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感想@映画「大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]」*ネタバレあり [映画・舞台]

映画「大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]」を見てきましたので
感想を記します。

大奥 第5巻 (ジェッツコミックス)

大奥 第5巻 (ジェッツコミックス)

  • 作者: よしなが ふみ
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2009/09/29
  • メディア: コミック

主なキャストさんはこちら*敬称略
右衛門佐(水無瀬継仁):堺雅人
徳川綱吉(徳子):菅野美穂

桂昌院:西田敏行
柳沢吉保:尾野真千子
秋本:柄本佑
御台所(信平):宮藤官九郎
伝兵衛:要潤


私は、よしながふみさん原作の漫画を読んだことがあるものの、
この「右衛門佐・綱吉篇」の話は手元に単行本が無く、
内容についてはうろ覚えです。
テレビドラマ版の大奥〜誕生[有功・家光篇]は
最終回の放送のみ、ちょろりと視聴しました。
多部ちゃんの上様は可愛かったと思います。
好きです。


────

実を言えば、前作の映画(水野・吉宗篇)が
あっさりし過ぎているせいでつまらないと思った他、
今回の映画に対する感想の中で、
原作を読んでいる方たちの評判があまり宜しくなかったので
(特に終盤について)
観る前は全く期待していませんでした。
でもでも、いざ蓋を開けてみたら、大変良かったです。
私好みの作品でしたヽ(o゚ω゚o)ノ

ただ、前作の映画“水野・吉宗篇”については
リアルタイムで漫画の連載を読んでいて、
単行本も所持していたので、
原作に対する思い入れが強く、
実写映画に対するハードルが高かったかもしれません。
今回はそれをちょっと懸念して、
内容をろくに覚えてないのを良いことに、
「映画を観たら、改めて原作を読み直そう」と思っており、
未読のまま映画館に行きました。
なので、もしかしたらそれが良かったのかもしれません……。



テレビドラマ版の“有功・家光篇”は
二人の恋愛を主軸に描いた作品です。
ただ、今回の“右衛門佐・綱吉篇”は、
最終的には二人の恋愛がメイン(話の主題)になるものの、
それが具体的に出てくるのが後半をかなり過ぎてから……というか、
ほぼ終盤ですので、
たとえば、テレビドラマの“有功・家光篇”を見て、
「この二人ってば、いいわ〜素敵だわ〜」と思った勢いで
原作未読のまま、
右衛門佐と綱吉の恋愛目当てで映画を観ようとすると
物足りないと感じるのでは?と思わずにはいられませんでした。

原作をお好きな方なら、
また、前作の映画(水野・吉宗篇)を観たことがある方なら、
二人の恋愛という主題は最後にならないと出てこないと分かっている、
或いは、こういう状態でも別に平気だと思いますので、
特に支障は無いはずです。
予備知識が無く、恋愛面で過剰な期待をして観に行くと
「え? これだけ?」となるかもしれません。

なので、単純に
「右衛門佐と綱吉の人生の一部を観るついでに、
大奥にいる二人がどうやって結ばれたかを観る……」
という心づもりで行くのが、ベストだと思います。



序盤は、設定や登場人物の説明描写ばかりですが、
右衛門佐が具体的に登場してからは、ぐっと面白くなりました。
ここら辺は、私の中でも
原作の漫画を読んだ時の記憶が鮮明に残っており、
右衛門佐が年齢を理由にしてお褥を拒否するのを覚えていましたけれど、
観ていて「おおー」と思いました。

その後の話は……
可愛い世継ぎ(姫)の成長を楽しみの一つとし、
政(まつりごと)にも興味を示していた才女の綱吉が、
その大事な姫を病で亡くしたのを機に、
辛い日々を過ごすようになります。
綱吉は、元々、男好きではあったものの、
“世継ぎを産む”という最も大事な仕事を果たす為に、
身分に関係なく男に手を出していく
(出さざるを得なくなる)ようになり、
それが観ていて本当に可哀相に思えてなりません。

しかも、周囲の人間(右衛門佐と桂昌院)が
様々な策を画し、財を尽くしても、世継ぎが全くできないので、
その苦労が綱吉の心を蝕んでいきます……。
綱吉は弱音を気楽に吐けない立場にありますので、
とある事件を機に
右衛門佐に辛さをぶちまけるんですけれども、
それがもう痛くて痛くて、
私は涙無しには観られませんでした。


で、日本史を学ぶ上で必ず習う「生類憐れみの令」が出されます。
しかし、この具体的な史実エピソードが入ったにもかかわらず、
今の日本人が綱吉に抱いている悪いイメージは無く、
一人の女性・一人の将軍・一人の娘として
必死に生きている彼女の姿がより鮮明になります。


最後は、右衛門佐と結ばれたことで心が救われた綱吉が、
世継ぎを別に決め(他の徳川家の者を次期将軍として指名した)、
将軍としてでなく、一人の女として新たに出発しようとしたところ、
肝心の右衛門佐が既に事切れていて……という終わり方でした。

個人的に、死にネタ・死に別れエンドが大好物で、
こういうシチュエーションにはどうしようもなく惹かれてしまうので、
この映画のラストシーンも私の好みでした。


これはですね、異論が多々あるのは否定しませんが、
死にネタ・死に別れエンドが好きな人間として説明しますと、
最後に二人が会えないからいいんですよ。
新たな道を進もうと決めた主人公がそれを実行した時、
大事な大事な相手が既に亡くなっていたことによって、
二人が結ばれた夜がまさに“最初で最後”のものになり、
特別感がより増すんですよ!!!
片方が亡くなってしまうのは悲しくて淋しいけれど、
創作の世界に限って言えば、これはこれで幸せなことなんです。

何より、桂昌院から巣立ちした直後の綱吉が
右衛門佐の元に行こうとして、いそいそと走っていたところ、
途中で吉保に阻まれますけれども、
考えようによっては、この吉保との一件さえなければ
綱吉は右衛門佐の最期に間に合ったかもしれません。
私は、こういう「たら」「れば」の感情に支配される世界も
たまらなく好きです。
最後の最後、何も知らない綱吉が
希望に満ちた顔で障子戸をがらっと開けるシーンで終わるのも、
大変良かったなぁ。

この辺の評価については、個々の好みの差が大きいので、
こういう不幸ネタが好きではない方は
もしかすると「なんでここで終わり?」と思うかもしれません。
けれども、私にとってはベストエンドです!!
最後はぶった切りだとも言えますけれど、
そうされたことで余計に、
その後に起こったであろう出来事に対する想像が
余韻として深く重く漂いますので……。

この、肝心なところを描かない(寸止めで終わらせる)手法は、
不幸系のネタが描写される時によく使われるものなのですので、
新鮮味は無かったです。
でも、これが最後のカットに用いられるのは最近観ていなかった分、
(話の途中の1エピソードの締めとしては頻繁に使われている)
私の心によく響いたんだと思います。



綱吉を演じられた菅野美穂さんは、
ポスター画像を見た時に、失礼ながら
「(年齢的に)きっついかな」と不安になりましたけれど、
綺麗で可愛い上様で、素敵でした。

右衛門佐の堺雅人さんは……
ううん、私の頭に僅かに残っていたイメージとはちょっと違うんですが、
彼以外の役者さんを挙げることもできないので
これで良かったんだと思います。
でも、最終回しか見ていないとはいえ、
テレビドラマの有功のイメージが強かったので、
こちらをちゃんと視聴していたファンの方は
もっとそうだったのではないかと思いました。

なんだかんだでオイシイところを全部持っていったのが
桂昌院役の西田敏行さん。
さすがです。
柳沢吉保との濡れ場は、別に肌が見えているわけでもないのに
ミョーに生々しくてエロいなぁと思いました。

その柳沢吉保を演じられた尾野真千子さんも良かったです。
綱吉とは、主従であり無二の友であり、
同性の恋人のようでもあり、もう一人の自分でもあるようなので、
彼女と二人きりの時の独特で濃密な雰囲気が凄かったです。

また、呑気というかマイペースだった御台所(宮藤官九郎さん)と
なさけなさ全開のお伝の方(要潤)も良かったです。



そうそう、ポスターと言えば、この作品のメインビジュアル。
右衛門佐と綱吉が顔を寄せ合っている構図です。
これ、映画を観る前は普通に
「二人がくちづけをしようとして、顔を見合っている」図だと思っていましたが、
違うんですね!!
実際は、綱吉が右衛門佐に自分を殺せと命じている図なので、
このシーンを観ながらポスターを思い出し、
内心で「あああ……!!」と叫んでいました。



私は割と原作厨なので、
原作がある作品の実写化を観た時には
原作派になることがほとんどなんですけれども、
今回は、
映像でないと分かりにくかったり感じられなかったりした部分を
(建物の奥行とか、衣裳の豪華さとか)
ちゃんと見聞きできたのが
嬉しかったです。
綱吉は、衣裳も素晴らしいんですが、
髪飾りが素敵で素敵でもう……!
綱吉が少し動く度に、それがしゃらんと動くのに
ちょっと見入ってしまった時もありました。



今回はお正月明けのレディースデーだったからか、
席が悪かったので
(席の場所は良かったんですが
凄く迷惑なお客さんが近くに数組もいた)
落ち着いたらもう一度観たいなぁと思っています。
その前に、久し振りに原作を読んでみるつもりですので、
自分の中で感想の変化があるかもしれないのも、
愉しみの一つです。


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2013-01-09 23:39  nice!(1) 
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