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感想@宮部みゆき著「ソロモンの偽証」*ネタバレあり [アニメ・ゲーム・漫画・小説]

宮部みゆきさんの長篇小説「ソロモンの偽証」を読みました!
とても面白かったので、感想を記します。

ソロモンの偽証 第I部 事件

ソロモンの偽証 第I部 事件

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/08/23
  • メディア: 単行本

以下の記述にはネタバレを含みます。


————

現在、私は自宅での療養中です。
「せっかくだから、こんな時でなくては読めない本を選ぼう」と思い、
近所の図書館に行ったところ、
宮部みゆきさんの長篇大作「ソロモンの偽証」の第一、二巻を
見つけましたので、
早速借りてきました。

ソロモンの偽証は、かつて雑誌「小説新潮」に連載されていた作品で、
私もかいつまんで読んだことがあります。
しかし当然ながら、登場人物は勿論のこと、
作品の世界(物語の背景)を全く知りませんので、
「面白そうなんだけど、やっぱり分からないな」と
思っていました。
こんな分厚い本になっていたのに、まずびっくりしましたし、
何より、第二巻で終わっていなかった
(第三巻が最終)という事実に仰天しました。
長い……凄く長いです。
第二巻を読み終えた後、母に頼んで車を出してもらい、
他の利用者から戻ってきたばかりらしい第三巻も借りました。
ソロモンの偽証 第III部 法廷

ソロモンの偽証 第III部 法廷

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/10/11
  • メディア: 単行本


ツイッターでもあれこれと呟きました通り、
実を言いますと、作品の土台となる最初の第一巻は、
読んでいてとてもしんどかったです。
一部分を読んだことがあるとはいえ、内容は忘れており、
これがどういう話で、登場人物がどのように絡んでいくのかを
手探りで読み進めていくような状態で、
数人の登場人物が見せてきた痛烈な悪意は、
私の心を疲れさせました。

具体的に言いますと、告発文を作った三宅樹里と、
森内先生宛に届いた告発文を盗んだ垣内美奈絵です。

多分、他の読者も同様に感じたと思います。
この二人の悪意はどうしようもなく酷いです。
でも、彼女らがその悪意を具体的な行動に移してしまった経緯が
作中で丁寧に描かれているので、
その心情や辛さを理解することはできました。
また、彼女らの行動が、決して他人事でないと感じられたのも、
突き放して「この人たちって馬鹿だね」と笑い飛ばせない原因となり、
読んでいて疲れてしまった原因になりました。
三宅樹里と垣内美奈絵の中に生じた闇は、極端だけれど、
誰の心にもあっておかしくないと思います。
私も「自分がその立場だったら同じ行動を取るかもしれない」と
思ってしまいました。

だからこそ、第三巻で描かれた学校内裁判にて、
弁護人を務めた神原和彦が、三宅樹里の為に大出俊次を追い詰め、
心の中で彼女に「ごめんね」と謝ったかもしれないことは、
私も嬉しかったです。
三宅樹里については、
嘘の告発文を出そうかと思いつくだけで終えられた人と、
実際にそれを実行してしまった彼女の間に雲泥の差があることから、
そうしなかった人たちと一緒にしてはいけないとは思うのですが、
神原和彦に「大出俊次に嫌な思いをさせられた者ならば
そうする可能性があった」と挙げられたことは、
彼女の中で大きな救いになったと思います。
作中でもきっぱりと書かれていたように、
だから三宅樹里は最後にまた偽証をしたんですね……。
それが痛々しくて、せつなかったです。



このお話は、正しい方に動ける子(藤野涼子)が
主人公のような感じで描かれていましたので、
最後のエピローグを飾ったのが未来の野田健一であったことに、
少々驚きました。
でも、彼の「——友達になりました」の一言で、
藤野涼子も神原和彦も、もしかしたら三宅樹里も大出俊次も、
勿論、野田健一自身も、陪審員たちや他の子たちも、
辛いことがあってもちゃんと乗り越えることができて、
幸せに暮らしているような図が、自然に浮かんできました。

学校内裁判は荒っぽいやり方だったのでしょうが、
結果的に心のカウンセリングのような役割になっており、
関わった皆が「やって良かった」と思っていたのが
物凄く印象深いです。
誰もが真面目に取り組んだからこそ、
ぼろぼろに傷付いていた皆の心が、
“自分たちが辿り着いた真実”という癒しで
救われたんだと思います。



野田健一は……正直に言いますと、
当初はあまり注目していなかったこともあり、
ここまで主要な人物になるとは思っていませんでした。
彼が母親を殺そうとした夜の描写は、
怖い反面、物凄くどきどきしました。
皆が駆けつけた時の描写を読んだ時は、
私もホッとして気が抜けました。

でも一番ドキッとしたのは、浅井松子の死です。
彼女自身はそんなに重要でなく、
三宅樹里を描く為に必要な人物で、
まさに、彼女の為に死ななければならなかった
(作者に死ぬべきだと判断された)と言える生徒でしたので、
その事実が作中で出てきた時は驚きました。
ただ、平々凡々なキャラクターだったからこそ、
三宅樹里と神原和彦の悔いが映えているとも思えました。




神原和彦については……
彼は最初から不明なことが多く、
他の登場人物も彼を疑問に思うことが何度もありましたので、
彼が五回の電話の主であり、
柏木卓也の死にも深く関わっていることは、
容易く想像できました。
でも、彼の具体的なことが分からないので、
それを知る為に最後まで読んだという部分もありました。
いい子ですよね、本当に。
あの直後に柏木卓也が身を投げてしまったことについては、
あくまで彼の責任というか、彼自身の罪であるので、
神原和彦が深く気に病む必要は無いと思います。



読んでいて楽しかったのは、藤野涼子の描写です。
彼女は物語をぐいぐい進めてくれる
(読者を引っ張ってくれる)役回りですので、
面白かったです。

他、登場すると、読んでいてホッとしたキャラクターは、
津崎校長と北尾先生です。
前者は……
ぶっちゃけ垣内美奈絵の悪意ある介入さえなければ、
告発文の問題を上手く対処できていたと思います。
結果的に、多大な非難を受けて学校を追われてしまったのは
不幸としか言い様がありません。

北尾先生を好きだった理由は、単純です。
彼が良い人だったからです。
来年公開予定の映画版では、
藤野涼子の父・剛を演じられるのが佐々木蔵之介さんだそうですが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%81%BD%E8%A8%BC
私の中のイメージでは、
どちらかと言えば、彼は北尾先生の方が強いです。



上記で「第一巻は読んでいてしんどかった」と書きました通り、
第一巻は読み終えるのに時間が掛かり、気力を必要としましたが、
作品の基礎となる事件がほぼ起こった後、
主要な人物たちの決意が学校内裁判に繋がる第二巻、
そして法廷が具体的に描かれる第三巻は、
途中で止める気になれず、一気に読みました。
とにかく、この先がどうなるのかを知りたくてたまらなかったです。



長いお話ですので、
本の厚さを見ただけで
「これを読むのは無理」と思う方もいると思います。
それでも、頑張って読む甲斐のある作品だと思います。
お勧めです。

出版元である新潮社のサイトでは、
作品の一部分のお試し読みもできます。
http://www.shinchosha.co.jp/books/html/375010.html

今(2014年秋)は、ハードカバーでの既刊全三冊だけでなく、
文庫版(全六冊予定)も出ているみたいです。



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2014-10-19 13:48  nice!(1) 
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