感想@映画「小さいおうち」*ネタバレあり [映画・舞台]
映画「小さいおうち」をテレビで観ましたので、
簡単ながら感想を書きます。
以下の記述にはネタバレを含みます。
————
劇場公開時に観たいなと思いながらも
叶わなかったので、
やっと観られたことがとても嬉しかったです。
そして、「やっぱり劇場で観ておくんだなったなぁ」と
後悔する羽目になりました。
ご存知の通り、この作品の監督さんは山田洋次氏です。
失礼かもしれませんが、山田監督の作品は、
「大作で当たり前」「良作で当たり前」という印象が強いので、
逆に私は観ようという気が起こりません。
でもこの“小さいおうち”の公開時は、
ポスターの雰囲気に凄く引き込まれており、
珍しく「観たいな」と思ったのでした。
たまたまなのですが、前夜、
観ていて物凄く疲れる映画をテレビで鑑賞したばかりでしたので、
余計にこの作品の素晴らしさが沁みました。
私は、映画制作については全く分からないのですが、
「観客を疲れさせる/疲れさせない撮り方は絶対にあるよね」と
強く実感しました。
この映画は面白く、深く感動もしたのに、
全然疲れませんでした。
じんわりと心地よい感情が、胸いっぱいに満ちています。
まず、配役が素敵すぎます。
このお話のキーマンである
奥様・平井時子を演じた松たか子さんは、
とても上品で美しく、優しさと聡明さが溢れていました。
だからこそ、板倉正治(吉岡秀隆さん)との不倫が進み、
苛々するようになってからの違いが大きく出ていて、
説得力がありました。
また、女中のタキ(黒木華さん)の素朴なかわいさも
たまらなかったです。
お見合い話を持ちかけられた際、
音を立ててお茶を呑む老人に対して密かに見せた嫌悪感や、
酒屋のおじさんに頬や腕をちょんと触られた後、
思いきりゴシゴシ擦って感触を消そうとするシーンには、
「分かる分かる」と共感できました。
お話も大変面白かったです。
現代(平成)パートにて度々聞ける
タキの孫・健史(妻夫木聡さん)のツッコミは、
戦争を経験していない私たちの声でもあると思います。
それに、現代パートが入ると、
自然に気持ちが切り替わるというか、
ちょっと一息吐けるのも、有難い構成でした。
ぶっちゃけ、最後の種明かし
(タキが手紙を渡さなかったという事実)は
蛇足だなと思いました。
その直前に流れたタキのモノローグでの自問自答と、
彼女が選んだ行動で、
タキが二人を会わせないつもりだとは分かりましたし、
「板倉さんは来ませんでした」の一文で、
タキが手紙を渡さなかった件も察しがついたからです。
でも現代パートにて、
時子の息子・恭一がその手紙の中身を知り、
初めて泣いたのを観た時に、
「ここに繋げる為なら蛇足もありかな」と
思えるようになりました。
というのも、私はこのシーンを観た時に
くすっと笑ってしまったからです。
恭一が泣きながら言っていた通り、
自分が年老いて、体も不自由になった今になって、
母親の不倫の証拠をどんと突き付けられるなんて、
とんでもないことです。
でも、「悲しい」や「残念」という負の感情より、
「まったく……しょうがないなぁ」と
思わず苦笑いをこぼしながら呆れてしまうような温かみの方を
強く感じられたんです。
既に長い年月が経過しているだけでなく、
当事者たちも既に他界しており、
この程度のことなら笑って流せるという余裕があるからかなと
思いました。
また、時子が旦那さんの雅樹(片岡孝太郎さん)と
防空壕の中で抱き合って亡くなったという事実が
この物語を上手く締めていると思います。
これが無ければ、時子の不貞だけが強調されていたはずです。
彼女はやはり雅樹の妻で、二人は夫婦だったんだということが、
改めて認識できました。
それと、この時代のちょっと裕福な家庭の様子を
映像でたっぷりと伺えるのが、
とても興味深く、大変面白く、有難かったです。
父親が家の中で一番偉いというのを始め、
日常生活に歴史を感じます。
凄く良かったと思えたのに、
こういう時に限って録画していなかったので、
後で買うかレンタルで借りるかして、
もう一度観ようと思っています。
私なんかが言えることではないのを承知で書きますが、
山田洋次監督は人が好きなんだなと思いました。
一人一人の登場人物に向けて、
分け隔てなく愛情が注がれている気がしました。
2015-03-02 01:14
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