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感想:アニメ「おおかみかくし」第9話「密室」*ネタバレあり [アニメ感想]

*書き忘れていた事があったので、記事の末尾に追記しました

アニメ「おおかみかくし」の感想です。
今回は第9話「密室」です。
以下の記述にはネタバレを含みます。
私は原作のゲームを遊んでいません。


前回の感想はこちら。
第8話「錯綜」

各回の感想記事のURLは、他作品と合わせて
こちらの一覧記事でまとめています。
アニメ感想一覧:2010年1月 開始作品


────

今回も大変面白かったです。
私が住む関東では、夜中の二時過ぎに放送されるので
毎回とても眠いのですが、
番組が始まった途端に目が覚めますww
そして、三十分があっという間に過ぎていきました。



今回は、
便利屋こと賢木儁一郎によって別々に捕らえられた
九澄博士と櫛名田眠ちゃんが
一つの密室に閉じ込められたシーンから始まりました。

博士がその密室に入れられた時から
眠ちゃんは発情していたようでした。
目が真っ赤で頬が赤く、呼吸が荒かったので……。

結局、この嫦娥町にいる神人は
狩る側も狩られる側も同じなので、
今回の眠ちゃんがそうだったように、
これまで狩る側だった者が、
場合によっては一転して──簡単に
狩られる対象になるんですね。
密室の中で
博士を襲わないように必死に耐えていた眠ちゃんが
とても辛そうで、
その並々ならぬ精神力の強さに
私は深く感嘆させられたと同時に
「早く誰か彼女を助けてほしい」と
せつに願ってしまいました。

あの眠ちゃんが理性を手放しかけたり、
眠ちゃんのお父さんが
「博士くんの蜜を辿ってきた」と言ったりした事から、
博士が発する密の匂いは
さすが十万人に一人と言われるだけあって
相当強いようです。
そんなに強い、しかも魅力的な芳香を前にして、
“「あなたが(私が)襲わないと言ってくれたから」襲わない”とした
眠ちゃんは凄いですね。
人間で例えると、どんなのだろう……。
私は飢えた経験が無いので、あくまで想像ですが、
人間が一週間ぐらい水だけ飲んで過ごした状態で
食べ物を目の前に置かれた時の誘惑以上に強い気がしました。



朝霧かなめちゃんが嫦娥かぞえ唄を呟くシーンに合わせて、
密室に閉じ込められている眠ちゃんが博士に向かって
嫦娥町の秘密を教えていく演出は
とても分かりやすかったですし、
強い印象でもって記憶に残りましたので
大変良かったと思います。

さて、秘密の具体的な内容は、
私がこれまでの放送を見て推測できたものと、ほぼ同じでした。
制作側は、毎回の放送で少しずつ、
分かりやすい手がかりを
視聴者に与えながらお話を作らなければならなかったはずなので
さぞ大変だったと推測できます。
謎解きを楽しむ系の他作品と比べても、
その手がかりが常に明確だった事から、
この正解は、制作スタッフによって
視聴者に与えられたものだと思います。
(この手の作品は、大まかに二つに分けられます。
一つは、視聴者を完璧に騙す作品。
もう一つは、視聴者の思考を正解に誘導する作品です。
こちら“おおかみかくし”は、
少なくともこの嫦娥町の秘密に関しては
完全に後者だと思います)


で、眠ちゃんの台詞を聞いていて
ちょっと引っ掛かった事がありました。

この手のお話の場合、
捕食者と被食者の間に力の上下関係が生まれるのが普通です。
しかし、こちら“おおかみかくし”では、
捕食者である神人が
被食者であるおちびと(落ち人?)を襲わなくても
とりあえず生きられる事が大きいからか、
彼らが敢えて人間と対等であろうとしているのが面白いです。
(吸血鬼などは、餌として人間を襲わなければならないので
必然的に上下関係が生まれます)

これは勿論、眠ちゃんの説明にもあった通り、
神人とおちびととでは、
圧倒的に後者の数が多いので、
嫦娥町での問題が世間に知られてしまうと
おちびとによって神人が絶やされる懸念がある事から、
神人の中で、彼らを襲いたい欲を自粛する流れが
自然に生まれたのかもしれません。
しかし、これは私の勝手な想像で、
眠ちゃんの口から聞けたからこそ思えた事なのでしょうが、
神人の中には
“好きなものを大事にしたい”気持ちが多少はあって、
だからこそ、おちびとを襲わないようにと自制する為に
山里である嫦娥町に引っ込んだり、
神人で神人を粛正するしきたりを作ったりしたのかなと
思えました。

それにしても
“不埒もの(ふらちもの)”って言葉が凄いです。
不埒もの=不始末をしでかした者という意味で
この単語が使われているのでしょうが、
なんか、人の倫理から外れている感が強くするなぁと
思いました。



前回、眠ちゃんによって解放されたかなめちゃんが
無事で何よりでした。
前回の最後で、彼女は一人でふらふらと歩いており、
あのまま、また誰かに捕まってしまっても
決しておかしくない状況でしたので、
彼女が学校の教室にいて、
普通に登校していたと分かった時には
私は胸を撫で下ろしてしまいました。

そして、眠ちゃんと博士の危機を
かなめちゃんの機転で救えた事も
大変素晴らしかったです。
このアニメの前半では、
博士に執拗に絡む五十鈴ちゃんの描写はやたらとあったけれど、
こういうクラスメイト間の真の友情!的なシーンは無かったので
ようやく見られて嬉しかったです。

また、博士を大切に思っているらしい眠ちゃんの気持ちも、
今回、彼を襲わないように彼女が耐える描写が
長々とあった事で、
どれだけ強いかがよく分かりました。
ああやって苦しみながら耐えたシーンや、
上記でも書きました「襲わないと言われたから襲わない」発言は、
下手な愛の告白の言葉より、ずっとずっと重かったように
私には感じられました。
以前の回で、眠ちゃんが博士やかなめちゃんを助けたり、
五十鈴ちゃんを見逃そうとしたりした時にも感じましたが、
眠ちゃんは基本的に寡黙なキャラクターなので、
普段は余計な事を言わない分、
感情が、ここ一番という時の台詞や行動にはっきりと出ますよね。



さて……以前からその言動が奇怪だった黒服の男・葛西。
古い因習にとらわれた人々が登場する作品では
必ずといっても良いほど常に出てくる革新派の人のようです……。
以前から、眠ちゃんに対する不遜な言動が目についていて、
あからさまな敵意も感じられていましたが、
とうとうそれが
センター長を毒殺するという最悪な行動に至ってしまいました。

神人を神人で正すやり方でなく、
おちびとをおちびとで正す──という葛西が望むやり方は、
彼が鼻で笑っていた通り、眠ちゃんとは全く違うようです。
というか、これこそが
上記で触れました
捕食者/被食者としての力関係の発生に繋がると思います。
穏やかな共生を望む眠ちゃんと異なり、
葛西はおちびとを明らかに軽んじている気がします。

たとえば、極端な例を挙げてみると、
子供が店で万引きをしてしまった際に、
神人を神人で粛正する場合は、
親が「うちの者が不始末をしてしまい、すみません」と店に謝って
子供を引き取り、家で罰を与えるようなものですが、
おちびとをおちびとで粛正する場合は、
「うちの子に盗みを行なわせる環境の店が悪い」として、
もう二度と子供に万引きを行なわせない為に
店の商品や店そのものを他人に壊させるようなものですよね。

神人を第一とするならば、
確かに、彼らを惑わすおちびとの存在は
邪魔でしかありません。
おちびとさえ居なければ
穏やかに長く生きられるかもしれないのを思うと、
葛西のようにおちびとを軽んじて、
積極的に強い蜜を排除する方向に出る人が台頭するのも
当然かもしれません。
でも、そのどうしようもない思いが、
眠ちゃん達が常に懸念しているらしい
“おちびとによる神人の抹殺”行為に
いつか繋がってしまうのも、明白です。

この町の人々が、今後、
どうやって折り合いを付けていくのかを
放送を楽しみながら、見守りたいと思います。



そして最後。次回予告!
八朔のお祭りって、神人の気持ち(本能)を鎮めるもので、
普段より事件が起きにくい日ではないかと
私は思ってたんですが
どうやら違うようで……。

次回は、やっと目覚めた五十鈴ちゃんが
何か喋ってくれればいいなぁと思います。



(追記)
かなめちゃんによって、嫦娥かぞえ唄が調べられ、
この歌詞が、嫦娥町の因習および神人について語られていると
今回の放送で判明しました。
部外者(おちびと)がこの歌詞を書くのは無理なので、
作者は当然、神人であり、
嫦娥かぞえ唄として残したのも、神人の意思だと思われます。

もしかしたら、今ではあまり歌われないかもしれませんが、
かぞえ唄が童謡として歌われる事もあるのを思うと、
この唄は、嫦娥で生まれた神人の子供たちに
「決して不埒ものになってはいけないよ」という
教えを刷り込む為のものだったのかもしれません。
また、かなめちゃんのように
おちびとに興味を持たれる危険性も孕んでいますが、
もし万が一にでも、神人が滅びれば
自分たちが過去に存在した事すら消えてしまうので
ああいう唄をわざと残しておく事で、
知る人ぞ知る形で自分たちが存在した証を作ったのかなとも
思いました。






────

感想は以上です。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

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続きの感想も書きました。
第10話「八朔祭」

宜しければ、合わせてどうぞ。


2010-03-05 23:33  nice!(1)  コメント(0) 
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