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感想@映画「風立ちぬ」*ネタバレあり [映画・舞台]

スタジオジブリ最新作のアニメーション映画
「風立ちぬ」を劇場で観てきましたので、
感想を記します。

風立ちぬビジュアルガイド (アニメ関係単行本)

風立ちぬビジュアルガイド (アニメ関係単行本)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/07/20
  • メディア: 単行本

主な声のご出演はこちら(敬称略)
堀越二郎:庵野秀明
里見菜穂子:瀧本美織
本庄:西島秀俊
黒川:西村雅彦
カストルプ:スティーブン・アルパート
里見:風間杜夫
二郎の母:竹下景子
堀越加代:志田未来
服部:國村隼
黒川夫人:大竹しのぶ
カプローニ:野村萬斎

以下の記述にはネタバレを含みます。


————

夏休み真っ最中にジブリ作品を鑑賞!ということで、
劇場内は大変混雑していました。
子供は勿論のこと、赤ちゃん連れの方も少なくなく、
上映中はカオスな状態になっていました。



この“風立ちぬ”は、
実在の人物・堀越二郎さんの半生を描きつつ、
堀辰雄さんの同名小説の要素を加えたそうです。
つまり、
・飛行機パート(掘越二郎さん)
・里見菜穂子との恋愛パート(堀辰雄さん)
というように、大雑把に二つに分けることができます。

私は、飛行機に乗ることが好きでも、
飛行機そのものに興味を持つことはありませでした。
なので、この映画の宣伝番組で初めて、
掘越さんがあの“零戦”の生みの親であることを知りました。
そりゃ、飛行機好きの男の人が興奮して語るはずですよねww



物語は堀越二郎の少年時代の夢から始まり、
すぐに、未来の妻となる菜穂子との運命的な出会いが描かれます。
その後、幼い頃からの夢を果たし、
飛行機の設計士となった二郎は、
小型戦闘機の設計のチーフを任されるまでに出世しますが、
残念ながらテスト飛行で失敗してしまいます。
失意の中、とある山のホテルで一人、休暇を過ごしていると、
あの菜穂子と再会します。
心を通わせた二人は、お付き合いをすると決め、
菜穂子の父親の目の前で結婚の約束も交わします。

これが中盤までのあらすじです。

ここまでもそうなのですが、この先の展開も含めて、
二郎と菜穂子のラブストーリーは情熱的です。
ドラマティックで興奮します。
悲しいエピソードもありますが、全般的に凄く素敵です。
汽車での最初の出会い、関東大震災直後のこと、
避暑地らしいホテルでの再会、紙飛行機のやり取り、
結婚の約束、お屋敷の窓からのお見舞い、
山の病院(サナトリウム?)からの菜穂子の脱走、
結婚式、初夜、二郎と菜穂子の結婚生活、
零戦完成後の菜穂子の決意……
こうやって挙げていくだけで、胸がドキドキします。

個人的に特に好きだったのは、
入院中の菜穂子が、二郎からの手紙を受け取った以降の展開です。
最初は、愛しい人からの手紙が届いた!ということで、
菜穂子はうきうきしているのに、
手紙の内容が、
どうも「仕事が忙しくてそちらに伺えない」的な内容だったらしく、
しょんぼりしちゃうんですよね。
しかもここ、寝袋に包まっていることもあって、
菜穂子の落ち込み振りがひときわ強調されているんです。
で、この悲しみなどが菜穂子の原動力となって、
病院を抜け出して二郎に会いに行くという展開に繋がるのですが、
ここがもう、彼女の必死さや、
二郎への熱い想いがひしひしと伝わってくるので、泣けました。
駅で降りた菜穂子がホームを歩き出した時は、
もしここで二郎と会えなかったらどうしようと、
私も心配になりました。

また、ジブリ映画には珍しく、
二郎と菜穂子のキスシーンが何度も出てきます。
くちづけというより、
「キス」という表記に相応しい感じでチュッとしており、
微笑ましいです。
また、露骨な描写こそ無いものの、
明らかにこれから初夜だぞ!と分かるシーンがあるのに
ちょっとびっくりしました。
どちらもいやらしくはないので、
親が子供と一緒に観ても大丈夫なレベルでしたが……。

初夜の前に行なわれたお式もシーンも、大変良かったです。
黒川夫妻の問答が面白かったです。
何より、菜穂子が凄く美しかった!!!

泣きに泣いたのは、やはり終盤です。
零戦のテスト飛行を控えた二郎が出かけた直後、
菜穂子が書き置きを置いて山に一人で帰ろうとするシーン。
ぶっちゃけ、あのお見送りが今生の別れですよね。
奈穂子の気持ちを尊重した黒川夫人が、
思わず駆け出した加代を止める辺りはもう
せつなくてせつなくて、たまりませんでした。
その後の二人を一切描かず、
二郎の夢に菜穂子を登場させて
彼女がもう死んだことを匂わせたところは、
さすが宮崎駿監督だなぁと思いました。
非常にお上手です。
二郎も奈穂子も幸せそうで、
「生きて」「生きる」との言葉通り、
生に対する前向きな気持ちが溢れているんですが、
どこかせつなくて淋しいという素晴らしい内容でした。

菜穂子が黒川夫人に嘘を吐く
→加代がバスの車中から、歩く菜穂子を発見
→加代により黒川夫人も菜穂子の嘘に気付く
→菜穂子を追いかけようとした加代を黒川夫人が止める
→二郎の“夢”で終幕
……という流れは、本当に見事だと思います。
ここだけ劇場でもう一度観たいです。

ヒロインの菜穂子は勿論なんですが、
妹の加代も、めちゃくちゃ可愛いです。
二郎が優しいという設定も、
加代の懐きっぷりや、彼女との会話でよく分かりました。
また、途中から登場する黒川の奥さん(黒川夫人)が
きりっとしていて、夫以上にしっかり者で、
“いい女”の手本のような人でした。
黒川夫人が画面に登場すると、
彼女のきびきびとした言動のせいか、
その場の雰囲気が良い感じに締まっていた気がします。
二郎の周辺には、男性も女性も良い人しかいないのですが、
これは二郎の人徳だろうなぁと思いました。

さて、その男性について。
友人の本庄との友情も良かったです。
途中、二郎が設計のチーフに選ばれ
「本庄をください」と黒川に頼んだ時に、
彼からちくりと忠告されますが、
彼ら二人なら、もしそれが叶っていたとしても
大丈夫だったと思います。
それぞれの性格は違うようなのに、
飛行機好きという共通点での結びつきが強いからか、
二人揃って、前へ前へと進んでいくのが素晴らしいです。
巷では、彼らの友情を男同士の同性愛に結び付けて
萌えている人もたくさんいるようですが、
残念ながら、私には普通の友情に思えました。

黒川と服部課長の上司コンビも最高でした。
理解のある素敵な上司に恵まれて、二郎は幸せ者です。
尤もこれは、二郎が設計士として優秀だからでしょうが。



ところで、肝心の飛行機関係のお話について。
面白かったのですが、これといった笑いどころが無い他、
ドキドキと興奮したり、不安になったりすることも無いので、
私にはやや単調に思えました。
二郎が社内で着々と出世していくのを見るのは気持ち良いですし、
本庄とドイツに研修に行ったり、
あれこれと研究に研究を重ねて努力したりと、
二郎の頑張り振りを見ていると応援したくなるのですが、
楽しいと思うことは特にありませんでした。
(たとえば、二郎と本庄にホモ萌えしている人は、
彼らがドイツに一緒に研修に行ったというだけで楽しいでしょうが、
それに興味が無い私には、ただ「二人が研修した」という事実しかなく、
少々退屈でした)
伝奇物の本は、淡々とした書き方のせいか、
読んでいてあまり興奮しないと思うんですけれど、
まさにそのアニメ版です。
一つ一つのエピソードは素晴らしいですし、良いんですけれど、
それをずっと繋げて見せられると飽きるなぁという感じでした。
だからこそ、私には、二郎と菜穂子との劇的な恋愛の方が
より面白く感じられたのかもしれません。

ただ、私は飛行機に興味が無いので、
興味がある方なら、飛行機パートは観ていて楽しいと思います。
ネジのこだわりとか、引き込み脚のところとかは、
きっと興奮できるはずです。

それと、最後の夢で二郎が発した
「一機も戻ってきませんでした」という言葉は、凄く凄く重かったです。
あれは、日本人ならば、戦争を知らない私たちの世代でも
ぐっとくるはずです。



観賞後にウィキペディアを見てみたら、
作中で出てきた飛行機の写真を見ることができました。
これを見たら、興味が無い私でもテンションが上がりました。
ウィキペディア【風立ちぬ(宮崎駿の漫画)】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E7%AB%8B%E3%81%A1%E3%81%AC_(%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E9%A7%BF%E3%81%AE%E6%BC%AB%E7%94%BB)



最後に、それぞれの声を演じられた役者さんについて。
二郎役の庵野秀明さんのお声は、
すみませんが、あまり好きではありません。
別の声優さんが担当された少年期から、
庵野さん演じる青年期に移った瞬間は
「これ、絶対違うよ!!!」と思えるほど違和感が強かったです。
二郎の顔がまだ若いのに、声が低すぎます。
棒読みも酷かったですが、
“となりのトトロ”の糸井重里さんだと思えば
慣れることもできました。

逆に、ヒロインの菜穂子を演じた瀧本美織さんは
とても良かったと思います。
声に透明感と品があり、可愛かったです。
失礼ながら、テレビに出ている時の瀧本さんは、
ちょっと舌足らずなのか、
言葉や台詞をちゃんと言えていない時があって、
朝ドラの「てっぱん」ご出演時の頃から
私はそれを気にしていたのですが、
この菜穂子役では大丈夫だったように思えます。
テレビCMの「ナイスキャッチ!」の部分だけ聞いた時は
まだ不安でしたが、
実際に映画を観てみたら、気にならなかったです。

それと、最後のスタッフロールを見るまで知らなかったのですが、
他の主要なキャラクターも全て、
プロの声優さんでなく、俳優さんが声を当てていたんですね。
ジブリ映画と言えばそうであるのをすっかり忘れていたので、
(良くも悪くも、庵野さんの声に踊らされていましたww)
私はびっくりしました。
そう言われなければ分からないぐらい、
皆さんはとてもお上手だったと思います。



最初に書きました通り、
お子さん連れのお客さんが非常に多く、
途中で退屈したのか、奇声を発したり喋ったり、
おとなしく観られない子供も少なくなかったです。
背景や音楽は素晴らしく、
飛行機が飛ぶシーンは特に絶妙ですが、
子供向けとは言えない内容ですので、
他のお客さんへの迷惑も考えると、
子連れでの観劇はあまりお勧めしません。

大人は最初から最後まで楽しく観られると思います。



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2013-07-31 23:22  nice!(0) 
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