さくらもちモチ

感想@映画「ふがいない僕は空を見た」*ネタバレあり　[映画・舞台] [編集]

映画「ふがいない僕は空を見た」をDVDで見ましたので
感想を記します。

以下の記述にはネタバレを含みます。
原作の小説は未読です。


————

劇場公開時から気になっていたのですが、
映画館に行く時間を取れず、
結局、こうしてDVDでの鑑賞となりました。
観ようと思ったのは、
主演の田畑智子さんが割と好きな女優さんであるのと、
彼女がコスプレでのセックスに興じるという
なんとも刺激的な状況を映像で見たかったからです。



結論から言えば、この映画は、
私が期待していたものと大きく違いました。
途中までは、DVDのパッケージ
（劇場公開時のポスターでもありました）から想像できるように、
男子高校生・斉藤卓巳（ムラマサ様/永山絢斗さん）と
若い主婦・岡本里美（あんず/田畑智子さん）の不倫話が
語られるんですけれども、
全体の三分の二を過ぎた頃から、
卓巳の友達・福田良太（窪田正孝さん）がメインの話となり、
貧乏から生じる不幸からどうしても脱せられない
怒り、虚しさ、悲しさ等が語られます。
ただ生きるのも辛い状況を延々見せられます。

良太がメインとなる話の出来は、決して悪くないです。
コンビニで働いている彼も、実は人に言えない悩みを抱えていて、
生き地獄とも思える過酷で悲惨な現状に喘いでいることには、
私も同情を寄せずにはいられませんでした。
また、話の序盤で卓巳に「母親から」と言われ
手作りのお弁当の差し入れを貰うのですが、
実は、良太は自分が彼ら親子から憐れまれていると思っており、
その点に不満を持っていますので、
卓巳の前では愛想良く「ありがとう」と受け取ったものの、
密かに捨てています。
おそらく、良太は日常的にこうしていたんでしょう。
しかし生活費に困るようになり、
日々の食事もまともにできなくなった時に、
ひょんなことで、この差し入れを再び受け取ることになり、
余裕が無い今度はそれをがつがつ食べます。
このシーンでは、
人の優しさに触れて感動している良太の
素直な心が見えたような気がして
私も嬉しくなりました。
それと、バイト先のコンビニで親切にしてくれた
ホモ疑惑のある先輩が、
性犯罪で捕まってしまう展開には、
重いものを感じてしまいました。
表面的には苦労を全くしていないような人ですら、
心の闇はすぐ傍にあって、
人それぞれの苦しみにもがいているんだというのが
よく分かりました。

でも！！！
私は、この映画でこういう話を見たいとは
全く思わなかったんですよね。
なので、卓巳と里美の不倫話が
両者の破滅という形でとりあえず終わり、
良太の視点で後日談が少し語られるんですが、
「あれ？」と思っているうちに、
良太の貧乏苦労話が主になってくるので、
不満が募りました。
こういうエピソードが入るのも悪くないですが、
こんなに長い尺でやられると、
なんだか騙されたような気もしてきて、
悪印象に繋がってしまいました。
最初からそれを知っていたなら
（ポスターからそれを読み取ることができれば）
受ける印象も違ったと思うので、残念です。

良太は、自室に引きこもってしまった卓巳の
見舞いに行きながらも、
彼をより追い込むようなことをし、
（動画から印刷したコスプレ画像付きの
悪意の固まりのような中傷ビラを
バイト仲間と一緒にご近所や教室内にばらまいた）、
学校復帰の際にはまた卓巳の力になってやるあたりが
非常にリアルだと思えました。
友達を大事にするのも、心配するのも、
その友達を傷つけることで自分の不満を昇華するのも、
これらの気持ちが共存してしまうのも、
現実には決して珍しくないですので。

ところで、作中では一度否定していましたが、
バイト仲間の女の子は、
あんなビラを作ったことからして、
実は卓巳を好きだったんですよね……？？
彼女も彼女で相当歪んでいると思います。



さて、一応メインである卓巳と里美の不倫話。
お話は、最初は卓巳の視点、
次に里美の視線で描かれるので、
この時の里美は実はこうだった……という感じで
状況が詳しく解明されていくのが興味深く、せつなかったです。
特に、お店の育児グッズ（？）売り場で偶然に会うシーン。
セックス中に「大丈夫だから」と言われて中だしをした後なので、
卓巳はちょっと複雑な心境で「子供ができた？」と尋ね、
里美に否定されます。
最初にこのシーンを見た時は、
卓巳の視点ということもあり、
また、里美の状況が詳しく分からないので、
彼女の返事の真偽も全く分からないのですが、
暫くした後、里美の視線で語られた時に見ると、
もうせつないせつない。
里美は不妊治療中で、
子供ができないことに対して困っているのに、
一日も早く孫が欲しいと切望している義母から
厳しい嫌みを言われたり、激しく詰られたりして
辛い立場にあります。
しかも、唯一の味方となってほしい夫も頼りなく、
家で孤立しています。
上記の卓巳と偶然に会うシーンも、
その件で酷く落ち込んだ後なんですよね……。
不倫はいけないことですが、
里美が精神的に追い詰められていたことは確かなので、
それに走ってしまった彼女の心境は理解できました。

特に、いきなり家を訪ねてきた義母を
里美が一緒に歩きながら送るシーンは
見ていてきつかったです。
最初は、義母が女友達の話をしているんです。
その女友達も、普通のことを普通に言っただけなのでしょうが、
孫が欲しくてたまらない義母は
自分へのあてつけ、嫌みとして受け取ってしまい、
それに対する文句を里美に聞かせます。
しかし、次第に感情的になっていった義母は、
その文句を里美への怒りに変えるんです。
ここがもう、自分が言われているわけではないのに
辛かったです。
義母の考えが極端であることは分かっているんですが、
もし自分がこんなことを日常的に言われ続けていたら、
精神的におかしくなって当然だと思えるほど、酷いです。

結局、この義母が暴走し、
里美と卓巳の情事を密かに録画して、
息子（里美の夫）に見せるという
物凄い展開になります。
また、里美がそれを知った際に、
夫から「止めないとこの動画を流すぞ！」と脅されるんですが、
再び卓巳とのセックスを隠し撮りされたことで
夫にバレてしまい、
本当に動画サイトにアップされてしまいます……。

私が凄いなぁと思ったのが、
不倫がバレたと知った里美が、
義母や夫の前で土下座をして
「離婚してください」と頼んだのに、
彼女の夫である息子が里美をまだ本気で愛していることから、
義母もそれを認めず、
結果的に里美にとって一番辛い罰を与えたことです。
義母自身は、里美に対し、面と向かって
「お前は欠陥人間だ」と罵るぐらい、
彼女を嫌っていますので、
今すぐにでも離婚させたかったはずです。
でも、可愛い息子がそれを本気で嫌がったので、
できなかったという。
義母自身にその意図は無かったはずですが、
里美は彼女によって重い罰を背負わされてしまいました。

なので、最後、アメリカから帰国したらしい里美が
穏やかな表情を受かべていたことには
ホッとしました。
アメリカでの生活も相当辛かったはずですが、
一人でいることからして、離婚してもらえたようですし、
彼女の未来に幸せがいっぱいあるようにと
祈らずにはいられません。



卓巳については……
里美とのコスプレセックス動画が流出した後は大変でしたが、
その前までは、ごく普通の生活を送っていたこともあり、
特に思うことはありませんでした。
好きだった女子生徒から告白された後、
あのまま里美と別れていれば、
若気のいたりでちょっと羽目をはずした程度で
済んだかもしれないと想像すると、
何とも言えない気持ちになります。



田畑さんの脱ぎっぷりやセックスシーンは
評判通りに凄かったです。
さすがに結合部は上手く隠してますが、
おっぱいはババーンと出てますし、
乳首もばっちり映っています。
セックスそのものも非常に生々しい。
田畑さんが魔法少女系のコスプレ衣裳を着たままする他、
普通の服を脱いでする時もありました。
でも、生々しいのに全然いやらしくなくて
——特に、その普通の服を脱いでする時は、
両方とも相手が好きで好きでたまらないという感情が
ひしひしと伝わってくるので、
とても良かったです。
見ていてせつないセックスでした。
田畑さんの喘ぎ声もかわいい。



良太の話はともかく、
メインの不倫の話はとても面白いですし、
セックスシーンも見ごたえがありますので、
お勧めしたいのですが、
不妊治療をしている人や子供を諦めた人には
本当に辛い内容なので、
（それぐらい、義母の罵りが酷い）
見る人を選ぶ作品だと思います。
ちなみに、この作品はR18指定です。