分前に見た事がありますが
宝塚歌劇のファントムは、映像も初めて視聴しました。
*「ファントム」と「オペラ座の怪人」は
話の顛末も結末も違うようです。
ウィキペディア【ファントム】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%A0_(%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%AB%E3%83%AB)


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七帆さんの見映え(舞台映え)がとにかく素晴らしくて
ファンじゃないのに見愡れました。
いやぁ……宝塚の男役において
他人よりも背が高いのは大きな利点なわけですが
それをまざまざと見せつけられました。
勿論、七帆さんの立ち振るまいが大きくてきれいなのが
(きれいに見えるように意識している)
一番の理由ですが、
持って生まれた体格の良さの影響は大きいなぁと
今更ながらに痛感させられた気分でした。

本公演の映像は見てませんので、
それと比較する事はできませんが
新人公演でこれだけの成果を出せたのは凄いと思います。
クリスティーヌと出会うまでのファントムは
ちょっとつかみ所がない感じがしましたが、
日の当たらない地下で生き続ける事を嫌でも強いられてきた
彼の境遇や現状を踏まえると
それも役作りの一つだったのかなと好意的に思えました。
何より、クリスティーヌと会ってから急に生き生きとしたり
最後、ようやく名乗ってもらえた父親との対峙したりしたシーンでは
内に秘められていたファントムの感情が歌や台詞に乗っていて、
彼は外見こそ醜かったけれど
怪物ではなく一人の人間だった……という事が
よく表われていたと思います。

最初(冒頭)の歌は、緊張があったのか
雰囲気が固くて、喉が開いてない感じがしましたが
オペラ座の人事異動を知ってショックを受けた後の歌辺りから
急に滑らかになったように思えました。
喋りは、低い声が聞き取り辛い部分が少しあったけれど
やや早口でまくしたてる口調だったりしたので、
それはもう仕方ない範囲だと思います。
頑張ってらっしゃるのは、よく伝わってきました。



クリスティーヌの最初の衣裳が大好きでした。
クラシカルロリータにはたまらない
冒頭のオリーブグリーンのドレスが、
まさに純朴そうな(田舎っっぽい)少女の雰囲気で
素敵だなぁと思って見ていました。
スカウトされた後から着る赤いドレスよりもかわいい。
でもこちらは、バッスルスカートがたまらなかったです。
赤ピン赤ピン!!

ファントムのレッスンを受ける時の
生成?ベージュ?のドレスも素敵でした。
金髪がよく映えていたと思います。
柔らかみのある白っぽい色は
まさにクリスティーヌの性格のようでした。
その辺の娘があか抜けてパリジェンヌになった感じも
よく出ていたと思います。
この時に聴けるファントムとクリスティーヌの歌は、
特に後者がカナリアのようで、
高い声がきれいに響いていました。

シャンドン伯爵のパーティーに現われた時の
クリスティーヌのドレスも白なんですが
黄色味が全くない純白で、デザインも華美なので
それまでの彼女に比べてちょっと攻撃的な印象でした。
歌姫としてデビューする場面に相応しく、
気張った感じがしました。
大きく開いた襟から袖がとても素敵!

……と、まぁ、
クリスティーヌは衣裳ばかり見てました。
私は花影アリスさんが好きなので
彼女が歌うのを見られるだけで幸せでした。
ただ、ファントムのレッスンを受ける前と受けた後で
歌が格段に上達したのを見せられたら良かったかなとは思いました。
(とはいえ、クリスティーヌは元から歌の才能がある女性で、
上手い人が更に上手くなるという話なので
歌い分ける事は相当難しいと思います。
わざと下手に歌うのも変ですし)

レッスンのシーンでは、
正面を向いているクリスティーヌに対して
ファントムはピアノを弾いているので、
舞台に対して背中を向けているのですが
その後ろ姿だけで彼が活き活きとしているのが分かりました。
クリスティーヌの才能に浮かれているんでしょうが、
もしかしたら、ファントムは、
彼女を自分が育てたという達成感も味わっているのかなと思いました。



十輝いりすさんも、すっごくすっごくカッコ良かったです!
足長い! 肩幅広い!
テレビに向かって、思わず「男前だ……」と呟いてしまいました。
メイクのお陰もあるのか、目が大きくて
まるで漫画やアニメに出てくる二枚目だと思いました!



新しい支配人夫婦のやり取り(特にシャルロット夫人)は
コミカルで面白かったです。
有力なパトロンがついていると分かった途端に
掌を返す二人の現金っぷりは、分かっていても吹きました。
新しい衣裳を胸に当てて「似合う?」とやっている夫人に
その衣裳が全然似合ってなかったのも
お約束とはいえ面白かったです。



クリスティーヌが出演した劇中劇は
「真夏の夜の夢」でしょうか。
知っている場面が演じられたのは嬉しかったです。
これはこれで見たいとも思いました。



クリスティーヌの愛溢れる優しい歌にほだされて、
頑だったファントムが、心を徐々に開いていって……
とうとう、見せる事をあれほど拒んでいた仮面を取りますが
絶叫とも取れる悲鳴と共に彼女に拒絶されるシーンは
分かっていても胸が痛みました。
せ、せつない……。
そこまで言ったんだから、ちゃんと責任を取って受け止めてあげなよと
クリスティーヌに言いたくなりました。
顔の醜さは、ファントム自身の罪でなく
親の業を背負っただけなのが、また……。

勿論、クリスティーヌは
ファントムがどんな顔をしていたって受け止める気でいて、
そんな彼女でさえも悲鳴をあげて逃げてしまうほど
ファントムの顔が醜いという事や、
母親=クリスティーヌではないという現実も
表わしているんでしょうが、見ていて辛いです。
ただ、その後のファントムの独唱が力強くて
悲愴感があまり伝わってこなかったのが残念です。
これはそういう演出なんでしょうが、
私はもっとファントムの絶望を歌でねちっこく出した方が
好みでした。



撃たれた後、父親と話していて
「クリスティーナの声を聴けてよかった、生きていて良かった」と
ファントムが吐露するシーンでは、じんとしました。
また、自分が天涯孤独だと思っていたファントムが
クリスティーヌからの愛を失った後、最後に、
これまで問いただす事ができなかった父親の正体を教えてもらい、
親子の絆を歌で表わすシーンも良かったです。
「エリック、お前は私の生き甲斐だ」という歌詞にも
泣きそうになりました。

愛しい父親に撃たれた後、
愛しいクリスティーヌの胸の中で生き絶えたファントムは
その死をもって“怪物”から“人間”になったんですね。
最期、クリスティーヌの歌は、
彼を天国に導く天使の歌のようでしたし、
彼の醜い顔へのくちづけは、
辛く悲しい人生を送らざるを得なかった彼への餞に聞こえました。
夜空の下、舟に乗せられた葬送も、せつないせつない。
最後、死んだ事で、
ファントムは白のマントコート&白い仮面になれたシーンからは
純粋な愛が伝わってきました。
その下で、過去までもが浄化されているのが印象的でした。



最後、大幅のカットがあったとの説明がありましたが
クリスティーヌの声が出なくなるシーンが唐突だった以外は
あまり感じられなかったです。

最後の挨拶は微笑ましかったです。
まさに晴れ舞台だなぁと思いました。


2009-05-10 10:58  nice!(0)  コメント(0) 
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