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感想@映画「すずめの戸締り」*ネタバレあり [映画・舞台]

映画「すずめの戸締り」の感想です。
以下の記述にはネタバレを含みます。
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小説 すずめの戸締まり (角川文庫)

小説 すずめの戸締まり (角川文庫)

  • 作者: 新海 誠
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/08/24
  • メディア: Kindle版

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失礼ながら全く期待していなかったのですが、
最初から最後まで夢中で観ました。
大変面白かったです!
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新海誠監督の作品については、
「秒速5センチメートル」と「言の葉の庭」が好きです。
特に前者は、
作中の舞台の一つが私の地元の栃木ということもあり、
思い入れが非常に強いです。
しかし監督のお名前が世間に轟いた「君の名は。」は、
それなりに楽しめたものの、
後半の主人公の行動への疑問や不満が強く、
私の気持ちも徐々に
「実は苦手な作品なのかも……」と悪い方に変わりました。
その結果、次の「天気の子」は観に行きませんでした。
テレビでの放送も、
この「すずめの戸締り」の公開記念でなされた際に
ようやく視聴したぐらいです。
その時も、主人公の言動に対する不快感が募るばかりで、
「これは観なくて正解だったな」と思いました。

なので……ほんの数日前まで観に行く予定は全く無く、
おそらくあるであろう来年以降のテレビでの放送を
気長に待てばいいやと思っていました。
でも、たまたま私の誕生日が
映画館のサービスデーの曜日と重なり、
何か映画を観ようと思った際に、
消去法でこの作品が残ったという次第です。
でも、出かける直前まで
「やっぱり面倒くさいな。
出かけるのを止めようかな」と億劫がっていたぐらい、
関心がありませんでした。



前情報として得ていた作品のネタバレはこちらです。
・災害三部作の最終作
・緊急地震速報の警告音やアナウンスがある
・災害シーンがある
・イケメンが椅子になる

東日本大地震が発生した3/11、
私は栃木県内の自宅にいました。
被災こそしなかったものの、
命の危険を感じるほどの大きな地震を経験したのは
あれが初めてで、
とても怖かったです。
今でもその時の地震や津波の映像を見ると、
気分が悪くなることがたまにあります。
この作品を見る際も、最悪の事態を考えて、
中座しやすい通路側の席を選んで買いました。



最初に記したとおり、
私は最後まで楽しく鑑賞できましたが、
やはり緊急地震速報の警告音が鳴るたびに
僅かながらも体がびくっと反応しました。
また、災害のシーンでは
体の奥の方が嫌な感じでヒュッとなり、
気分も悪くなりかけました。
幸い、席を離れるほどではなかったので、
意識を一時的に
前方のスクリーンから自分に向ける程度で済みました。
自分の体調の様子見をしながら
映像をぼんやりと見ていくうちに、
お話が進んで場面も変わったので
とりあえず無事に乗り越えられました。
でも、苦手な方は本当に駄目だと思います。



前々作の「君の名は。」と前作の「天気の子」、
そして最新作の「すずめの戸締り」には、
主題が災害(天災)であるという他に、
金も権力も無い高校生の彼らが、
子供にしかできない無謀さを伴った必死の行動で
世界の危機を救おうとするとの共通点が見られます。
今作の主人公・鈴芽も、
無知であるが故のうかつな行動の結果、
姿を椅子に変えられた草太と共に
東に向かって旅をすることになります。

以前の二作では、
主人公の無謀な言動が酷くて見ていられず、
鑑賞中は不快感が募るばかりで、
最終的に作品全体への苦手意識に繋がりました。
しかし今作では、
鈴芽の頑張りが常識の範囲内だったからか、
なりふり構わずに懸命に頑張る彼女を
自然に応援できましたし、
その健気さや勇気に対して深い感動を覚えました。
何より、何も知らなかったせいとはいえ、
自分が犯した罪の責任をちゃんと取ろうとする姿勢が
大変良かったです。
ボロボロになってしまった千果の服から
再び自分の制服に着替え、
草太のアパートを出ていくシーンでの鈴芽は
実に凛々しかったです。
心の強さが出ていた表情が本当に素敵で、
私も「草太さんのこと、頼んだよ」と
声をかけたくなりました。
話の終盤で、要石になった草太を救うべく
代わりに鈴芽がそれになろうとしたシーンでは、
その必死さに胸を打たれました。
泣きました……。



それと、RADWIMPSの曲は確かに素晴らしく、
新海誠監督の作品の中でそれを耳にすると、
私も気分が高揚したり爽快感を得られたりするのですが…… 
前々作と前作ではあまりに曲の印象が強く、
作品がまるでRADWIMPSの曲のMVのようになっていたのが
気になっていました。
なので、EDでのみRADWIMPSの曲を流す今作の構成は、
私にとっては嬉しい変化でした。
実際、映画を観ている最中に
「以前ならここでRADの曲を使用していたよね」と思えた時が
いくつかありましたので、
そうではなかったのがとても新鮮でしたし、
RADWIMPSの曲を頼り過ぎない、
RADWIMPSの曲に作品を預けないという
新海誠監督なりの気構えというか
監督としての気概を感じたような気持ちになりました。

勿論、監督やRADWIMPSのファンの中には、
今作でもRADWIMPSの曲が多用されるのを期待した人が
少なからずいたと思います。
その場合は、物足りなさが
作品への不満に繋がったかもしれません。
この辺は、個々の好き好きによって
評価が大きく分かれる点だと思います。

なんていうか……
上記の主人公の無謀な頑張りの件も含めて、
前々作と前作で私が「苦手だな」と思っていた点が、
今作では全てしっかり改善されていたので、
上から目線の言葉で失礼ですが、
「今回、新海監督はめちゃくちゃ頑張ったんだな」と
思いました。
変なこだわり(独りよがり感)を薄めて、
観客を楽しませるエンタメを作ろうという徹底ぶりが
伝わってきました。
今作を観るまでは、
前々作と前作への苦手感、失望感から
「私はもう新海監督の作品を楽しめないんだ」と
諦めていたので、
今作での変化が本当に有難く、
とてもとても嬉しかったです。



最後に、細かな感想を簡単に記していきます。
挙げておきたいことが多すぎる!


・新海監督と言えば映像美!
今作でも素晴らしかった。
特に常世の空は秀逸で、出てくる度に見入ってしまった。

・緊急地震速報の警告音は何度聞いても怖い。
地震の描写も怖い。

・草太さんがとにかく格好良い。素敵。
最初にテレビでCMを見かけた時は
松村北斗さんの声の高さが気になっていたけれど、
実際に観始めたら全く気にならなかった。
寧ろ、声の高さと柔らかさが草太さんの性格を表しているようで
好感を持てた。
稔さんはこちらでもお元気そうで何より
(朝ドラ「カムカム」の安子編信者)。

・三本足の椅子が移動する描写については、
もしこれがジブリ作品なら
もっと愛嬌がある感じに描かれそう
(その方が良いかどうかは不明)。

・元が男子大学生である椅子の上に、
女子高生が座ったり上ったりする描写には
性癖のようなものを薄ら感じた。

・千果ちゃんとルミさんが親切な人で良かった。
鈴芽がいる時だけ二人のお店が変に繁盛したのは、
もしかしてダイジンのせい?
(神様と共にいる恩恵を受けられた的な感じで)
EDで鈴芽が彼女らのところを再び訪れ、
環さんと一緒にお礼参りをしているのが素敵。
観ていて和めた。

・途中まで、環さんの声が深津絵里さんだと気付かなかった。
むちゃくちゃ良かった。

・サダイジンのせいで
鈴芽と環さんは相手への強い不満を口にしてしまったけれど、
心に溜まっていた膿を吐き出した結果、更に仲良くなれて
ホッとした。
あの口喧嘩のシーンは、迫力があって凄かった。

・ダイジンかわいい。
サダイジンもかわいい。

・途中から登場する朋也くんが
後半ずっと出ずっぱりになるとは思っていなかった。
朋也くん、まじで良い人!
いっそ環さんとくっついても良かった
(けれど、そうなると稔さんが泣きますね)。

・懐メロの曲の歌詞を観客に聞かせることで
鈴芽たち一行の現状や心境を表す演出は良かったけれど
松任谷由実の名曲「ルージュの伝言」は
やはりジブリの「魔女の宅急便」の印象が強すぎるので
別の曲にした方が良かった気がする。

・鈴芽の「一度失ってしまった椅子が、
いつの間にかまたあるようになった」点の伏線回収は
タイムリープ系でよくある内容だったとはいえ
良かったと思う。
私はホラゲの「SIREN」が好きなので、
堕辰子の首が必要とされる時代に八尾比佐子が持ってくる
(八尾さんが彼女自身から受け取る)のを思い出した。

・作品のキャッチコピーとして使われ、
テレビCMでも聞くことが可能な「行ってきます」の台詞。
映画を観る前と観た後では、受け止め方に変化が出る。
いつもの日常で何の気なしに発せられるばかりの
ごく普通の挨拶の言葉が、
あの震災を通して触れると、
こんなにも重くて愛おしいものになるとは……。



心から楽しめたので、映画館でまた観る予定です。
本当に、良い作品でした!



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2022-12-01 22:52 
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