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感想@映画「思い出のマーニー」*ネタバレあり [映画・舞台]

遅ればせながら、
ジブリの新作アニメ映画「思い出のマーニー」を劇場で観てきました。

思い出のマーニー ビジュアルガイド

思い出のマーニー ビジュアルガイド

  • 作者: スタジオジブリ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/07/19
  • メディア: 単行本

以下の記述にはネタバレを含みます。


————

正直に言いますと、観る前は全然期待していませんでした。
一応、ネタバレを回避していましたが、
ネットをしていますと、
どうしてもちょこちょこと目にしてしまう時がありまして、
一番多かったのが「百合ではない」という感想でした。
それでまぁ
「だったら、マーニーは主人公・杏奈の妄想かな?」と予想はしていました。

それだけで終わる(映画館に足を運ばずに上映終了の日を迎える)かと
思っていたのですが……。
レディースデーの今日、たまたま時間ができたので、
るろうに剣心の京都編と迷った上で、こちらに決めました。

その結果、この選択で正解でした。
マーニーが自分の想像だと杏奈が自覚する中盤から最後まで、
ずっと泣いていました。



心を閉ざしている杏奈については……
ああいう幼い思春期に、他者とは違う自分の外見の問題や
(他人には魅力的だと思われていても、自分にとってはコンプレックス)
複雑な家庭の事情があるのは
本当に辛いことだと同情しました。
そういうことがなくても辛い時期なのに、
杏奈の場合、家でも外でも息苦しさを感じていたので
逃げ場が全然無いんですよね。

お祭りで信子に対して悪口を放ったシーンでは、
「あるある」と思いました。
感情的になってついカッとなって酷い言葉を口にするなんて、
大人でもよくあることなんですから、
杏奈もあそこまで落ち込むことはないんですけれど、
彼女にはそう考えられる心の余裕が無いんですよね。

杏奈は、他人の存在を否定しているわけではないのに、
「私」しかいない世界がそれなりに楽で、
心が落ち着いてしまうので、
無理をしてまで他人とかかわりたくないようで。
気が乗らないお祭りに参加することが
勝手に決められてしまうシーンでは、
上記と同様に「あるある」と共感しながら苦笑しました。
でも、断ると角がたつと分かっていることから、
行くことに渋々ながら同意した杏奈は、
それなりに偉いと思います。
尤も「面と向かって断ることで、
面倒な子だと思われたり嫌われたりしたくないだけな小心者」だとも
言えますが。



マーニーの正体が、
実は杏奈の祖母の若き姿であると分かるくだりは、
とても良かったです。
作品を追っていくと、
その前から薄々と勘付くことはできていましたが、
久子さんの説明を聞きながら過去回想の映像を見ているうちに、
「あぁ、ここで繋がるのか!」とはっきりと気付けた時は
清々しさも覚えました。
だからこそ、その後に出てくる
湿っ地屋敷が写ったぼろぼろの写真が見つかるシーンは
蛇足だと思えました。
でも、多くの子供も見るというこの作品の特性を踏まえると、
これぐらい分かりやすく親切に種明かしをする必要もあるのかと
考え直しました。

杏奈は、幼い頃に聞いていた祖母(マーニー)の思い出話に
今の自分を付け加えた状態で、想像の世界に浸っていたようです。
物語の後半に出てくるサイロでの話は、
本来、祖母夫婦(マーニーと和彦)の話なので、
杏奈が自分を加えると、おかしな歪みが出てしまうんですよね。
それに、祖母の昔語りをベースとしている以上、
マーニーとの逢瀬には限界があるわけで、
いつか必ず彼女との「お別れ」が来てしまう
——この辺も、この作品ではうまく表現されていたと思います。

マーニーとの遊びのシーンの後は、
必ず杏奈が寝ているシーンが続きますし、
彼女との時間が現実でない(夢っぽい?)と思える描写も
細かくなされていますので、
マーニーそのものも非現実な存在だというのは
序盤から感じられます。
でもさすがに、
途中まではまさか杏奈の祖母だとは思いませんでした。
とにかく最後まで楽しく観ることができました。



自分のことしか考えられず、
「自分が辛い」「自分が可哀相」「自分が嫌い」と、
他人には目を向けられなかった杏奈が、
マーニーをもっと知りたいと思い、
彼女を思い遣ったことがきっかけで、
現実の世界でも成長を見せていたのが、本当に素晴らしいです。
彩香という具体的な友達ができて良かった。
信子とも、来年の夏は上手くやれるはずです。



養子を育てる家庭に与えられる役所の支援金については……
どちらの気持ちも分かるだけに、ちょっと辛かったです。
「本物の親子ならお金は貰わない」のも分かりますが、
現実問題、お金はいくらあっても有難いので、
公的な援助を断る義父母はまずいませんよね。
それに、「うちはあんたの分のお金を貰ってるのよ」なんて
わざわざ子に言う親も、あんまりいない気がします。
支援金が高額ならともかく、
実際には、養育費+生活費の方が絶対的に多いわけですし。
この辺で変に拗ねちゃうあたりが、
杏奈の子供っぽさ、純粋さなのかなと思いました。

そうそう、駅で大岩夫婦と初めて会った時に、
口頭ではちゃんとした挨拶ができた反面、
かぶっていた帽子を取らなかった点も、
中途半端な行儀の良さという感じで、
彼女の幼さが出てる気がしました。
(単に荷物があったせいかもしれませんが)



それと!!
どうしても特筆したいのが背景美術。
前評判が物凄く高かったので、期待もしていましたが、
予想していた以上に素晴らしかったです。
とても繊細で深みがあって、
特に緑の濃さや、建物内の光の明暗の差が美しくて、
これだけでも一見の価値があります。
凄いです。
ジ・アート・オブ 思い出のマーニー (ジブリTHE ARTシリーズ)

ジ・アート・オブ 思い出のマーニー (ジブリTHE ARTシリーズ)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/07/31
  • メディア: ムック


普段の私は、映画では滅多にパンフレットを買わないのですが、
今回は上映後すぐに買いました。
mani.jpg
こうして書いている今も、余韻に浸っています。

時間が無いので再び劇場で観るのは難しいでしょうが、
テレビでも、ストーリーが全てが分かった上で観ると
また違った印象を持てる気がします。
その時が楽しみです。



2014-09-03 18:23  nice!(0) 
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