SSブログ

感想@映画「悪の教典」*ネタバレあり [映画・舞台]

映画「悪の教典」をDVDで見ましたので、感想を記します。


主なキャストさんはこちら(敬称略)
蓮実聖司:伊藤英明
片桐怜花:二階堂ふみ
早水圭介:染谷将太
前島雅彦:林遣都
夏越雄一郎:浅香航大
安原美彌:水野絵梨奈
蓼沼将大:KENTA
柴原徹朗:山田孝之
久米剛毅:平岳大
釣井正信:吹越満

以下の記述にはネタバレを含みます。
原作の小説や序章の映像は見ていません。


————

去年の劇場公開時から気になっていたのですが、
猟奇殺人系は苦手なので(夢で見ちゃう)
敢えて観なかった作品です。
でもずっと気になっていたので、
今回、DVDのレンタル開始に合わせて借りてきました。



この作品は、拷問・殺人シーンがあるからか、
R15指定となっています。
でも、この手の映画を苦手とする私には、
R18でも良かったかなぁと思えました。
文化祭の準備で生徒たちが学校に泊まる夜、
校舎内で彼らが次々とハスミンに撃たれていく時は、
多くの生徒があまりにもあっさり殺されていくので、
ずっと見ていると、生徒の死に対して嫌でも慣れてしまいます。
(殺し方が銃殺ばかりなので、悪く言えば「飽きる」)
また、一部のシーンでは、
明るくて軽快な音楽がBGMとして使われており、
まるで“ハスミンによる殺人ショー”が行なわれるみたいに
娯楽性がとても強調されているので、
さほど怖くなかったです。
でも!!!
中盤で行なわれる早水圭介(染谷将太さん)への拷問シーンが、
私には厳しかったです。
画面を見ていられませんでした。

ただ、見ていて一番「痛い」と思ったのは、
白井さとみが校舎の窓からロープで下りようとして
着地に失敗するシーンです。
あれは痛い。
当たり前ですが、私には銃で撃たれた経験が無いので、
その痛みについては想像するしかありません。
でも、私はしょっちゅう足首を捻挫しているので、
そのシーンでは、記憶にある痛みが瞬間的に蘇ってしまい、
冷や汗が出て、吐きそうになりました。



嘘をつく人間は、その嘘を誤魔化す為に
また新たな嘘をつくと言うように、
この映画では、
主人公のハスミンこと蓮実聖司(伊藤英明さん)が
殺人を誤魔化す為に新たな殺人を繰り返し行なっていき、
遂にはクラス全員の皆殺しを実行しようとします。
このように、あらすじだけでもショッキングな内容ですが、
さすが三池崇史監督、上手くまとめたなぁと思いました。
教師による殺戮映画ですので、精神的に疲れますが、
話は分かりやすいですし、
撮り方も観客(視聴者)に親切だったので、
内容の割に見やすい映画だったと思います。
撮影係の生徒が殺される時、
それまで神の目(視点)だった映像が
彼の額に固定されているカメラのものに
突然切り替わるあたりが良かったです。
また、ハスミンが、
教室内の些細なこと(物音やカーテンの動き)に気付いて、
そこに生徒が潜んでいるのを知ったり、
白井さとみが亡くなった後、
彼女が使ったロープの結び目が動いていることで、
生徒がハスミン襲来に気付いたりするシーンは、
ミステリというよりホラーだったと思います。
それらも、ただ怖いのではなく、
まるで、バイオハザードやメタルギアソリッドといった
スリル系アクションゲームのプレイ映像を
見ているような感覚がありました。
怖いんだけれど、あくまで他人事!みたいな
目に見えない境界線が、
ちゃんとありました。



それにしても、見ていて不思議だったのが、
ハスミンが生徒を追いかけるシーンの一部では、
恐怖に怯える生徒にだけでなく、
ハスミンにも感情移入できた点です。
勿論、生徒が味わわされている恐怖も
自分のものとして伝わってくるので、大変怖いのですが、
ハスミンとして感じられる高揚感もあったんですよね……。
なんと言えば良いのかが全く分かりませんが、
逃げるものを見たらつい追いかけたくなるハンター心が
瞬間的に煽られる感じ……??
でも、生徒がハスミンに殺されるのはショッキングなので、
彼らが撃たれた瞬間、
その高揚感はすーっと消えて、気持ちも冷めて、
「ハスミン、怖い!!」という恐怖のみが残ったんですけれども。



それと、やはり、
爽やかな笑顔が印象的で優しそうな人気男性教師が、
実は、他人を躊躇いなく殺せるサイコキラーだったという設定は、
インパクトがありました。
映画“海猿”シリーズで
人命救助に必死に励んでいた役者さんと同じ人が
このハスミンを演じている事実は、
観客の興味を引けるだけのギャップを生んだという成功に
繋がったと思います。
正論と現実の差で苦しんでいる海猿の伊藤さんも良かったですが、
悪の教典でのうさん臭いイケメン教師も似合っていました。
ただ、私は、
この映画でも伊藤さんの肉体美が披露されるとは知らなかったので、
ハスミンが裸で懸垂をするシーンでは、
シリアスなところだったのに、
「海猿と一緒ww」と笑ってしまいました。

「先生、俺、東大に行かなきゃ」
「To Die?」
のやり取りもおかしかったです。




あと、実は公開中に
「ほも描写があって、男子高校生がフ○ラされている!」と
私の周辺で話題になっていまして、
私も非常にドキドキしながらこのシーンを待ってたのですが、
前島雅彦役の林遣都さんが
それっぽく喘いでいるシーンが短く流れただけだったので、
「なんだー」と肩透かしを食らいました。
ちょっと期待し過ぎましたが、
若手人気俳優の林さんが、ほもネタで色っぽく喘いでいるのは、
よくよく考えてみれば凄いことですよね。



生徒たちの描写が少ないからか、
一度見ただけですと、ほとんどの生徒の区別がつかないのが
残念でした。
また、最後まで生き残った二人が、
片方が知恵を絞ったからこそ殺されなかったとはいえ、
これといって活躍しないで終わるのも、
ちょっと物足りなかったです。
この作品はアクション映画ではないので、
生き残った生徒が、逃げている最中に
必ずしも活躍しなければいけないという必要性は無いのですが、
映画という娯楽だからこそ、
能動的に動いた生徒から死んでいく無情さが
不条理に思えてしまいました。
私の好みとしては、この辺は、お約束通りの方が好きです。
(バトロワのように、主役級の生徒がリーダーシップを取り、
辛うじて彼らだけ生きのびるという展開)

途中、職員室に戻ったハスミンが、
クラスの出席簿で生徒の名前を消していく
(ラインを引いて名前を潰す)シーンが
とても良かっただけに、
それが一度あった後、生徒の生存数を確認したり、
殺した生徒を数えていくシーンが全く無かったのは
残念でした。
映像が無かっただけで、
ハスミンも「あと二人」だと分かっていたからこそ、
最後、脱出用のシューターで二人殺したと思い込んだ時は、
「卒業おめでとう」の言葉が出たんでしょうが、
いちいち確認するシーンを入れてくれたら、
「まるで出席を取るみたいに〜」という映画のコピーが
もっともっと生きたのではないかと思いました。
(このコピーがとても上手いと思えるだけ余計に)



たくさんいる生徒の中で、一番強く印象に残ったのは、
高木翔の行動です。
私だったら、あの状況ではまず学校に戻りません。
というか、いくら好きな人を救う為でも、
ハスミンが怖くて戻れないです!!!!
高木が最後に放った一矢は、
ハスミンが撃った散弾銃の弾の一つに当たったせいで、
軌道がそれていましたが、
もしそうでなかったら、
ハスミンに致命傷を与えていたかもしれないと想像すると、
とてもせつないです。
高木と白井さんの恋は、よりにもよって成就する直前で、
双方の死により、永遠に失われてしまいましたが、
お互いの気持ちは、あの再会の一瞬で通じていたようなので、
その救いが、二人の悲劇性をより高めていたと思います。



笑ってはいけないのでしょうが、
柴原徹朗(山田孝之さん)がパンツの匂いを嗅ぐシーンでは、
つい笑ってしまいました。
「美彌?」と、パンツの持ち主の名前を聞く辺りも間抜けで、
その直後に彼が殺されるシーンがあったにもかかわらず、
全く悲しくありませんでした。
柴原はドラムを叩くのがとても上手くて、
それを生徒に褒められたのが実は嬉しくて、
気分が良くなった弾みで彼らにジュース代を渡すシーンは、
見ているこちらも気分が良かったですが、
彼の裏の顔は、生徒を脅して身体を求める淫行教師ですからね……。
この学校の生徒は曲者ぞろいですが、
先生も、純粋に“良い先生”が一人もいないようなのが
とても現実的に思えました。
最近は、映画でもドラマでも小説でも、
教師という職業に夢を持たせない描写が多いですが、
犯罪に手を染めている教師が同じ学校にごろごろいる状況は、
やはり普通でないので、
頭に強く残りました。



最後、二人の生徒が生き残る為に仕掛けたトリックは、
脱出用のシューターが出てきた時点で分かりましたが、
AEDの録音機能についてはすっかり忘れていましたので
(そのケースが開いたことはちゃんと見ていたのに)
「あぁ!!!!」と思いました。
また、美彌が生きていたのは良かったです。
彼女には何の思い入れも無いけれど、
あの状況で生きている生徒が一人でも増えたことは
本当に喜ばしいです。

また、ハスミンが心神喪失による免罪を狙う展開も
予想していなかったので、
あのシーンでは彼が空恐ろしくなりました。
“To be continued”の文字で終わるのも怖い!!!!
でも、もし続編がまた実写化されたら、
その時は映画館に行くと思います。
怖かったですが、面白かったので。



この作品は、
“殺人エンタメ映画”として、とても面白かったです。
ただ、大量殺人が話のメインですので、
観た後に爽快感を覚えることはないですし、
気分が悪くなったり、不快になったりしてもおかしくないです。
私には子供がいませんが、
もし高校生の子供がいたら、見せたくありません。
(映画が子供に悪影響をおよぼすのを心配するというのではなく、
単なる気分的な問題です)

なので、家族や友達と一緒に
わいわい話しながら作品を見るぐらいが
状況的にも気分的にもベストかなと思います。
話にも映像にもツッコミどころが多いので、
皆でああだこうだ言いながら見ると、
作品が持つエンタメ性がぐっと上がり、
逆に、殺人という単語や映像が持つ陰惨性が下がるので、
娯楽としてより楽しめると思います。
(猟奇殺人系の作品が苦手な人も見やすくなるかと)



悪の教典 Blu-ray スタンダード・エディション悪の教典 上 (文春文庫)悪の教典 下 (文春文庫)悪の教典(1) (アフタヌーンKC)悪の教典(2) (アフタヌーンKC)悪の教典 オリジナル・サウンドトラック




2013-05-25 19:25  nice!(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0



この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。