感想@漫画「ぼくらの」月刊IKKI2009年3月号*ネタバレあり [ぼくらの:感想]
鬼頭莫宏先生の連載漫画「ぼくらの」月刊IKKI2009年3月号感想です。
ネタバレを含みます。
単行本派の方、本誌をこれから読まれる方はご遠慮下さい。
前回(2009年2月号)の感想はこちら↓
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2008-12-25
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いよいよウシロの戦いです。
「ぼくらの」戦いも、いよいよこれが大詰めです。
まさに大一番。
前回の終わり
(ウシロと父親の会話が途中で終わる)が唐突だった通り、
ウシロのお父さんが荒れています。
ウシロは、田中さんから預かっていた養子ですし、
父親である先生とは、
あまりべたべたした親子関係ではなかったようです。
それでも、ずっと一緒に住んでいればやっぱり情が湧きますし、
先生はその前に実子であるカナちゃんを亡くしてますし……で、
ウシロが消えた後は、
地球が滅んだと同じ感じがしたんじゃないでしょうか。
違いは、自分が生きているか否かの違いで。
見開きページで、
ジアースの中、ウシロの前に皆の椅子が現われたのを見た時は
もう悲しくて悲しくてたまりませんでした。
ぐっときました。
何というか……私は元々、涙もろい上に、
「ぼくらの」は面白いけど悲しいお話なので、
たまに「泣きたいが為に読んでるんじゃないか」と思う事があるのですが
今回も駄目でした。
皆の頑張りとか思いとか、マチの事実上の死とか
子供達のパイロットという点ではウシロが最後なんだとか
これまで単行本+本誌で見てきた事が
走馬灯みたいに一瞬にして頭を過って
まるで私の方が死ぬ直前みたいでした。
アンコのお父さん(往住さん)も、
ジアースに一緒に乗りましたね。
カメラマンの手配がつかなかったと言ってますが
そりゃ前回が特別だったんであって
進んで自分の身を危険にさらす人は
そういないんだろうなぁと、思ってしまいました。
いや、勿論、報道カメラマンさんの中には
たとえば戦場で命張って頑張ってる方も
多々いらっしゃいますが、
これはそれとはちょっと違いますし、
何より、ジアースが強いぬいぐるみとはいえ
死ぬ確率が高いですしね。
必要上、他の仲間達が吐かなければならなかった嘘を
無駄にするかもしれない覚悟で、
自分の戦いを──本当のジアースの戦いを残そうというウシロには
未来を意識している彼を強く感じました。
ウシロ自身も台詞で言ってますが
彼には、ただ戦って死んでいくつもりはないですよね。
ちゃんと伝えなければいけないこと、
自分が伝えたい事をそうする為に頑張ろうという気概は
以前のウシロにはなかったはずなので
彼の成長を感じました。
また、敵の地球に飛ばされた後、
敵からの攻撃を一方的に受け続けていたウシロが
実は攻撃できない心理状態に陥っていると分かりました。
以前、当時はまだ顔見知り程度の仲だったとはいえ、
運命共同体とも言えたパイロット仲間に
抵抗なく、「死ね」と言ったも同然の言葉を放った彼がですよ。
相手の地球を消す事、そこで生きている人々を殺す事
そして、もしかすると、勝った後に自分が消滅する事も含めて
ウシロが抵抗感を持ち、それが行動に表われているのかと思うと
非常に感慨深かったです。
嬉しい……でも、「頑張れ」とは言えない。
「もういいよ」とも言えない。
前にもありましたが
自分達の地球が存続できるかどうかは、
パイロットの子に掛かっているので、
「好きにしていいよ」
「止めたかったら逃げてもいいし、戦いたかったらそうしてもいい。
どちらでも、自分達は恨まない」と
言ってあげたくなりました。
これまでの皆の戦いを見ていて
妹のカナちゃんですら超えたところでつまづいてしまったウシロは
とても人間臭くて、魅力的でした。
そう、結局、
真実が地球の人々に知られてないという事が
この作品の一番の悲劇のように思えてなりません。
終わった後、「実はこんなに大変だったんです」と言われても
民衆には全然実感が湧かないと思います。
「へぇ、そうだったんだ。大変だったんだね」と
さらりと流す感じで。
ウシロを始め、皆が本当に命を賭けて頑張ってきたのに
その努力が皆にちゃんと伝わらないまま
地球が存在してしまっていることが。
なので、アンコのお父さんが録画している映像が
生中継で地球上で(テレビは無理としてもネット配信とか)
流されてたらいいのに……と
思ってしまいました。
作中でも不安がられてましたが
敵の狙いが分からないのが怖いです。
そして、とりあえずの最終戦である今回の敵は
やっぱり同型でした。
見るからに強そう……。
たとえば、敵がまだゲームに参加したばかりで
状況をよく分かってないならともかく
あそこまで勝っていて、
この戦いがどういうものかはよく分かっているはずなのに
わざわざ市街戦を選ぶというのが不穏です。
そしてウシロの気持ち。
地球が消滅するのは一瞬でしょうから
確かに、戦闘を長引かせて向こうの地球の人々に
辛い苦しい思いをさせるよりは
(戦闘開始〜地球消滅という短い間でも
死傷者が出てしまえば、彼らはその間に苦しんでしまうので。
とはいえ、あの街は人々が既に避難済みのように見えます)
とっとと相手を倒してしまえばいい──とは思いますが
なかなか、軍人でもない一般人が
気持ちを切り替えて人を攻撃するなんてできません。
それに、これもウシロに限った事ではないですが
戦いに勝ったら自分が死ぬというのがもう、辛いです。
「早く攻撃しろ」=「早く死ね」になっちゃいます。
思い返してみれば、
皆はある種の極限状態になれたからこそ
ジアースで戦えてました。
まともに考えてたら、本当、ジアースを動かす事ですら
難しいと思います。
まさに、カコが普通。
ジアースに乗れているだけ、ウシロは心が強いです。
田中さんはもう亡くなっていて
絶対に生き返ることはないので、
二人がこの世で親子として会話をする事はないけれど
カンジに貰った服を着たウシロが
田中さんが最後に乗っていた椅子に座ることで、
せめて戦闘中だけは“田中美純の息子”として生きてほしいです。
個人的には、ジアースを初めて動かした時の
ウシロの驚きっぷりが新鮮でした。
最初のパイロットだったワクの戦いの時より
びっくり感が出ていたと思います。
ジアースの操縦にしても、誰かと戦うという事も、
相手の地球を消す事も、自分が死ぬかもしれないという事も、
他人事として外から傍観していた時と
実際の当事者として自分が行なう時とは全然違うというのが、
このウシロ編ではよく描かれていると思います。
以前の号の、眠れなくて吐く場面も、
敵に戸惑うのも、恐怖を感じるのも
他の全てのパイロットが通ってきた道です。
上でちょっと挙げましたが
ササミンはまぁ立場的に当然として
往住さんが乗ってきたことが、私は嬉しかったです。
彼がしている事は報道マンとしてのそれですが
彼は今も父親として、
娘のアンコの為に頑張っているんだと思えました。
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感想は以上です。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
今月末はいよいよ単行本10巻の発売です。
本誌で読んでいるとはいえ、そちらも楽しみです。
……泣きたくなる展開ですが。
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感想は以上です。
お読み下さり、ありがとうございました。
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続きの2009年4月号の感想も書きました。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2009-02-27
宜しければ、合わせてどうぞ。
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