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感想@漫画「ぼくらの」月刊IKKI2009年8月号*ネタバレあり [ぼくらの:感想]

鬼頭莫宏先生の連載漫画「ぼくらの」月刊IKKI2009年8月号感想です。
今回がとりあえずの最終回です。

ネタバレを含みます。
単行本派の方、本誌をこれから読まれる方はご遠慮下さい。


前回(2009年7月号)の感想はこちら↓
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-05-25-4



────

今月号が最終回です。
「あぁ、とうとうこのお話も今月で終わってしまうのか」と、
なんだかしみじみとしてしまいました。
もう悲しいお話を読まずに済む事に対してホッとしたような、
でも淋しい気もするような、複雑な心境でした。

──ですが、扉絵を開いてびっくり。
第65回「コエムシ1」──“1”って何?と思い、
自分の目を疑いました。
先月号で「次回、最終回」と見たのは勘違い/編集部の間違いなのかと思い、
つい、“ぼくらの”の最終ページを開いてしまいました。
そこでようやく納得。
今回がこのお話の最終回である事に変わりはないですが、
次号、最後を迎えた上での番外編のようなお話があるみたいです。
そして、今回が「コエムシ1」というタイトルであるのを踏まえると、
そのお話はコエムシが主人公、もしくは
彼にまつわる内容になるのかなと、私は想像しています。
(7/15追記)
鬼頭先生のサイトにて、この「ぼくらの 特別ヘン」が、
単行本は勿論のこと、IKKI本誌にも載らないとの発表がありました。
こちらについては、別の記事で
思ったこと(というか、事情に対する勝手な推測)を書いています。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-07-15



さて、本編に対する感想を記していきますが……
できれば、未読で“ぼくらの”の情報を集めているだけの方は
下記をお読みになるのをご遠慮下さい。
もう既に他でネタバレを見ている方もいるでしょうが、
漫画で最初に“その事実”を知った時の衝撃を味わえないのは
非常に勿体ないです。

というわけで、以下はスペースを空けてから記述を開始します。



















最初、私は、誰と誰が話しているのかが分かりませんでした。
しかもこの漫画、吹き出しの角がないので
どの吹き出しが誰のものであるかが分かりにくいんですよね。
ただ、新しいコエムシの外見から、コエムシがいつもの彼でない事と、
その怪しいコエムシと喋っている
ちょっとやんちゃが入ってそうな青年の口振りが、コエムシそのものだった事から、
この青年こそがコエムシではないのかと、想像しました。

また、新しいコエムシは
黒い髪の毛が生えている外見と、ちょっと丁寧語が入る口調、
そして、コエムシと思わしき青年から
“コエムシ”という存在の特性と引き継ぎ戦について
説明を受けている状況から、
どう考えても彼がササミンにしか思えませんでした。
確証が得られたのは、やはり、
旧コエムシから新コエムシに
「オレがココペリでおまえがコエムシ」という台詞が放たれた際に、
新コエムシが「様、をつけてくれないか」との返事をしたシーンです。
ササミン……以前の回で、
彼がどう責任を取るのかが話題になった事がありましたが、
まさかこういう未来を選択したとは。 orz
私は、とてもショックでした。

ウシロが最終戦を担当し、
コエムシが引き継ぎ戦を行なうだろうという予想は
誰もがしやすい、王道的展開だと思います。
読者の多くにそう想像されるという事は
「やっぱり」と思われてしまう反面、
多くの支持を得られるという利点もあります。
実際、この展開には、多くの読者が納得できたと思います。
私もしました。
ただ、上記のようになるには問題がいくつかあって、
特にそれはコエムシ関係なのですが
(コエムシのままジアースを操縦できるのか/
コエムシが操縦できたとしても、その後はどうなるのか等)
今回の展開で、それらの問題はあっさりとクリアされました。
で、普通はここで終わるんですよ。
けれど、ここで終わらなかったのが、鬼頭先生の凄さだと思います。
責任の取り方としては機転が利き過ぎだとは思いますが、
状況が状況なので、素直に喜べません。

ただ……
パイロットに選ばれてしまった子供たちが命を賭けて頑張ったように、
その周りにいた大人たちも同様に、
この地球を守る為に命を賭けて動いた点は
悲しいけれどホッとしました。
私は成人しているので
子供たちに対しては、どうしても大人の目線で読んでしまいます。
普通、漫画などは、主人公に気持ちを同化させて読む事が多いですが、
この漫画で田中さんや関さん達が出てくる度に、
私の気持ちは彼ら大人に同化しました。
だから、まだ幼い子供達を頑張らせてしまう事に対して
罪悪感というか後ろめたさも感じていました。
でも、彼らと深く関わった大人三人は皆、
結果的に、子供たちと同じ立場になって地球を救っていきました。
こういう大人が彼らの傍に居てくれた事が、本当に嬉しかったです。
一番頑張ったのは子供達で、これは絶対に揺らがないけれど、
「大人も頑張ったんだよ」と胸を張って言える事に
安堵しています。



コエムシが最後のパイロットとして契約した時の顔には、
感慨深くなっている心境がよく出ていたと思います。
「このオレ様が、自ら望んで契約するようになるとはな」と
苦笑しながら呟いているようにも見えました。
妹のマチの意思を継ぐとはいえ、
それがコエムシの意思になっている事も、よく表われていたと思います。

コエムシが次の地球で引き継ぎ戦を開始する直前に出た、
皆の椅子がずらっと並んだ絵は、圧巻でした……!
そして、皆の椅子と一緒に、ウシロが座っていたあの椅子
(田中さんが最後に乗っていた戦闘機のコックピットの椅子)も
ちゃんと描かれている事に、私は号泣してしまいました。
勿論、先月号の一連の描写で
ウシロが亡くなった事は分かっていましたが、
皆の椅子の中に彼の椅子も交じっているのを見て、ようやく
彼の死に対する強い実感が湧いてしまいました……。
また、この絵には
「あぁ、この物語が終わるんだ」とも痛感させられました。



救いだったのは、パイロットになっても変わらなかった
コエムシの決意の強さです。
それだけ、彼にとってマチの死が大きかったからでしょうが……。
正直、連載の初回で出てきたココペリ(前の地球のパイロット/先生)のように
コエムシが申し訳なさそうに「すまない」と謝っても、
あの地球のパイロットたちにとっては全く詫びになってないというか、
彼らに「ああやって謝るぐらいなら、自分たちを選ばないでほしかった」と
思われるのが関の山です。
それなら、今回のコエムシのように、ふてぶてしく
「お前らは死ぬんだよ。その代わり、この地球を救えるんだよ」と言った方が、
新しいパイロット達の気持ちが楽になれる気がします。
少なくとも、コエムシに憎しみをぶつける事で
多少は気が晴れますよね。
コエムシは、元々の性格もあるんでしょうが、
新しいパイロット達の為にわざと憎まれ役を買ったのかなと思います。
コエムシの口の悪さは以前からずっと同じでしたが、
今回のコエムシの言葉には、
ウシロと二人で話した時に感じられた優しさが出ていました。

また、113ページでコエムシが「戦えるんだ。」と言っているのが良いです。
単なる「戦う」ではなく、押し付けの「戦わされる」でもなく、
「戦う」という行動に希望の可能性を付けた「戦える」です。
これは、パイロットに選出されたというどうしようもない事情があったとはいえ、
自らの意思で自分の地球を守る為に戦い、命を落としていった皆の意思が
反映されていると思いました。



コエムシの最後の台詞ですが……
皆の下の名前が、タイトル“ぼくらの”に引っ掛けてあるのを踏まえると、
彼から連想できるのは、まさに“夢”という単語だなと思いました。
“ぼくらの夢”が最後だなんて
終わりに相応しい素敵な言葉だと思いませんか。



“ココペリ”が、彼個人の名ではなく
“コエムシ”と同様に、役割を示すものだった事や、引き継ぎ戦の謎など、
最後に明かされた事も多かったです。
色々と突っ込んでいくと、まだ分からない事もありますが
それは物語の余韻として残されている気がします。
今回、私は、会話をしていた二人を
ササミンとコエムシであると断定していますが、
それですら、作品中では明確に書かれてないわけですし……。
こうやって、読み終った後であれこれと想像できる楽しみが、
鬼頭先生が読者に贈って下さった最後のプレゼントなのかなと思っています。




一応、次回もあるとのことなのですが、
ウシロたち“ぼくらの”のお話は、おそらくこれで終わりだと思います。
ハッピーエンドを迎えられたとは決して言えず、
コエムシ化した(らしい)ササミンや、往住さん、
コモのお父さん、チズのお父さん……等、
残された者達の戦いはまだまだ続いています。
洒落で済まないほど辛く悲しいお話だったので、
毎月、私は泣いてばかりいましたが、
このお話に出会えて本当に良かったです。

アニメ版の出来が、ファンからくそみそに言われていて、
私も最後まで見て「何これ」と思ってしまいましたが、
アニメ版のDVDの1巻を偶然に見ていなければ、
原作のこの漫画に私が手を出す事はなかったので
その点では感謝しています。
また、アニメ版を積極的に見ようと思えたのは
同人誌即売会で度々流されていた「アンインストール」を聞いて
「この曲は何の作品のものなんだろう?」と思った事でもあります。
(ずっと分からないまま気にしていて
忘れた頃にたまたまアニメ1巻の見たら、この曲が流れたので
「これだー!」とびっくりしました。
何となく見るつもりが、途端に「見よう」と乗り気になりました)
つまり、こうして辿っていくと、
やはり名曲「アンインストール」のお陰なんです。
あの美しくてせつない曲にも感謝を言いたいです。
どうもありがとうございました。





────
感想は以上です。
お読み下さり、ありがとうございました。

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2009-06-25 12:04  nice!(0)  コメント(11) 
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コメント 11

ぴよひこ

僕もアニメから入りましたよ。
アンインストール大好きです。
漫画も終わってしまいましたか… 番外編が楽しみですね!
by ぴよひこ (2009-06-25 19:37) 

さくら

■ぴよひこ様
初めまして、こんにちは。コメントありがとうございます。

「アンインストール」、本当に良いですよね!!
「ぼくらの」の一筋縄ではいかない世界が
あの短い時間でよく表わされていると思います。

ぴよひこ様もずっと漫画を追いかけられたのでしょうか。
お疲れ様でした。
私も、番外編が楽しみでたまりません。
by さくら (2009-06-25 23:03) 

仮帯

お久し振りです。

遂に完結してしまいましたね……とは言っても、
平行世界の地球を剪定する戦う仕組みは続いていく訳ですが……
ここに、小説版との大きな違いを感じますね。
小説版が、世界そのものに小さな抵抗を試みたとすれば、
原作(漫画)は、延々と続く遠大な営みの一環として扱っているように思えました。
元コエムシことマチの兄の価値観ですけど、
この戦いの仕組みに作為を否定する発想は、
盲点でしたけど、そうでも思わないと、やりきれないのかもしれません。
そもそも、マチ兄が勝つという確証ない訳で……。

>皆の下の名前が、タイトル“ぼくらの”に引っ掛けてあるのを踏まえると、
ああ成程って思いました。つまり、言われるまで気付きませんでした。
ワク、ダイチ、ナカマ、カコ、チズ、マチ……特にウシロなんて、
ウシロが戦い終わって実際の光景でないにしろ、
“ぼくら”の後ろを遅れて歩いて追いついた描写が思い起こされて。

次回の番外編のさくら様の感想も楽しみにしています。
欄外のコメントにあった「プリキュア」の文字に噴いた仮帯でした。
by 仮帯 (2009-06-26 08:31) 

さくら

■仮帯さま
こんにちは。お久し振りです。
再びのご来訪&コメントありがとうございます!

仰る通り、コエムシの説明通りなら
あれほどの事があったにもかかわらず
このゲームは延々と続いていくんですよね。
ウシロたちがそうだったように
何の前触れもなくいきなり始まって
唐突に終わる(下手をしたら地球が無くなる)なんて……。
それが、地球に雨や雪が降ったり風が吹いたりするのと
同じレベルでなされるのには
無常を覚えてしまいます。

プリキュア、あそこで語られても困りますよね。
私も笑ってしまいました。
by さくら (2009-06-30 00:07) 

おれらの

さくらちゃんは、我慢が出来ない子だね
いきなり最終ページ見ちゃったんだー
ところで、そろそろなるたるも読んでおかないといけないな
精神的ショックも大きいだろうから、読むのだったら人と会わない夏休みの間がいいかもね
10巻はさくらちゃんの好きそうなガチBL展開があるよ
by おれらの (2009-07-02 03:26) 

さくら

■おれらの様
初めまして、こんにちは。

「なるたる」を読む予定はありません。
お勧め頂いたのにすみません。
また、BLにもあまり関心がありません。
by さくら (2009-07-03 01:19) 

渚

はじめまして、さくらさん。
渚と申します。

ぼくらのは本当にいい物語でしたよね。
みんないろいろなものを抱えていて、
それだけでもつらかったのに
自分が勝たなきゃ地球が終わるなんて・・・。
どんなに抗ってもかならず死が訪れる・・。
みんな、本当によく頑張ったなーと感動しました。


さくらさん、文章お上手ですね!
読んでて感動しました。
来月号の感想も楽しみにしてます!




by 渚 (2009-07-12 21:13) 

さくら

■渚さま
初めまして、こんにちは。
コメントをお寄せくださり、ありがとうございます。

子供たちが、他人の為に戦ったのは勿論なんですが、
“呼ばれて”から実際に戦うまで、
彼ら自身の生と直面する描写も深くて……凄くて、
本当、私も感動しっぱなしでした。

私の感想についてのコメントも、ありがとうございました。
語彙がないので、感情を言葉で上手く表現できないのが
いつももどかしいのですが、
渚さまにそう言って頂けて、とても嬉しかったです。

来月号は、本当に終わりなので、
早くその発売日が来てほしいような、来てほしくないような、
複雑な心境でいます。

by さくら (2009-07-13 00:02) 

匿名

ぼくらの特別編掲載されないみたいですよ。

作者のサイト「パズルピースは紛失中」に書いてありました
by 匿名 (2009-07-14 13:52) 

さくら

■匿名さま
初めまして、こんにちは。
お知らせくださりありがとうございます。

その前の、特別編は単行本などに掲載されない旨の記事は
鬼頭先生のサイトで拝読していたのですが、
IKKIでの掲載がなくなった事は、
匿名さまのコメントで初めて知りましたので
びっくりしました……。
物凄くショックです。
リアルで orz となりました。

こちらについては、新たに記事として書く予定です。

匿名さまにお知らせ頂かなかったら
このまま来月号の発売日を待ち遠しく思っていたはずなので、
本当に助かりました。
ありがとうございました。
by さくら (2009-07-15 00:18) 

あーる

今更ながらコメントします
アニメを途中で切り、最近ふと原作を読んではまりました。
アニメ版のせいで、こんな名作を読まずに死ぬとこでした…。

で、ちょっと気になったんですが↓

ささみんは画集のオマケで無事、元の地球に帰る事ができたようです;;

まー、彼がコエムシなら当然と言えば当然だったんでしょうが…。

blogに上記に関する記事が無かった為、是非一報をお知らせしたかったです。

ささみさんがマチ兄の様にジアースと契約しないか心配だったんですが
ウシロ達が守った地球に生きて帰る事こそ、彼なりケジメだったんでしょうかね;;
by あーる (2013-03-10 03:00) 

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