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感想@漫画「ぼくらの」月刊IKKI2008年10月号*ネタバレあり [ぼくらの:感想]

鬼頭莫宏先生の連載漫画「ぼくらの」月刊IKKI2008年10月号感想です。

ネタバレを含みます。
単行本派の方、本誌をこれから読まれる方はご遠慮下さい。

前回(2008年9月号)の感想はこちら↓
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2008-07-31-1

*8月号は休載でした
前々回(2008年7月号)の感想はこちら↓
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2008-05-24

単行本の感想はこちら。
全体と第1巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24
第2巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-1
第3巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-2
第4巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25
第5巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-1
第6巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-2
第7巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-3
第8巻の感想↓
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2008-02-25-4


────
今月号も、先月号と同じく
亡くなったパイロット達の家族の元を
ウシロとマチが二人で訪れるという回です。

二人の話なのにサブタイトルが「町洋子」のままなのが
(以前、この直前だけ一回だけ「宇白順」という回があったことを踏まえて)
ちょっとイミシンだなぁと思いました。
残された最後のパイロットという点では二人同じですが
この、遺族への顔見せ&事情説明は、
洞窟に皆を誘ってしまったマチが取らなければならない責任というか
選ばれたパイロット達が皆、そうしてきたように
マチにとっての「これだけは死ぬ前にやっておかねばならない事」が
まさに「これ」だったんだなと痛感しました。
*ナカマの衣裳作りやチズの畑飼達の殺害、マキの弟との体面など……。

こうやって考えていくと、
ここでの感想でも何度か挙げていると思いますが、やはり、
死をこれでもかとテーマとして前面に押し出している作品なのに、
生が一緒に(光と共に)浮かび上がってくるんですよね。
まさに、生と死は表裏一体というか、
死を意識すれば嫌でも生も意識せざるを得なくなるんだなと思いました。



さて、具体的な今回の感想です。

……泣かないだろうと予想していたのに、マキのお父さんの台詞で
ポロッときちゃいました。
彼ら夫婦の表情や台詞が、もう私の心に突き刺さりまくりです。

私は大人の年齢に達していて、子供を産んでいてもおかしくないので、
子供を心配する親の気持ちはよーく分かります。
また、親に心配や迷惑をかけたくない子供の気持ちも、
自分がまだ親になってない現状と
この漫画のパイロット達を読者として見守ってきた立場から
よーく分かります。
なので、マキのご両親と
マキ(やウシロ、マチを含むパイロット達)の気持ち双方が
痛いほど伝わってきたので、せつなかったです……。

マキのお父さんから唐突に「おしりっ!!」って言われて叩かれて、
ウシロもマチも顔を真っ赤にしてびっくりしていますが、
ここは状況とは逆に微笑ましかったです。
長年、子供に恵まれなくて、
マキを養子として迎えるほど子供が好きだった二人
(止めなかったのでマキのお母さんも含む)は
本当に本当に子供を好きで、愛してる人なんだと伝わってきました。
おしりを叩くのは、躾です。
躾は暴力じゃありません。愛情が元です。
直さなければ駄目だと親が判断した子の過ちを修正する行動です。
マキのご両親が、この先、地球を守って逝ってしまうウシロとマチを
自分の娘同様に愛し、大事に思っている証拠だと思います。

実は、マキのご両親に関してはとても気になっていました。
確かマキの死後、コモの所に連絡を取ってるじゃないですか。
そして、その時はまだ本当のことを言えないコモが困ってましたよね。
コモは優しくて責任感の強い少女でしたから、
大好きなマキのご両親に嘘を吐かなきゃいけない状況は
本当に心苦しかったと思います。
描写は一切出てきませんでしたが、
もしかしたらコモは
夢に見るまでそれを気に病んだのではないかと、推測しています。
でも、今回、ウシロとマチがマキのご両親に会ったことで、
もしコモがマキのご両親に本当のことを打ち明ける&
嘘を吐いたことを謝れる機会があったとしたら、
マキのご両親は、マキやウシロとマチにしたみたいに、
コモにも「おしりっ!!」って言ってお尻をぶったはずだと思うんです。
なので、純粋に
マキの死後の父母が以前と変わらずに素敵なご両親だったことと、
もしかしたらの仮定を前提にしてますが
コモの一件が悪いままで終わらなかったことで、
救われた気持ちになりました。
本当に、マキのご両親があのままで良かった……!
マチのご両親はこの世界にはいないし
ウシロのお父さんは躾で子供の尻を叩くような人ではないと思えるので、
(というか、ウシロと父親はその関係を深く書かれていないからか
二人の間にある繋がりがまだ希薄のように思えます)
マキのお父さんの「おしりっ!!」が
本来の親の代わりに見せられた愛情の一種だと思えてなりません。

私は元々、マキのご両親が大好きだったのですが
今回のことで更に好きになりました。
弟くんの名前も素敵ですよね。
万を記すと書いて万記で、一つを記すと書いて一記。
マキがいたからこそ一記君が生まれたんだということが
よく分かる名前だと思います。
この地球は、ウシロとマチのお陰で絶対に残るはずと信じていますが、
こんな素敵なご両親に育てられるんですから
きっと、この名前を誇りに思うようになるんでしょうね。
そして、姉に会いたかったと痛感するんだろうなぁ。



マキのご両親だけでなく、他の対面者についても思ったことですが、
パイロットたちの行動(戦いや死も含めて)によって、
「ぼくらの」地球が今も残っていることもそうですが
周辺の人々の生き方や考え方に着実な変化を齎しているのが
感慨深かったです。
特に印象に残った人を挙げていきます。

・コダマの下のお兄さん
人ではなく地球を相手に仕事をするということで
父親と同じ分野で働きたいたいと望むようになるのは
ちょっと皮肉っぽい空気も感じましたが、
良い話だとも思いました。
ただ、上のお兄さんもそうですが、
煙たがって嫌っていた父親の恩恵は受けずに
自分達の力でやってみるというのがさすがです。
こういう二人の下にいて、
コダマがあのような性格(父親大好き)になったのが不思議です。
年が離れているからですかね……?
それとも、上の二人で失敗していた父親が
最後に生まれたコダマだけ
自分に取り込むのに成功したという感じなのでしょうか。


・カコのお姉さん&ご両親
さすがに、チズに首を切られてカコが殺された件は
伏せられていたようですね。
お姉さんは、カコの甘さを断つようなことをしたせいで
カコを追い込んだのではないかと思っていたようです。
私は、カコが部屋をあんな風にするまで荒れてた理由が分かったことで
あのご両親やお姉さんには、ホッとできた部分もあったのではないかと
穿った見方をしてしまいました。
お姉さんの「キリエ君〜」云々の台詞は
ちょっと取って付けた感があることを否めませんでした。
ただ、「逃げた」というカコの感情を
お姉さんが認めてあげていたのは、一読者として嬉しかったです。
逃げたい気持ちは、作中のマチやウシロと同様によく分かってますから。
そして、お姉さんが、
カコがチズに殺されたと知っても、同じ事を言えたかな……と、
意地悪なことも思ってしまいました。


・ カズちゃん(キリエのイトコのお姉さん)
「忘れてた」が何に掛かるのかは、
あの書かれ方(コマやフキダシの場所)では断定できませんが、
その後の「ご飯食べる」に繋がってるのは確かだと思うんです。
生きることがよく分からなくなって死を望んでいた彼女が、
(お腹が空いたという台詞や描写抜きで)ご飯を食べると
自発的に言ったことが
物凄い変化だなと思いました。
キリエ君が亡くなってるんですから、
それぐらいの変化があって当然なのかもしれないですけど、
ご飯を食べるのを忘れるぐらい自失呆然状態だった人が
自分からご飯を食べようとした(生きようと思う)んですから凄いですよ。
そして、ボランティアの件も、
死にたくない人を助けている感があって、
生に対して前向きになれるようになった彼女を強く感じました。


・ 市子さん(チズのお姉ちゃん)
チズのご両親は、マキのご両親と同じくらい理想的な父母なので、
チズが亡くなった後のお父さんの行動も、
まさにそうでした……が!
私には市子さんが分からなくなりました。
畑飼がチズにしたことを知らなかったから
市子さんは彼と付き合えていたはずなんです。
事実、チズの死後、市子さんは畑飼から全てを教えてもらい、彼と別れてます。
──ここまではいい。
ですが!!!!
大事な妹が犯されて、輪姦させられて、
その映像まで撮られて脅されて、妊娠させられて……っていう
スイーツ(笑)小説も真っ青になるほど酷い目に遭ってるのに、
淡々と今の畑飼についてウシロとマチに語れるのは
どういう心境なんだろうかと、首を傾げずにはいられません。
チズがもう亡くなっているから?
畑飼には何も言っても無駄そうだから??
でも、市子さんからは、そうした諦めの感情は伝わってこないんですよね。
なんというか、畑飼から事実を教えてもらった件を言う時も、
現在の畑飼について語る時も、
市子さんは深い興味が無さそうというか
まるで新聞で読んだ記事を世間話で伝えてる感じがするんです。
あの姉妹は、どちらも相手が大好きだったと私には見えていたので、
それこそ、事実を知った市子さんが
チズの代わりにナイフを持って
畑飼の喉に切っ先を当ててもおかしくないと思ってたんですが
全然違いましたね。
市子さんは、感情を表に出さないというか
もっと深い所であれこれと考えるタイプの人なのかもしれません。
または、チズの死で、こう変化してしまったのか……。

畑飼は、政治家を目指しているようで(笑)。
こちらはもう呆れてしまいます。
畑飼は、今の子供たち(チズも含む)が嫌いなんでしょうね。
嫌いだから、人として最低なことをしてでも彼らを傷つけられる。
チズが例の件で心の傷を深く負ったことが
畑飼には楽しくてたまらなかったんだろうなと、今回でよく分かりました。
というか、傷つけるためにわざと付き合ったんですよね。
そして畑飼は、今の子供たちが嫌いだからこそ、
自分が好きなように子供たちを変えていきたい→
教師になった→次は目指せ政治家で、将来の夢は文部省!
なのかと。
最初は、畑飼が子供たちに興味がないからこそ
彼らを傷付けても平気でいられるのかと思いましたが
それだと、彼が教師になったり政治家を目指したりする理由が
とても弱くなるので、
彼は「現状が嫌いだから、自分が好きなように変えたい」んだと
推測しました。




実は、一人のパイロットの家族と体面=一話という感じで
長々と引っ張られたらどうしようと不安に思っていたので、
今回のように(なんかダイジェスト版みたいだとも思いましたが)
パパパと数件の家族を一気に描いて頂けて、ホッとしました。

残されているので気になるのは、やはりモジです……。
ツバサ達は、そこまでの説明がなされなくても
モジの心臓の件を嫌でも推測しますよね。
また、パイロットが死ぬというルールを知っていて子供を送りだした
コモとアンコのお父さんが
二人にどのような言葉をかけるのかに興味があります。
また泣くんだろうなとも思っています(笑)。
続きを読むのが楽しみなのに憂鬱という現状は、
まだまだ続きそうです。





────
感想は以上です。
お読み下さり、ありがとうございました。

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11月号の感想も、短いですが書きました。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2008-10-26

宜しければ、合わせてどうぞ。


2008-08-26 20:54  nice!(0)  コメント(2) 
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仮帯

以前にもお邪魔したことがあるのですが、仮帯と申します。

マキのお父さん痩せちゃったな……って思ったんですが、
さくらさんは言及されていないし勘違いでしょうか? 
でも、そこのところが一番心に突き刺さった回でした。
事情が説明されるまで、本当に一所懸命マキのこと探したんだろうなって容易に想像できて……。
次はコモのところでしょうか……
次回の冒頭では、マキのご両親にコモのことも言及して欲しいです、
やっぱり自分の子供以外も顔見知りだったというのは、
それだけ思い入れもあると思うし、マキのご両親にしか言えないことだと思うので。

あとマキをはじめとして、
他の先立ったメンバーの中のダイチとナカマは、ウシロがとりわけ素直じゃない発言をした相手なので、
その家族とウシロの対面が私は結構気になっています。
それに、ナカマのお母さんは、娘によかれと思ったことが娘の死に繋がってしまった訳ですし、
特に悔やんでいそうで……表に出していなくても。

>実は、一人のパイロットの家族と体面=一話という感じで
>長々と引っ張られたらどうしようと不安に思っていたので、
その分、展開が早い一方で濃い内容でしたよね。
カズちゃんのところは端折り過ぎにも感じましたが、むしろ、こちらで考えを巡らせる余地があって、いいのかもしれませんね。

悲壮な展開なのに、それでもどこか勇気付けられるところがあるだけに
バッドエンドだけは御勘弁を、と切に願いつつ私も次回を待ちたいと思います。
では、さくら様、いっぱいいっぱいお元気で。
by 仮帯 (2008-08-27 10:29) 

さくら

>仮帯さま

こんにちは、再びのコメントありがとうございます。

マキのお父さんに関しては
私も小さくなったなぁと感じました。
あの優しいマキのお父さんなら
それこそ寝食を忘れて駆けずり回って
娘の行方を探したでしょうね。

ナカマのお母さんについては
単行本で読んだ時に
ナカマに「友達作っておいで」と用紙を見せたあのシーンが
特に辛かったので
私もウシロとの対峙に期待しつつも怖いなぁと思ってます。
でも、これまでの話からいって
きっとウシロとマチとの顔合わせが
ナカマのお母さんにとって救いになる展開になるんじゃないかと。
そうであるように願うしかないですね。

パイロットの死が回避できないのなら
その中でも、光があるようなラストが良いですよね。
何がバッドエンドなのかは人によって考え方が違うと思うのですが
私も仮帯さまと同様に、そうでないことを願います。

コメントありがとうございました。
ちょっと体調を崩してたので、最後のお言葉が嬉しかったです。
by さくら (2008-08-29 22:55) 

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