感想@漫画「ぼくらの」月刊IKKI2009年6月号*ネタバレあり [ぼくらの:感想]
鬼頭莫宏先生の連載漫画「ぼくらの」月刊IKKI2009年6月号感想です。
ネタバレを含みます。
単行本派の方、本誌をこれから読まれる方はご遠慮下さい。
前回(2009年5月号)の感想はこちら↓
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-03-25
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一方的な殺戮を続ける(続けざるを得ない)ウシロの描写から
始まりました。
必死で現状を伝えるアナウンサーの目に涙が滲んでいるのと、
泣きたい心境をとっくに超えた気持ちで
攻撃を仕掛けているウシロの壮絶にやつれた顔
(人としての一線を踏み越えてしまった顔)が
続けて描かれてるんですが……
どちらの気持ちも分かる読者としては、もう辛いとしか
言い様がないです。
今回は、作中の時間的にも、物語の内容的にも
ほとんど進んでません。
ただ、ウシロの中で大きな変化が二つ起こりました。
それらにやっと気付けた事は、ウシロにとって良い成長なので
彼を見守ってきた一読者として私は嬉しいのですが
あの状況で、しかも彼には先がない(未来が無い)のを思うと
やるせないです。
とはいえ、子供達が死を前にして心を成長させる事については、
ウシロに限らず、他の子供達についても描かれてましたので
彼だけが特別ではないのですが。
まず最初。カナちゃんのこと。
“痛みを与えられる辛さを知った上で他人に痛みを与える”方が辛いとは
まさしく真理だなぁと思いました。
自分達の地球を守りたいとの思いも強かったでしょうが、
田中さんがウシロに母親として名乗るとの約束が
戦闘終了後に守られるのをひたすら信じて、
あんな小さな子が、そういう辛い戦闘に臨んでいたのかと思うと
何とも言えなくなります。
読んでいて、顔が歪んでしまいました。
そして、ウシロはどれだけカナちゃんから愛されていたんだろうと
思いました。
ウシロの暴力に従順に耐えていた事もそうですが
カナちゃんにとってウシロは、
自分以上に大事で愛おしい存在なんですね。
もしかしたら、カナちゃんは
自分の為だけだったら戦わなかったのかなとも思いました。
次は……あの、ナカマの制服!!!
全員分が作られた甲斐がありましたね。ほろりときました。
たとえば、先に死んでしまった皆を思って
抱き締めるぐらいはあるかなと思っていたのですが、
あんなに馬鹿にして嫌がっていたあの制服を
(嘔吐したせいで服を汚してしまい
着替えが必要になった状況があったとはいえ)
ウシロが自らあの制服に袖を通す気になる日が来るとは……!
あの世で他の皆が
「ウシロもやっと来たね」「頑張って作った甲斐があったね」とか
喜んでいたり
「意外と似合ってる/似合ってない」って勝手な感想を言って
ウシロを茶化しているのかもしれないと思うと
感慨深かったです。
また、それを着たウシロが、空の椅子達を見るシーンが
もうもうもうもうもう……たまりませんでした。
ウシロが契約を望んだ時も、彼の椅子が出てきた時も
「戦う」って覚悟を決めた時も同じ事を思いましたが
本当に本当に、
ウシロが“ぼくらの”仲間の一員になれたんだなと
実感しました。
ウシロが聞いた幻聴の叫びは、
殺されようとしている人間の心の響きだと思いました。
それこそ超音波のような種類で
心に直に伝わってくる音なんだと想像しました。
一度は「聞こえない」と否定しながらも
一緒に聞いてやると言い切るコエムシが優しい。
こんな時にウシロとの一心同体を強調してくるなんて
コエムシのくせに……泣けるじゃないか!と思いました。
カメラにやった往住さんの手の震えも
彼の辛い心情がよく出ていて、見ていて辛かったです。
冒頭の殺戮シーンでは、相変わらず
人が具体的に殺される場面は描かれていません。
──が、今回、マフラー?のような物があれこれと見苦しく散らばっている
誰かの民家の玄関先のコマがありました。
もしかすると、あちらの地球の人は、この非常時に
取るもの取らずに緊急避難するのを強いられたのかなと思いました。
パソコンのモニターも白いので、
電源が入れられたまま、人がいない状態なのかもしれません。
ただ、ウシロには人の命の光が見えているので
いくら彼らがそうして逃げたところで
的確に狙われてしまうんですけども。
もうそろそろ、ウシロの戦いにも動きが出てくると思います。
ウシロの心が本当の意味で救われる事はないので
彼が迎える結末をしっかりと見ていきたいです。
今月号の最後は、黒づくめの未来ちゃんでしたが
まるで喪服のようだなと思いました。
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感想は以上です。
お読み下さり、ありがとうございました。
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続きの2009年7月号の感想も書きました。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-05-25-4
宜しければ、合わせてどうぞ。
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