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感想:宝塚歌劇 花組公演「愛と死のアラビア / Red Hot Sea」 [映画・舞台]

宝塚歌劇 花組公演
「愛と死のアラビア / Red Hot Sea」の感想です。
NHK-BSの年末宝塚特集2009で視聴しました。

私は、宝塚観劇について初心者ですので
記述に間違いなどがあるかもしれません。
もし見つけられた方は
サイドバーにあるメールフォームやコメント欄から
お教え頂ければ有難いです。


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宝塚ミュージカル・ロマン「愛と死のアラビア」
−高潔なアラブの戦士となったイギリス人−
原作/ローズマリ・サトクリフ
脚本・演出/谷正純
山本史郎訳「血と砂」(原書房刊)を参照
トマス・キース:真飛聖
アノウド:桜乃彩音
イブラヒム:大空祐飛
トゥスン:壮一帆
ドナルド:愛音羽麗
ナイリ:桜一花


グラン・ファンタジー「Red Hot Sea」
作・演出/草野旦


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花組については、以前、
ベルばら外伝(アンドレ編)を東宝で観劇しました。
(感想記事は【こちら】)
その際は、「花組が」「タカラジェンヌさん」がというより
お話に不満を抱いた事から残念な思いをしたので、
そのイメージが払拭できれば良いなぁと思って視聴しました。

ただ、宝塚に限らないのですが、
私はアラビア系のお話を苦手としています。
コスプレ臭がきついというか
(コスチュームものの演目は寧ろ好きなのですが)
形から入ってる感が強いのが、苦手とする理由です。
上手く言えないのですけれど、アラビア系って、
アメリカやヨーロッパと比べると馴染みがないからか
描き方が一辺倒な部分があるじゃないですか。
たとえば、外国人から見る日本は
「ゲイシャ」「ニンジャ」「スシ」「アニメ」
ばかり……という感じで。

今回のミュージカル「愛と死のアラビア」の
第一幕第一場(いわゆるオープニング)も
そういう色が全開だったので、
「はいはいアラビア」「はいはいエジプト」と思いながら
ちょっと冷ややかに見てしまいました。
でも、物語はとても面白かったです。
気付いたら、見入っていました。



宝塚の演目の主人公が、皆、
気概があって優しくて紳士で……というのが共通項で、
勿論、このトマスもその枠の中に入っていますが
一昨日の匂宮(夢の浮橋)、昨日のネロ(マリポーサ)、
そしてテレビでは見逃してしまいましたが
一昨々日のジャスティン(薔薇雨)と比べると、
今日のトマスが一番好きです。
トマスは、キリスト教を信じているにもかかわらず
他宗教(イスラム教)に囚われているアノウドに対して
最大限の配慮を払う点に、私は特に感動しました。
日本と違って、海外では宗教を持つ事が普通ですし
それこそ信じる神の違いによって戦争が起こるぐらい、
宗教は人間の精神の主軸となっているわけですが、
それを易々と乗りこえちゃうのが凄いです。
また、「神は一つ(一人)だ」と言い切っちゃう点も
凄いと思いますし、
創作のお話上の事とはいえ、
この台詞で皆を納得させてしまうのも凄いです。
(あの台詞は、熱心なイスラム教の信者に
「我々の神が冒涜された」と言われて斬られても
文句を言えない内容だと思います)

最後、ドナルドでさえも捕虜交換で本国に帰れる事になり、
また、トゥスンが兄イブラヒムと争ってまで
トマスを逃がそうとしたのに、
当人がそれを敢えて蹴って残るのも良かったです。
最後は処刑エンドですか……。
トマスとアノウドのデュエットが聴けた後、
いきなり終わってしまったので、
「え? これで終わり?」と呆気に取られてしまいましたが、
私は悲劇が好きなので、
彼が処刑されるこの終わり方も、とても好きです。
処刑されるのは残念な事なのに、
皆に大事に思われて「自分は幸せだ」と言い切るトマスは
本当に格好良かったです。



ヒロイン・アノウドも、せつない立場でした。
宗教に縛られてしまっているが故に、
トマスの傍にいる為に、進んで彼の奴隷になるという状況は
私も見ていて辛かったです。
アノウドにとって、トマスと兄妹でいる事は偽りで、
彼の奴隷である事こそが真の姿だという台詞には
「そりゃそうだけどさ」とやり切れない気持ちになりました。
あのシーンは本当にせつなかったです。
なんていうか、
出口のない袋小路に迷いこんじゃった感じがしました。

だからこそ、トマスが処刑を控える事になって、
ようやくアノウドが宗教から離れたのには
何とも言えない気持ちになりました。
アノウドにとってトマスのプロポーズを受ける事は
イスラム教を捨てる事で、
それは、イスラム教の信者である彼女にしてみれば
死に近い事だと思います。
それでも、アノウドはトマスを選んだんですね。
「お兄様を愛します」
→「トマス様を愛します」
→「トマスを愛します」
への変化は、見事でした。
トマスの死は悲しかったけれど、
最後の最後、彼は幸福と共に死んだのだと思うと
これも良かったのかなと思えました。

上記の奴隷云々や、プロポーズも好きだったのですが、
トマスがアノウドの名前を聞くシーンも好きでした。
自分は兄だと言った上で
「私は妹の名を聞く事を許されているか」と聞く場面です。
回りくどいやり取りですが、
私はこういうのがとても好きです。



タカラジェンヌさんについては……
真飛聖さんは、やはり唄がお上手ですね。
安心して聴いていられるので、とても好きです。
また、今回は、
私がトマスを好ましく思いながら観ていたので、
終始、真飛さんをいい男だなぁと思いながら観ていました。

桜乃彩音さんについては──
失礼ながら、特徴あるお鼻に目が向いてしまいます。
桜乃さんを見ていると、
先代の花柳壽輔さん(若葉さん)を思い出します。
桜乃さんが台詞を喋っている時や唄をうたっている時には
あまり気にならないのですが、
黙っている桜乃さんを見る時は、
どうしても彼女の鼻に注目してしまいます。
でも、逆に言えば、
お顔を見た瞬間に「あ、桜乃さん」と分かるので、
これはこれで、
メイクをすると顔が似るタカラジェンヌさんとしては
武器になるのかなと思いました。
それと、アノウドがよく行なう奴隷のポーズですが
私は、画面を見ながら何度も真似してしまいましたww

大空祐飛さんについては、
私は、大空さんが元花組であるのを失念していたので、
冒頭で流れたキャスト一覧でお名前を見て、
「あ、そっか」と思い出しました。
私は、ネットで大空さんのお顔を初めて見た時に、
私の好きキャラ・「逆転裁判」のエッジワースを
演じて頂けたら嬉しいなぁと思っていたので
大好きなのですが
(三白眼なところが地でいけると思います)
舞台を観るのは、生でも映像でも初めてなので、
大空さんが出演される度に、注目していました。
トップの真飛さんと同様に、
大空さんにも安定した上手さを感じられました。
ちゃんと表現できなくてもどかしいのですが、
私が持つ大空さんの印象は、黄昏です。
光よりも闇なんですが、月影のような暗い感じではなくて、
夕闇が迫る前
──いわゆるマジックタイムの空という感じです。
本当、なんて言えばいいんだろう、
観ているだけで、なんとなくせつなくなります。

今回、アノウドの出番がそんなにない……というか、
トマスとアノウドの恋が進展して終わりを迎えるからか、
二番手以降の男役にもちゃんと見せ場があって
良かったと思います。
私は、恋愛ものにあまり固執していないので、
このくらいが丁度良いです。
(「薔薇雨」のように、
トップ&娘役トップ&二番手だけのお話だと、
出番が少ない下級生が可哀相に思えてしまうので)

個人的に、髭へのこだわりはないのですが、
髭が似合う人がいっぱいいて、ウハウハでした。
特に、トマスの決闘のシーン。
トマスの決闘相手は、
アジズというキャラクターだと思うのですが
それを演じられた眉月凰さんがとても素敵で
──髭がよく似合っていて、
テレビを観ながら「ちょっと……この人、誰!」と
一人で騒いでしまいましたww

娘役では、気の強いお嬢様を演じられた桜一花さんが
アノウドの桜乃さん以上に好きでした。
小さくてかわいくて……でも強気なところが
たまらなかったです。
望まない結婚をさせられると決まった際に、
「負けないように」と言って自分を着飾らせるよう、
侍女に命令をしたシーンは、
とても素敵でした。



ショー「Red Hot Sea」については、
悪くないとは思うのですが、
私がここ数日間観てきたショーと比べると
見劣りがするなぁと思いました。
全体的に散漫な感じがするというか……
白と青がメインの色のせいで、地味だという印象も受けますし。
派手なシーンもあるのですが、記憶に残りませんでした。
それと、最後のデニムパレードは、
衣裳に対して単独で注目してみると、
かわいいと思えるのですが、
宝塚の舞台で、タカラジェンヌさんが着た状態で見ると、
随分と安っぽく感じました。
私は、ショーを勉強した事がないので、
何をもってショーの出来の優劣を決めるのかは分かりませんが、
こちらの「Red Hot Sea」に対しては、
もしお金を払って観たのなら
一度行けば充分かなと思いました。

当ブログの他の記事を見て下さった方は
ご存知かもしれませんが、
私は、宙組「逆転裁判」の舞台を観劇したのを機に
宝塚への興味を再び持つようになったので、
今、一番気になっている組も、宙組です。
なので、冒頭に出てきた子に
“野々すみ花”との文字が出た時には
「おおおお」と思いました。
上記の大空さん同様、私は、
すみ花さんが花組出身であるのを忘れていたので
この時に思い出したんです……。
そして、とりあえずは目立つ役でありながら
この「Red Hot Sea」ではチョイ役だったのに、
一年後には宙組の娘役トップかぁと思ったら
変にしみじみとしてしまいました。
失礼ながら、私は、
「愛と死のアラビア」ですみ花さんを見つけられなくて、
(というか、上記の通り、
私はこのショ−でようやく、すみ花さんの存在を知ったので
「どこにいたの?」と思いました)
配役表を見て「あ、侍女の一人だったんだ」と知っても
どこで出てきた侍女なのかも分からないぐらいだったのですが
(侍女は、手当ての際に一人出てきますよね?)
それが今や、
宙組トップの相手役として看板を背負っているのだと思うと
感慨深くなります。
勿論、トップになるには、実力の他、
運やその他諸々の影響も大きいのでしょうが、
こうして大抜擢された前後を目の当りにすると、
年功序列でトップが決まらない宝塚というものを
肌で知った感じがしました。

これは、ご存知の方がいらっしゃったら
教えて頂きたいのですが、
ロケットの際にソロを唄った方はどなたなんでしょうか。
唄が上手いなぁと思いながら聴いていたのですが、
所用で画面を見られなかったので
(廊下で聴いていたので)
お顔を確認できなかったんです。
さすがに、歌声だけでは分からなくて……。
真飛さん並に上手いなと思ったのですが、
ご自身だったのでしょうか。

それと、“引き潮”の場面で
舞城のどかさんと一緒に踊っていた大空さんが
素敵でした。
白い衣裳+裸足で、三組の男女が踊るシーンです。
大空さんは、コスチューム系よりも
こういう普通の服(スーツ含む)の方が好きです。

海中ならではのシーンで、
海に流されたらしい黒い棺が宙に浮いていたのは
面白かったです。
最初はびっくりしましたが、
「あぁ、なるほどなぁ」と納得できました。

地味なショ−だと思いましたが、
フィナーレはさすが宝塚だなと思いました。
桜乃さんは、ベルばらみたいなドレスよりも
身体にぴったりとしたこういうドレスの方が似合いますね。
赤いドレスの裾を翻して踊る姿が一番決まっているのは
さすが娘役トップさんだと思いました。
また、この赤い衣裳の時に、
真飛さんと桜乃さんは、大階段上で踊ってましたが、
あんな高いところ&幅が狭い階段で
よくもまぁ動けるものだと、心の底から感心しました。
私は階段が苦手なので、
タカラジェンヌさんが階段を早足で下りるシーンを
見るだけでも、ひやりとしてしまいます。



────

感想は以上です。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。

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2009-12-24 19:03  nice!(0)  コメント(2) 
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コメント 2

ヅカファン

さくら様
通りがかりで失礼します。
「Red Hot Sea」でロケットのソロを唄っていたのは、壮一帆さんです。
「愛と死のアラビア」では、やんちゃな弟・トゥスン役でした。
お芝居の野々すみ花さんは、アノウドの侍女ではなく、桜一花さん演じるナイリに、「あのイギリス人(トマス)今宵もう一度呼び出しておくれ」といいつけられる侍女・ファハマです。

by ヅカファン (2010-01-04 00:12) 

さくら

■ヅカファン様
初めまして、こんにちは。

ロケットのソロを唄われていた方についてお教え下さり
ありがとうございます!
また、すみ花さんが演じられた侍女は、
気の強いお嬢さんの側だったんですね……。
それがすみ花さんだったとは、さすがに思い出せませんでしたが、
ナイリにも侍女がいた事は覚えていましたので
納得できました。

ずっと疑問に思っておりましたので、本当に助かりました。
ご厚意に感謝致します。
ありがとうございました。
by さくら (2010-01-10 22:20) 

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