感想:映画「のだめカンタービレ 最終楽章 後編」*ネタバレあり [のだめカンタービレ:感想]
映画「のだめカンタービレ 最終楽章 後編」の感想です。
以下の記述にはネタバレを含みます。
私は原作の愛読者です。
最終楽章 前編の感想はこちら。
【感想:映画「のだめカンタービレ 最終楽章 前編」】
「のだめカンタービレ」の感想記事のURLは
ジャンルを問わず、こちらのページでまとめています。
【感想記事 一覧:のだめカンタービレ】
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というわけで
(http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20)
後編も映画館で鑑賞してきました。
原作を知っていますので
「この先、のだめと千秋はどうなるんだろう」というドキドキ感は
さすがに無く、
「あぁ、ここでこれをカットしてこう進むのか……」と
脳内に残る原作と照らし合わせながら観る感覚の方が
強かったです。
今回は二時間強の上映時間ですが
さすがに後半は、演奏シーン以外の部分でちょっと飽きました。
どちらかと言えば千秋真一(玉木宏さん)がメインだった前半と違い、
この後編は、もやもやしているのだめ
(上野樹里さん)がメインでしたので、
二人の恋にあまり興味がない私には
全編、演奏シーンでも良かったぐらいでした。
単行本の数冊分を二時間の作品に仕上げるという事で、
前編同様、“端折るところは端折る”のを徹底していて
よくまとめてあるなぁと思いました。
原作を知っていると、
「あぁ……ここはカットしてほしくなかったな」や
「え? あれ? これでもう終わり?」と
物足りなく思うシーンは、いくつもありましたが、
こういう事を言っていたらきりがありませんし、
興業映画として成り立ちませんし、
そもそも、劇場版をわざわざ作る必要は無いわけですし。
(原作の漫画を読んでいればいい)
今回の演奏シーンの見所は
・三木清良のコンクール出場(ブラームスのヴァイオリン協奏曲二長調)
・千秋と孫Ruiの共演(ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調)
・のだめとシュトレーゼマンの共演(ショパンのピアノ協奏曲ホ短調)
・のだめと千秋の合奏(モーツァルト“二台のピアノのためのソナタ二長調”)
でした。
この中で私が好きだったのは、
三木清良(水川あさみさん)のコンクール出場シーンと
のだめ(上野樹里さん)が
シュトレーゼマン(竹中直人さん)と共演したシーンです。
両方とも私がとても好きな曲で、
下駄を履いている状態だったというのもあるのですが、
演奏が終わった瞬間に拍手をしたくなりました。
ナマであれらを聴けたら、スタオベしてたなぁ。
特に清良は、
演じていた水川あさみさんのヴァイオリンの弾き方が
さまになっていて、驚きました。
テレビシリーズの頃の彼女は
「まぁ、こんなもんだよね」と思ってしまう程度だったのに
今回は、いっぱしのヴァイオリン奏者に見えました。
まさに“東洋の真っ赤なルビー”でしたww
ただ、そんなに広くない会場で、清良が
峰龍太郎(瑛太さん)一行を見つけられてなかったのは、
ちょっと不自然でした。
それだけ清良が緊張していた/演奏に集中していたという事に
なるのでしょうが、
峰くん達が座っていたところは、
ステージから客席をカメラで映した時に、
彼の髪の毛の色のせいで、一発で目が向いたので
「おいおい、お忍びじゃないのww」と思いました。
のだめとシュトレーゼマンのショパンは、
この映画全体で一番の見所で、
ここで盛り上がらないでいつ盛り上がる?というシーンですので
良くて当然だったと思います。
でも、シュトレーゼマンの指揮が無いとお話にならないとはいえ、
相変わらず、巨匠の振りには見えなかったですww
とはいえ、指揮の見せ場は千秋に集約しなければいけないので、
竹中さんのシュトレーゼマンとしての指揮は
これで良かったと思います。
千秋とのだめの恋愛シーンも、
原作通り、前編よりぐっと増えていて、良かったと思います。
ただ、二人の名場面の一つである
“こたチュー(こたつでのキスシーン)”は
私はあまり萌えませんでした。
「あぁキスしてるー」と思ったぐらいです。
カメラの撮り方のせいもあるのかもしれませんが、
その直前にある、コタツでのイチャイチャから
千秋がのだめにキスをしようとするまでの間が、
もうちょっと欲しかったなぁと思いました。
ただ、私は、上記の通り、
千秋とのだめの恋愛にはさほど惹かれてませんので、
このカップルがお好きな人にはたまらないシーンだったと思います。
最後は、原作の漫画と違い、
橋の上での二人の長い長いキスシーンで締められました。
これは、この後編の前半で、
のだめが清良と再会した直後にたまたま見かけた、
キス中のカップルちゃんが下地になっていたと思います。
この時ののだめと清良は、
何でもない場所でキスをしているカップルに対して羨ましがり、
特に清良は「音楽をやらなかったら、ああなっていたのかも」と言って
あり得ない可能性に思いを馳せます。
結局、この時は、
「そもそも、音楽をやってなかったら
(好きな人と)出会わなかった」という意見で、二人は合致しますが、
後編の最後で、
ようやく音楽と恋愛を両立させられるようになった千秋とのだめが、
「音楽をやっていても恋愛はできる/
音楽があったからこの恋ができた」という“答え”を
このシーンでもって表わしたように、私には思えました。
ラストシーンは、延々とキスをしている二人を中央に撮りながら
カメラがどんどん引いていくのですが、
最初は、“千秋とのだめ”という個性があったのに、
カメラが引く事で、二人の姿が徐々に小さくなるにつれて、
その内、パリのどこにでもいそうな
一組のカップルちゃんに変わっていったので、
私は上記のように思いました。
峰くんと清良のラブラブシーンも良かったです。
しゃがんでいる峰くんの後ろから清良が抱きついて、
彼女の腕を峰君が触っているのには、かなり萌えました。
“のだめ”ファンとしては満足できたこの作品ですが
不満もありました。
まず、これは前編にも関係するのですが
千秋の父親のエピソードが無かった事にされていたのが残念でした。
また、清良のコンクールの演奏を聴いて触発されたターニャが、
黒木君と共に「(自分も)コンクールに出る」として奮起しましたが、
彼女のその後の頑張りが、ピアノの練習シーンがちょっとあっただけで
丸々カットされていたのも、淋しかったです。
まぁ、この上記二つは、優先度の問題で、
こちらを描いた代わりに、のだめ達のシーンがカットされたのでは
お話になりませんので、
取捨選択をしなければならなかった状態なら、
こうなるのも仕方ないとは思えます……。
でも、残念だなという思いは、ずっと付いて回る気がします。
そして、「なんでここがカットされるの?」という大きな不満は、
のだめとシュトレーゼマンのショパンの演奏で、
のだめが、リハよりもずっと遅いテンポで弾いた事によって、
オケが面食らう→あれ?でもこっちの方が良くない?→やるじゃん、メグミ!
となるくだりが無かった件です。
これが無いと、シュトレーゼマンが終演後に発する台詞が
本当の意味で生きてこないのではないでしょうか。
ここは、曲の解釈をちゃんとできるようになった
(音楽と真正面から向き合った)のだめの集大成であり、
のだめの演奏に対して、一見、苦もなくオケを合わせてみせた
(でも、内心ではかなりヒヤヒヤだった)シュトレーゼマンの
指揮者としての技量の素晴らしさを表わすシーンなので、
絶対に必要だと、私には思えたのですが……。
それと、強欲なシュトレーゼマン(笑)によって
オクレール先生の計画が邪魔された事が、
オクレール先生が不満を発するだけで終えられた点です。
この二人の会話が無く、
また、気落ちしていたのだめを救った功労者として
シュトレーゼマンが終盤でやたら持ち上げられていた点に、
「あれ?」と違和感を覚えました。
確かに、あの時ののだめの精神状態は
(シュトレーゼマンがコンチェルトの話を持ちかける前)
どん底まで落ちていたので、
ああいう事が無ければ駄目だったかもしれません。
仮に、オクレール先生がのだめの状況を知って
「実は、君をコンクールに出す準備を始めていたんだよ」と
打ち明けて、餌を与えてみたとしても、
自分がやりたかった以上の事を、
他の人(Rui)と千秋がやってしまった事実は変わらず、
のだめは落ち込み続けていたと思います。
“のだめがやってみたかった事を、試しにやってみる”
というシュトレーゼマンの提案は
この時ののだめにとって、良いカンフル剤でした。
しかし、シュトレーゼマンが
その後ののだめの為に骨を折ったとして功労が強調されるのは、
ちょっと違うと思いました。
あ、いえ、シュトレーゼマンの狙いはどうであれ、
彼が、泣いたのだめを見兼ねて
現状の打開策としてコンチェルト出演を挙げたのは、確かです。
また、コンクール向きでないのだめが世界に出るには
この方法しかありません。
(共演者の力で世界に出してもらう/
この場合はシュトレーゼマンの実力と名声)
しかも、のだめの演奏力に対して、シュトレーゼマンも
「これならデビューさせても大丈夫」と太鼓判を押せたから、
ああして話を持ちかけたわけで……
のだめにとってシュトレーゼマンは
世界デビューの機会を与えてくれた重要人物で、
千秋との人生を今後も続けていく上で、
結果的に“恩人”になった人なのですが、
映画で、のだめの復活はシュトレーゼマンの手柄!みたいな感じで
彼の感慨深げなモノローグを聞かせられたのには
ちょっと引っ掛かるものを覚えました。
あそこのシュトレーゼマンは
もうちょっと軽い感じ(ちゃらんぽらん)があっても
良かったと思います。
なので、オクレール先生との会話で、
鳶が油揚げをさらっていった
(オクレール先生が大事に育てていたのだめを、
横から手を出したシュトレーゼマンがさっと奪った)感も
出してほしかったです。
記念写真のスチル風の演出だった
峰くんや真澄ちゃんとのパリ観光旅行も
とても楽しそうでしたし、
清良を励ます横断幕を持って
皆でパリのシャンゼリゼを横断するシーンは
おかしかったし……と
細かな見所はたくさんありました。
映画としては、今回の後編の方が好きですが、
内容が内容なので、一度見れば充分かなぁと思っています。
演奏シーンは魅力的ですけれど……。
音(演奏)は大変良かったので、
ファンは劇場に行って聴く価値はあると思います。
なまじ音が良いので
指揮の真似をしたいと思うのを抑えるのに苦労しましたww
あ! 前編(とテレビシリーズ)で気になっていた
上野樹里さんの“のだめ”口調ですが
今回は全く気になりませんでした。
見終わった後に、気にしてなかった自分に気付いて
ホッとしました。
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感想は以上です。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
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