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感想@宮部みゆき著「ペテロの葬列」*ネタバレあり [アニメ・ゲーム・漫画・小説]

宮部みゆきさんの小説「ペテロの葬列」を読みましたので、
感想を記します。

ペテロの葬列

ペテロの葬列

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: 単行本


以下の記述にはネタバレを含みます。
ドラマは見ていません。


————

「ソロモンの偽証」に続き——というか、
その第三巻と同時に、この「ペテロ〜」も借りてきました。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2014-10-19-1

宮部さんのミステリ小説は、
誰にでも起こり得るような身近な悪が描かれることが多く、
決して他人事として読み飛ばせないので、
凄く楽しめると同時に、
頭の中で自分を登場人物に起き替える行為もしてしまうので、
結構疲れます。
でも、勿論、好きです。



この「ペテロ〜」は、
主人公・杉村三郎シリーズの一つだそうです。
前々作、前作も読んだ覚えが何となくありますが、
登場人物やその設定などは完全に忘れてしまっており、
今回は新たな作品に触れる気分で読み始めました。
また、上記の通り、
つい先月までテレビで放送されていたらしいドラマは
全く見ていません。
確か初回放送日の読売新聞の朝刊のテレビ欄だったと思うのですが、
この作品の紹介記事が掲載されており、
杉村三郎(小泉孝太郎さん)が
バスの後部座席に乗っている写真だけ
見た覚えがあります。



こちらは、巻き込まれたバスジャック事件を機に
杉村三郎たちが調べることになる過去の巨大詐欺事件と、
彼の家庭問題(というより、家庭での彼の立場)の二つを主軸とし、
大小様々な「嘘」によって全体を一つにまとめている作品でした。

お話のメインは、勿論、
序盤で発生するバスジャック事件の真相解明ですが、
最後の最後になって、
それまで物語の背景でしかなかった杉村三郎のプライベートに
大きな問題が生じます。
後者については、シリーズをちゃんと追いかけてきた読者なら
「とうとうこうなっちゃったか……」と、
しみじみ思うかもしれません。
でも、読んだ覚えはあるのに内容を忘れている私には、
ちょっと唐突だと感じられましたので、
この辺りは読者によって感想が異なるだろうなと思えました。
すみませんが、私は杉村菜穂子に全く共感できず、
彼女が杉村三郎の為に切り出した離婚についても、
結局は彼女の我儘だと感じました。
ああやって真の自活を望むお姫様が頑張ったところで、
彼女が直面する現実は厳しく、
どうせ疲れて親の庇護下に戻ってくるはずだという
嫌味な想像付きです。



序盤のバスジャック事件については……
STのトレーナーだったという暮木一光の過去が判明した時に、
「実写ではどんな感じだったんだろう」との興味が湧きました。
ドラマでは長塚京三さんが彼を演じられたんですね!
もしかしたら、また再放送があるかもしれませんので、
その時は欠かさず視聴しようと思います。
それより先にレンタルで見つけたら、借りてきます。

バスジャック事件が単なる犯罪でなく、
犯人にとっては贖罪だったという設定は、
大変新鮮で、意外性がありました。
また、車内で犯人から高額な慰謝料が提示されたり、
額が大分少なくなっていたとはいえ、
それが本当に各家庭に届けられたりしたことから、
本来は起きるはずのなかった事件が
後で起こってしまったというのも、
非常に皮肉っぽい、嫌な感じの生々しい展開で、
宮部さんらしいお話だなと思いました。

また、詐欺事件というネタがもう、
「関係者は被害者であり加害者でもある場合が多い」という
複雑さを含んでいますので、
どうあっても一筋縄なお話にはなりません。
そこが、宮部さんの読みやすい文章で軽快に、
でも丁寧に描かれているので、
読みごたえのある内容になっていました。



私が一番ハッとなったのは、
巻頭にもカラーで掲載されている
レンブラントの「聖ペテロの否認」についての説明の後にあった
「どんなペテロにも、振り返って彼を見つめるイエスがいる」との
文章です。
この一文が、この作品の全てを表していると思います。
こうであるからこそ、
暮木一光は鈴木一郎としてバスジャックを行ない、
坂本啓もバスジャックを行ない、
杉村菜穂子は不貞行為を認めて離婚を切り出したんでしょう。
また、作中では地の文で、
この心の中のイエスを否定する人もいる点を挙げていますが、
それはまさに井手正男のような人物だと、
私には思えました。



二つ目のバスジャック事件のが何とか解決した直後に、
杉村夫婦の離婚問題が急にクローズアップされたことで、
私にはすっきりとしない終わり方だったと思えましたが、
物語のメインである一つ目のバスジャック事件の真相に辿り着くまでは、
大変面白かったです。
他の宮部さんの作品でも楽しめている方なら、
私のように最後はもやっとするかもしれませんが、
読んでも損をしないはずです。



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2014-10-21 14:48  nice!(0) 
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