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感想:漫画「JIN-仁-」1〜4巻 村上もとか*ネタバレあり [アニメ・ゲーム・漫画・小説]

集英社の青年漫画雑誌「スーパージャンプ」で連載中の作品
「JIN-仁-」の単行本1〜4巻の感想です。
TBSで放送中のドラマが面白かったので、
レンタル店で借りてみました。
以下の記述にはネタバレがあります。


ドラマ版の感想記事はこちら。
第1話
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-10-11-5
第2話:命を救う事の悲劇
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-10-18-6


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こちらを書いている現在は10/25で、
夜にドラマの第3話が放送されようとしています。
私は、前知識なくドラマを2話まで見ていて、
原作の漫画も、今回初めて読みました。

大変面白かったです。
4巻まで借りてきて、一気に読んでしまいました。
本はもう返却してしまったので、
以下では思い出しながら感想を書いていくのですが、
細部で勘違いなどがあるかもしれません。
もし間違いがありましたら、
コメントか、サイドバーから飛べるメルフォから
ご指摘いただければ幸いです。



江戸にコレラが蔓延するお話になる前に
麻疹(はしか)のエピソードがあったんですね。
ドラマでは、コレラのお話が
原作のコレラ+麻疹を合わせた内容になっていたので
咲さんも病に倒れ、南方仁の世話になっていたのが
ちょっと意外でした。

麻疹を治してもらった咲が、
南方の助手──看護士になるとの決意を固めて、
早々に医学を学ぶようになったのも良かったと思います。
やはり、本人の「学ぼう」との意欲がとても強い上に、
彼女は常に南方の傍にいて
新しい知識を目の当りにしているので、
そこらの蘭学医師より咲の方が救命の点で優れるようになっていましたね。
また、南方からコレラの対処法を学んでいた咲が、
コレラに倒れた南方を助けた事で、
別に南方の手を借りなくても
──彼から教えてもらえた事を忠実に学べば命を助けられると
皆に知らしめた点は、
作中でも最初のターニングポイントだったと思います。

まぁ、こういう事によって
南方の名前が江戸の街に知れ渡ったせいで
彼は敵も味方も作るわけですが……。
彼のせいで、自分たちが潰されると焦る他の医師達の気持ちは
愚かとはいえ、同情できる部分もありますので、
私は「仕方ないなぁ」と苦笑いをしながら読みました。



今回読んだ4巻までで、私が一番ショックだったのは、
吉原──梅毒の話でした。
梅毒に対する私の知識は、
「性病の一種で、昔はそれで亡くなった人もいた」程度だったので
あそこまで外見が酷くなるとは思ってませんでした。
元は花魁だったという
野風さんの知り合いの女性の排泄シーンは、
彼女の叫び声と、状況を説明する野風さんの台詞のみでしたが、
想像しただけでもきつかったです。
当たり前ですが
排泄って人間にとって必ずする行為じゃないですか。
その度にあんなに辛い思いをするだなんて、
それだけで精神がすり減らされて、
病が更に重くなるような気がしました。

また、末期の梅毒患者の川流しも辛かったです。
あの光景は日常茶飯事に起こっていることから、
誰も助けようとせず、
当人すら、一刻も早い死を自ら望んでいる
(死ぬ事によって、梅毒の苦しみから逃れたい)のを見せられて、
私も何とも言えない気持ちになりました。

医学界において、ペニシリンの発見が歴史的大事件であるのは
私も何となく知っていましたが、
こうして事例を見せられると
本当にペニシリン様様と思えますね。
抗生物質って、本当に凄いんだなぁ。



そう、読んでいて強く思ったのが、
当たり前の事ですが、医療は細菌との戦いなんですね。
現代では
……特に今は、新型インフルエンザが猛威をふるっている事もあり、
スーパーや公共施設などに行くと、
入口に必ずアルコールの消毒剤が置かれていて
来訪者が自由に使えるようになっています。
近年では、やたらめったら“除菌”“殺菌”の冠がつけられていて、
逆に、普段から雑菌に接しないことで
人間の抵抗力が落ちちゃうんじゃないかと心配になるくらい
こだわっている人も多いです。
でも江戸時代では、消毒の概念すらなかった
──そもそも菌の存在すら知られてなかったというのが
怖い意味で凄いです。
ドラマでも原作でもちょっと出てきていましたが、
高濃度の焼酎を殺菌に使うとか
昔の人は、そういう知識もないのに
よく知っていたなぁと、逆に感心してしまいました。
たとえば、焼酎なんかはきっと、
怪我に焼酎を掛けると治りが早いというようなレベルの言い伝えが
地味に広まっていたんでしょうが
正しいことと同様に、間違ったことも広まっていたかと思うと
背筋がゾッとします。
麻疹除けの守り札を家の入口に貼って済ませるとかは、
病気の本質をしっていたら、本当、あり得ない事ですよね。



他の登場人物も、大変魅力的だったと思います。
咲さんのお母さん・栄さんは、
当初は、咲さんが南方の助手として医療に関わるのを
宜しく思ってなかったのに、
近所の女性にも声を掛けて、夜なべで針仕事をして
影ながら南方を支えるように変わってましたね。
あのシーンは、読んでいてとても嬉しくなりました。

山田さんは、掌を返したような南方への心酔振りが
とても面白かったです。
彼は、良くも悪くも素直で、義理を重んじる人間なんですね。
培養中のペニシリンの大部分を失火で燃やされた後、
道で怪しい人に声を掛けられたシーンの後は、
彼の死体が転がっているコマがいつ出てきても仕方ないと、
私も覚悟しながら読んでしまいました。
でも予想が外れて良かったです!

野風さんは良い女ですね〜。粋なのも素敵だ。
南方が吉原を訪ねる度に
野風さんが頼みごとをしていたような気もしましたが、
彼女が五十両で自分を買って、南方に礼をするシーンは
さすがだと思いました。

坂本竜馬も、
南方の友だちというポジションに早々に収まっていて、
何よりでした。
竜馬が話(医療のエピソード)に直接関わることは、
私が読んだ第4巻まででは無かったので
彼は、部外者として南方に協力する立場で終わっていましたが
きっとこれからの巻では、
彼のエピソードが増えるのかなぁと思いました。



お話のつくりとしては、
江戸時代における南方が、出自不明の怪しい医者という設定である以上、
南方を敵視する者や、その知識を疑問視する者が大勢いるのは当然です。
よって、使える物に制限がある状況で南方が医療行為をするシーンが
重要であると共に、
他人をいかに説得する(味方に引き込む)かも大事なのですが、
誰かが病になる/怪我を負う
→南方が医療行為を行なう
→何らかのトラブル発生
→苦労しながらも南方の医療行為が成功
→皆に喜ばれ、敵対していた人物も南方に感服する
→新たな人物が南方を敵視する
→誰かが病になる/怪我を負う……(以後繰り返し)と、
全体的に、まるでテンプレートにはめたような同じ構成になっていたのが、
ちょっと気になりました。

上記でも書きましたが、お話そのものは、とても面白かったです。
読んでいる内は、
次から次に事件(病や怪我)が慌ただしく起こっていく事から、
私は、その対応で右往左往する南方の気持ちになれたので
あまり気になりませんでしたが、
一つのお話を読み終えて、振り返ってみた時に
「あれ? お話の作りがパターン化してる?」と思えたのでした。
ただ、何度も書いていますが、
私はまだ4巻までしか読んでませんので、
この先は大きく違っているのかもしれません
(現在は単行本16巻まで出ているそうです)。

それと、南方があっさりと
医療用の道具を手に入れているのも、気になりました。
それは、南方の買い付け先や、
彼に頼まれて作った職人が素晴らしい事に繋がるのでしょうが、
「こんなに簡単に作れるものなの?」と
思ってしまいました。
まぁ、こちらは、医療行為にはリアリティがありますが、
それ以外は、タイムスリップした件を含めて、
ファンタジーである部分も多いので、
そういった点を読者がちくちくと責めるのは
それこそ野暮なんでしょうが、
もうちょっと、道具で苦労する事があっても良かったかなと
思いました。



あ、こちらは医療漫画なので、
当然、手術シーンなども絵で描かれています。
しかし、グロい絵はほとんどないので、
そうした絵に弱い私でも普通に読めました。

あっという間に読み終えてしまったので、
早く、残りの5巻以降も読みたくてたまりません。
良い作品に出会えて嬉しかったです!
ドラマを見ている人はもちろんですが、
見ていない人にもお勧めです。





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2009-10-25 14:08  nice!(1)  コメント(0) 
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