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感想@漫画「鋼の錬金術師」第108話(最終回)旅路の果て*ネタバレあり(月刊少年ガンガン2010年7月号) [アニメ・ゲーム・漫画・小説]

月刊少年ガンガン2010年7月号に掲載された
荒川弘先生の漫画「鋼の錬金術師」
第108話「旅路の果て」の感想です。
今回がとうとう最終回です!

少年ガンガン 2010年 07月号

少年ガンガン 2010年 07月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
  • 発売日: 2010/06/11
  • メディア: 雑誌

以下の記述にはネタバレを含みます。


最後という事で、今月号は、
このハガレンが表紙&巻頭カラーでした。
エドが“おとうさま”を素手でぶん殴った図で始まったお話には、
とても興奮しましたし、何回も泣かされました。
いやぁ……良かった良かった。
いい最終回でした。
“泣き”の波が一つ鎮まったと思ったら、
次の“泣き”の波に襲われる……という感じでした。

こちらは登場人物が多い作品ですので、
皆が決着をつけるとなると、どうしても
細切れのエピソードが繋がれる仕様にはなりますが、
それぞれは決してバラバラではなく、
主人公のエルリック兄弟を主軸にして
上手くまとめられていたと思います。



まず最初に私がグッときたのは、やはりグリードです。
昔、このガンガン本誌で
リンの体内にグリードが入れられた時は
「あぁ、これでリンは終わったな」と思った事もありましたが、
今回は、当時は待ち望んでいた二人のお別れシーンが
あったにもかかわらず、
もうもう泣かされました。
まさにグリードとリンは、“魂の仲間”なんですね。
強欲の名を冠していた通り、なんでも欲しがっていたグリードが、
リンとの強い繋がり・絆を感じて
「もう充分だ」と満足するくだりでは
泣かずにはいられませんでした。
しかも、リンから離脱させられたグリードは、
自分の創造主でもある“お父様”を裏切りましたし……。

グリードが、特に人の情(なさけ)に対して
強いこだわりを持っていたのは、
以前のグリード
(ブラッドレイに殺された部下を持っていた頃)の時代から
はっきりと描写されていました。
きっとグリードは、他の何を手に入れても満足できず、
「まだ欲しい」「物足りない」と
枯渇感を味わわされていたと思います。
“何でも欲しがる“……と書くと、そう辛くは感じませんが、
逆に、“何を手に入れても満足できない”と言い方を変えると、
これはこれで、ものすごく不憫で哀れな事です。
なので、最終的にグリードは消滅してしまいましたが
その直前で、リンという真の友/魂の仲間を手に入れられた彼は、
他の何を手に入れてもこうは思えないほど、
深く満たされていたはずです
“お父様”に作られたホムンクルスは、
総じて、あまり幸せでない生き方・死に方をさせられましたが、
グリードは主人公側についた特典として
良いものと見せ場を作者に与えられたと思います。

というか、本当に良かった…… (うωと)
他の読者の皆さんもそうでしょうが、
私にとってグリードは、
思わず「グリードさん」と呼称付きで読んでしまうほど
親しみやすくて、大好きなキャラクターでしたので
幸せな気持ちで、しかもエド達の役に立って逝ったのが
嬉しかったです。
更に贅沢を言えば、
セリムがブラッドレイ夫人の元で生かされているのを思うと、
グリードにも生きていてほしかったですが……
でも、グリードにとっては、ある意味、
欲しいものがなくなってしまうことは、
“死”を意味する事でしょうしね。
それに、やはり
“欲しいものを全て手に入れたので死ぬ”という終わり方は、
キャラクターとしては幸せだと、私は思います。



次に泣けたのは、最終決戦が終わった後、
アルの身体が戻ってこないのに皆が気付き、
人体錬成をやり直す(アルの身体を引き戻す)にしても
等価交換する為の材料が無い……となって、
エルリック兄弟の父親・ホーエンハイムが、
自分を使えと言った時です。

こうやって迷いもなく言える事もそうなのですが、
理由が、子供たちに対する詫びや、責任を取るという事でなく、
純粋に、父親として子供を助けたいという気持ちだったのが
本当に素晴らしかったです。
まさに、親としての無償の愛ですよね。
そして、ホーエンハイムのこの気持ちに呼応して、
エドが初めて彼を「親父」と呼んだのも良かったです。
ホーエンハイムは、今でこそ誤解が解けて、エドと和解していますが、
彼から恨まれたり嫌われたりしていたのを
よく分かっていたでしょうから、嬉しかっただろうなぁ。

そして、その後、愛しい妻トリシャの墓標の前で
ホーエンハイムが逝ったシーンでは、涙が止まりませんでした。
かつてトリシャが残した遺言の通り、
ホーエンハイムは、ようやく永い生から解放されて
死ぬ事ができたんですね。
それでも、生きたいと思ってしまう……というモノローグも、
むちゃくちゃ良かったです。
トリシャはいないのに、それでも「生きたい」と望むのは、
ホーエンハイムがエドやアルがいる今を大事にし、
そして、彼らをトリシャと同様に愛しているからだと思いました。



最後に泣いたのは、エドのウィンリィに対するプロポーズ。
彼らの仲については、
もしかしたら曖昧にぼかされるかと思っていたので、
(「ただいま」「お帰り」の、仲良し三人組で終わる)
「お前の人生を俺にくれ。俺の人生を半分やるから」となって
びっくりしました&感動で泣かされました。
しかも、ここに、等価交換を絡めてくるのが凄いww
アルが言っていた
「人に10貰って10を返すのでは、これまでと同じだから、
一つ足して11を返す事で、錬金術の法則を否定する」も
良かったですし、
ウィンリィが「私の人生を全部あげる」との返事をした事で、
あっさりと簡単に、等価交換の法則を乗りこえてみせたのも
良かったです。
元錬金術師らしい良いプロポーズでした。



他にも色々と……どのエピソードも素敵で、
挙げていくときりがないのですが、
どうしても触れておきたい事だけを書きます。

アームストロング少佐(オリヴィエ)が
亡くなったバッカニア大尉を見てやらないのかと問われた時に、
(瓦礫に)埋まっているのでは彼だけではない
──彼も勿論大事だが、他の皆も同等に大事としたのが
ものすごく格好良かったです。
以前から指揮官として有能なところをみせていた彼女ですが、
マスタング大佐同様、彼女には、
国を建て直さなければならないこれからが勝負(本番)
みたいなところがあるので、
こういうシーンがしっかりと入れられたのは良かったと思います。
惚れ惚れしました。

そのマスタング大佐。
エドやイズミ師匠といった“過ちをおかしてしまった”人が、
人体錬成という過ちの代償として身体の一部を持っていかれたのは
仕方ないと思うのですが、
マスタング大佐の場合は本当にとばっちりをくらった状態でしたので、
この締め方にはホッとしました。
ただ、彼の場合、オイシイところは
ドクター・マルコーに持っていかれましたね。
これまで、罪の意識の高さから、
死んで詫びる事も考えていたマルコー医師が、
医者として生きようとし、それを皆の前で懇願したのは
素晴らしかったです。

また、スカーが、自分は二度死んだ人間だと言い、
最後まで本名を名乗らなかったのも良かったです。
彼は、スカー(傷のある男)という名前と共に、
“錬金術師”を殺して回り、過ちを犯した過去を
封印したんですね。
新たな名前を冠した彼は、マイルズ少佐と共に
精一杯、頑張る事でしょう。

前半、“お父様”が“神”に窘められていましたが、
人間は成長する事を止めない生き物なんですね。
そこが、ホムンクルスと人間の大きな差でした。



最後に。
私は、アニメ第一期の放送が開始されたのを機に
ハガレンを知った読者ですので、
古参ファンというほど古くはないのですが、
それでも、それなりの年月で連載を楽しみにしてきましたので
今回、作品が最終回を迎えた事には淋しさを覚えました。
亡くなったキャラクターも多いけれど、
皆が大事に描かれていて──生き生きとしていて
本当に良い作品でした。
なにより、読者として
「え? これ……大丈夫なの? この先どうなるの?」と
ドキドキする事ができたのは、有難い喜びでした。
幸せでした。

雑誌“ガンガン”を買って作品を読む事で、
荒川先生や出版社に対する等価交換は済みましたが、
これで終わらせてしまっては以前の錬金術と同じなので、
感想を書いて、まだ読んでない皆さんにお勧めをする事で、
プラス1とさせて頂きます。

荒川先生、お疲れさまでした。
素晴らしい作品を描いてくださり、ありがとうございました。
単行本派の方もアニメ派の方も、
この記事を読まれたなら、ネタバレ大歓迎!な方だと思います。
この最終回だけで充分に楽しめますので
是非、ガンガン本誌を買ってみて下さい。
本当に良かったです。



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2010-06-20 23:39  nice!(5) 
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