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映画「流浪の月」感想*ネタバレあり [映画・舞台]

映画「流浪の月」の感想です。
凪良ゆう先生の原作小説は未読です。
下記の文章にはネタバレを含みます。
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https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/

流浪の月 (創元文芸文庫)

流浪の月 (創元文芸文庫)

  • 作者: 凪良 ゆう
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/02/26
  • メディア: Kindle版



上映中は当然として、終わった後も、
この作品のことばかりを考えていました。
この日は、上映終了後に
名探偵コナンのハロ嫁を続けて観たのですが、
内容に全く集中できず、
やめておけば良かったと思う羽目になりました。
(観る前に二作分のチケットを既に買っていたので、
コナンは観ないという選択肢は無かったです。
そもそも、私の中では
コナンのついでに流浪の月を観るつもりだったので、
そこで帰っていたら本末転倒でした)
それぐらい、
私の頭はこの作品のことでいっぱいになりました。

正直なところ、今でも考えがまとまっていません。
この感想記事においても、
何を書いたら良いのかが分かりません。
でも、たとえ箇条書きになっても
私が思ったことをつらつらと記していけば、
それなりに形になるでしょうし、
なにより、文章として固めれば、
まとまらない気持ちも少しはまとめられるのかなと
思った次第です。
なので、いつも以上におかしな文になるでしょうが、
宜しければお付き合いください。



まず、物語を作った役者さん四名の演技が
本当に本当に素晴らしかったです。

更紗を演じた広瀬すずさんについて。
大変失礼ながら、私は広瀬さんがあまり好きではないです。
主演作の朝ドラ「なつぞら」が本当につまらなくて、
その原因の一つがシナリオだったのは勿論ですが、
彼女の演技がビミョーだったからです。
その演技にしても、
きっと制作スタッフの意図を反映してのことでしょうし、
彼女の力量は単純には測れないとは分かっているものの、
たとえば、新たに視聴する作品の出演者一覧を見た時に、
主役・準主役級で彼女の名前が目に入ったなら、
「広瀬すずか……じゃあ止めておこうかな」と思うぐらい
好ましくは思えていなかったです。
(そんな私が何故この作品を観たかというと、
松坂桃李くんが好きという気持ちの方が勝ったからです)

なので、広瀬さんには全く期待していませんでしたが、
序盤から彼女の演技にどんどん引き込まれていきました。
昔の誘拐事件の当事者(被害者)というだけでなく、
当時のことが多大に報道されたせいで、
現在も周囲(同棲中の恋人・パート先)に知られていて、
ちょっとしたことでも息苦しさを感じてしまう更紗。
作品が始まって早々に、
私はもう彼女が広瀬さんだということを忘れて、
更紗の言動を追っていました。

とはいえ、完全にそうだったわけではなく、
例外としてベッドシーンでは
彼女が広瀬すずであることを強く意識しました。
大して脱いでいないとはいえ、
「幼かったすずちゃんが、
今は濡れ場をやるようになったんだ……」と
遠い親戚のおばさんのような気持ちで観ました。

表面的にはとりあえず幸せで、
これで良いと思っていた更紗の穏やかな生活には、
文との再会を機に大きな亀裂が生じました。
婚約者の亮まで巻き込んで
(というより、亮が自ら進んで巻き込まれていった)
諸々が壊れて吹っ飛んだのは、
もう圧巻としか言いようがなかったです。
更紗が文の部屋の隣を借りたことで、
実質的な疑似同居生活が始まった時は、
曇天や雨天が印象的だったそれまでとはうってかわって
眩しい快晴になったので、
「ここで物語が終わったら、
良い気分で映画館を出られそうだな」と思いました。
二人が公園で楽しく過ごした時も
本当に楽しそうで幸せそうだった分、
その後の破綻と悲劇が余計に辛かったです。

私が一番好きだったのは、
更紗が文と再会した後に、
再びあの喫茶店に行ったものの、
何も言わずに静かに読書をするシーンです。
お湯がしゅんしゅんと沸く音を背景に、
文も同様に静かに本を読んでいたのが、
まさしく昔の二人のようで、
凄く凄く良かったです。

文と更紗の関係を言葉で表すにあたり、
色々と考えてみたのですが、
「恋人」や「友人」ではなく、
「兄と妹」や「親と子」でもしっくりこなくて、
今のところ一番すんなり受け入れられたのが
「保護者」と「被保護者」でした。
心と心は信頼でしっかりと結ばれているのだけれど、
言葉では表現できないビミョーな距離感がある
(でもそれが心地よい)
……という感じです。
だからこそ、二人が手を繋ぐことには
行動以上の心の重み(精神的な繋がり)があるんだと
強く感じました。

また、作品の終盤で
文が梨花ちゃんの件で警察に連行されそうになった時には
更紗の時にはできなかった(しなかった)抵抗を
この時は必死にしていて、
文も心が動くようになったんだな……と、
ちょっと感慨深くなりました。

文がああいう穏やかな人だから良かったですが、
たとえば上記の梨花ちゃんの一件は、
文が世間から未だにどう見られているのかを失念していた更紗に
落ち度があると思うので、
これからは気を付けながら頑張って生きてほしいです。
それにしても、
更紗のせいで二度も人生を壊されるなんて、
文にしてみれば、とばっちりもいいところですが、
彼は全くそう考えていないのが非常に興味深いです。
二人は恋人や夫婦ではなく、家族でもないけれど、
実質的な人生のパートナーというか
相手と一緒に生きたいと望む人同士なのだと
強く強く思わされました。



そして、文を演じた松坂桃李くんについて。
以前、ネットで「激痩せした」と見た時があったので、
この映画の撮影時だったのかと今さら納得しました。
ひょろひょろと縦に長い痩せた身体と、
ぎょろっとした目が印象的な顔からは、
そもそも文が口数の少ない人ということもあって、
当初は彼が何を考えているのかが分からず、
私も手探りの状態で観ました。
更紗が喫茶店に現れるようになってからは何も言わず、
彼女がストーカーのように追ってきた時も
既に恋人の女性がいるということもあって、
臨機応変に知らない人の振りをして、
更紗が齎すものをただひたすら受け止めるのかなと
思っていましたが、
彼女が隣に越してからというもの、
彼の方もまんざらではない
(更紗が近くにいるのを喜んでいる)のが伝わってきたので、
私も「あぁ、良かったねぇ……」と
微笑ましい気持ちで見守っていました。

今、こうして書いていてふと思ったんですが、
文にとって更紗は竜巻みたいですね。
不意に近くに現れて、
あっという間に文の周囲のものを巻き上げて奪い、
壊してしまう。
でも文は、そのせいで背負う羽目になる被害や苦労を
そういうものとは認識していなくて、
散らかったものを拾ったり、
失ったものをまた集めたりしながら、
静かで穏やかな時間を過ごしていく……みたいな。

ただ、文については幾つか不明なことがありました。
その最たるものは、彼が抱えている病気(?)です。
更紗の前でいきなり服を脱ぎ出したことと、
彼がロリコンのふりをしていたということからして、
彼女が見て分かるもの
(身体的な勃起障害?)かと思ったのですが、
その後に何の説明も無かったので、
あれはなんだったんだろう……ともやもやしました。
かつて文が幼い更紗と交わした会話の中で
「絶対に知られたくないこと」と言っていたことや、
思春期を迎えた頃の彼が、
成長が未熟な植木を母親が捨てるのを目撃した結果、
自分も母親に捨てられるのだという
痛烈な自己否定に囚われるようになったこと、
そして、恋人とは性行為をしなかったことからいって、
病気のせいで第二次性徴を迎えられないまま、
大人になってしまったのかなと想像しています。

でも、幼い更紗の唇についたケチャップを
文が指で拭ってあげるシーンでは、
ほんの一瞬とはいえ、
しっかりと欲情しそうになったと見えました。
文には小児性愛の嗜好は無いとのことなので、
相手が子供だからというわけではなく、
更紗だからそうだったのかもしれませんが、
だとしたら、あのシーンは、
自分はロリコンではないと思っていたのに、
うっかり子供の更紗に欲情しそうになったのを自覚して
ちょっと驚いたのかなと思いました。

今後、文が過ごしていく人生は、
どう考えても辛いものだと思います。
でも更紗という唯一の理解者を得られたことは、
彼の中では、
他の幸福を犠牲にした価値があるんでしょう。
更紗と共に生きていくことで、
どうか彼が一つでも多く幸せを感じられますように。



そしてそして、亮を演じた横浜流星くん!!!
彼も凄かった……。
大変失礼なことを書きますが、
流星くんがここまで嫌な悪役をきっちり演じられるとは、
全く思っていなかったです。
この作品は、亮がモラハラDVのクズ野郎でないと
話が成立しないので、
流星くんが酷い男を演じ切るのは必須条件だったと思いますが、
彼は見事にその役目を果たしていました。
素晴らしかったです。

個人的なことなのですが……
私が最初に流星くんを知ったのは、
「ダンガンロンパ」という2.5次元の舞台でした。
ドラマ出演などを機に人気が急に出た後は、
テレビでよく見かけるようになりましたし、
「横浜流星」という個性的な名前のお陰もあって、
彼の名や顔は全国に知れ渡ったものの、
上記の舞台以降は特に追わなかった私からすると、
彼の個性を感じられない役ばかりに見えたというか、
仮に他の若手俳優に取って代わられても
気付かないんじゃないかとさえ思ったこともあり、
自分が役者としての彼に注目することはもう無いんだろうと
ぼんやり思っていました。

でも、この作品では、
「役者・横浜流星」の力を見せつけられました。
序盤での更紗との会話であった
やんわり……でもしっかり押してくる感じの
モラハラ特有の重い言い方からして、
「何なの、こいつ」という感じで不快でしたし、
更紗のパート先に問い合わせがあったと判明した時も、
実際にはその映像は無いのに、
亮がどんな感じで電話をしたのかが
脳内で鮮やかに再生できました。
亮が文の喫茶店に現れた時も、
驚かされただけでなく、
何とも言えない感じで怖かったです。
亮が本性を剥き出しにしてからは、
「この男はやばい奴!」感が全面に出されていて、
亮くん劇場が開幕していました。
最後は、一度は更紗を呼んだものの、
もういいと言って自分から彼女の手を突き放したことからいって、
彼なりに改心したところが見えたので、
一応、良い部分もあるのでしょうが、
作品内での彼の役割はあくまで「悪者」です。
そんな彼を演じることで、
横浜流星というブランドにも影響が出たかもしれませんが、
個人的には、この作品で彼の評価がぐんと上がり、
役者としての幅が一気に広がったと思います。
少なくとも、私の中では、
「ただのイケメン役者」という認識から、
「凄い演技もできるイケメン役者」に変わりました。
見直した……と言ったら上から目線すぎますが、
本当にそんな気持ちでした。
役者 横浜流星を舐めていました。
感服しました。
恐れ入りました。



最後は、幼い頃の更紗を演じた白鳥玉李さんです。
この作品の説得力の強さは、
白鳥さんの名演があってこそでしょう。
文も大人の更紗も、
受けの演技を求められていそうだったので、
当然なのでしょうが、
ぶっちゃけ松坂くんも広瀬さんも白鳥さんに食われたなと
思いました。
それぐらい、非常に印象深かったですし、
彼女が常に作品の中心にいることに違和感を抱かなかったです。
本当に本当に凄かった!!
手放しで褒めたいし、高く評価したいです。



作品を全体的に見て書き残しておきたいこともありました。
水の音や描写が狙って使われているのが、
非常に印象的で、面白かったです。
文が幼い更紗に「うちに来る?」と尋ねるシーンは雨音で、
彼が大人の更紗に同じ言葉で尋ねた時は
同じ水でも川が流れる音になっていました。
上でも少し書きましたとおり、
二人の最初の出会いが雨、
傷付いた更紗が文を求めて追いかけた時も雨で、
二人が疑似同居を始めた時にスカッと晴れるものの、
その後はまるで水が枯渇する苦しみを味わわされるかのように
二人が地獄に叩き落されていったのは、
私の考えすぎかもしれませんが、
構成がよく練られているなと思いました。



テレビ放送や円盤などで家で視聴するとなると、
気が他のことに逸れる分、
作品を受け止める力も弱くなるので、
劇場公開中にもう一度観に行きたいです。
次は、その後に何の予定も入れないようにします。
とにかく凄くて素晴らしい作品でした。
ただただ圧倒されました。

結局、最後まで考えがまとまらなくてすみません。
そして、長文になってしまったのに
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
後で、美味しいコーヒーでも飲んでください。
私もそうします。



この日に着た服はこちら。
【20220425:チェリー柄OP(Emily Temple cute)】
https://himezakura.blog.ss-blog.jp/2022-05-27-1
コナン「ハロ嫁」に合わせました。



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2022-05-27 18:36