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感想@漫画「ぼくらの」月刊IKKI2008年9月号*ネタバレあり [ぼくらの:感想]

鬼頭莫宏先生の連載漫画「ぼくらの」月刊IKKI2008年9月号感想です。

ネタバレを含みます。
単行本派の方、本誌をこれから読まれる方はご遠慮下さい。



前回(2008年7月号)の感想はこちら↓
*8月号は休載でした
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2008-05-24

単行本の感想はこちら。
全体と第1巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24
第2巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-1
第3巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-24-2
第4巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25
第5巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-1
第6巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-2
第7巻の感想↓
http://blog.so-net.ne.jp/himezakura/2008-02-25-3
第8巻の感想↓
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2008-02-25-4



────

今月号を読み始めてすぐに、
「あぁ、今回は久し振りに泣かずに済むかも」と思い、
ちょっとホッとしました。
移動する車中での、ウシロとマチの他愛ない会話に救われました。



というのも、これまでの感想の記事でも散々書いてますが、
私、この「ぼくらの」という漫画が本当に大好きで
良くも悪くも毎回続きを読む度にショックを受けてきたのですけど、
本誌であるIKKIの発売日が近付くと、気持ちがズーンと重くなるというか、
また辛いシーンで泣かされるのかなぁと
憂鬱になってしまっていたんですね。
読むも読まないのも私の勝手ですし、
早く続きを読みたいという願いも本心なのですが、
読みたくない、辛い思いをしたくないというのも事実で。
なので、亡くなったジアースのパイロット達の家族に会いに行くという
いかにも“最終決戦間際!”な展開にもかかわらず、
今回はその戦闘そのものがなかったからか、
少し心に余裕を持って読むことができました。



それは、今回、二人が訪ねた先がワクの家だったからかもしれません。
最初のパイロットということで、
これはもう、予想通りでした。
そして、息子が死んだ後に様々なことがあり、
後になって、
これらが一連の出来事で、息子も深く関わっており、
その早過ぎる死もこのせいだったと分かったワクの父母は、
ある種、達観してしまったのだなぁという印象を受けました。
勿論、ワクが死んだ時は物凄くショックだったでしょうけれど、
その死から今までの間に
父母の中で流れた時間が経過し過ぎたのだと思いました。

いえ、実際の月日はそう流れてないはずなのですが
(半年ぐらいですよね)
次々とおかしなことが起き過ぎていることと、息子の死を
無理につなぎ合わせなければいけないことが、
あの夫婦をああいうふうにさせたのかなぁと思ったんです。
普通、息子を亡くして半年ぐらいしか経ってないのなら、
深い悲しみに暮れる生活を送っていても仕方ないはずなんです。
でも、敢えて会い、ウシロとマチを自宅に泊まらせたのは、
二人の為でもあるのでしょうが、
夫婦がつけるけじめでもあったような気がしてならないです。

作中では、数々のパイロットが亡くなりました。
事情を知る前に我が子を亡くした親と、
知っていて亡くした親の二パターンがあります。
その中でも、
このワクとコダマ場合は当人すら自覚してなかった死なので、
前者は更に二つに分けられるんだなぁと思いました。
戦闘後に死ぬと分かってからは
パイロットたちは、その直前に
言わば家族に怪しまれるような行動を取っていたじゃないですか。
ワクとコダマの場合はそれがなかったので、
その後のパイロットの家族(ダイチ以降)とはまた違うんだと
改めて感じました。



そして、皆を洞窟に誘った件で自責の念を感じているらしいマチを
会話の中とはいえ、ウシロがちょっとかばったような発言をしたのが
とても良かったと思います。
以前の彼だったら、あそこは絶対に黙っていたはずです。
ウシロは精神的に大きく成長したんですね。
なのに、マチの後に死ぬのが確定してるとは……
今さら言う言葉でもないですが、無情です。悲しいです。
でも、死の直前まで成長するのが人間なんだなとも思いました。



話を少し戻します。
車中での飲み物のやり取り(砂糖増量)は
変に大人ぶっていたウシロの子供っぽさが出ていて
おかしかったです。
意外だったけれど、こうして実際に読んでしまえば
「あぁ、ウシロらしいな」と素直に受け止められる
(ストンと納得できる)
とても現実味のある良いエピソードだと思いました。
そしてカンジ!!!
そうか……女の子の裸に動じないウシロが不思議でならず、
それは良くも悪くも母親がそばにいないせい
(性をあまり意識してない)環境のせいかと思いましたが
違ったんですね。
カナちゃん云々は、私の中ではありませんでした。
マチが言ったので、「あぁ、そういう見方があるのか」と思った程度です。



そして、ウシロの「ぼく」。
最初にこの言葉が出た時や、ワクの家を出た時は
マチのツッコミも相まって、私もニヤニヤと笑うばかりでした。
だから、最後、「ぼくら」ときて、「ぼくらの」に至った時は
完全に不意打ちを食らっていました。
前述のように、今月号こそは泣かないだろうと思っていたのに
この「ぼくらの」という台詞で、ボロッと泣きました。
そしてそして、その後の言葉が続かないのも良かったです。

頭の中では、暫くの間、
アニメOPの「アンインストール」がぐるぐる流れました……。

作中で出てくる物語の鍵となる言葉が、作品のタイトルになることは
よくあることで、珍しくも何ともないですが
これは物凄く良かったと思います。
「ぼくら」っていう言葉は、見ての通り、
「自分たち複数の人間」という意味です。
これを、「ぼく(わたし)」の数が多い時でなく、
どんどんと減っていき、
こう言える最少人数に遂になってしまった今になって出してきたことで
言葉に深みが出たと思えます。
自分は一人じゃなく、もう死んでしまったけれど他の皆もいたんだ
──という実感が湧いてきます。

今回の「ぼくらの」の台詞は、
この作品のロゴの「の」の右側が
まるで消しゴムで消されたかのように欠けていると初めて知った時と同じくらい、
衝撃的でした。



二人は、パイロットが亡くなった順番に家を回るのでしょうか。
だとすると、次はコダマの番です。
コダマが父や兄をどう思っていたのかや、
父親がコダマをどう思っていたのかは作中で書かれていましたが、
言わばかやの外の立場だった兄たちが
コダマをどう思っていたのかは興味深いので、
とても楽しみです。





────
感想は以上です。
お読み下さり、ありがとうございました。

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続きの10月号の感想も書きました。
http://himezakura.blog.so-net.ne.jp/2008-08-26-1

宜しければ、合わせてどうぞ。


2008-07-31 20:46  nice!(0)  コメント(8) 
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コメント 8

読んでみたけど

あまり頭は良さは感じなかったが、丁寧に読む努力でもって
人様が読める感想文にはなってると思う
つまり批評ではなく感想、ということ

ウシロが「ぼく」なんて言葉を使うのは違和感なかったのか?

by 読んでみたけど (2008-08-04 05:33) 

さくら

>読んでみたけど様

こんにちは、初めまして。コメントありがとうございます。
読みにくい感想文にお目通し下さったようで、お礼を申し上げます。
はい。こちらは、記事のタイトル通り「感想」です。
批評なんてとんでもないです。
批評を行なうには、
それを書けるだけの語彙や文章力が私に欠けているのは勿論ですが、
根本的な読解力が足りないので、無理です。

ウシロの「ぼく」発言については、
違和感ありまくりでしたよ。
上記の感想でも書きましたように、
だからこそマチと一緒にニヤニヤしちゃいました。
by さくら (2008-08-04 17:32) 

うみ

私も「ぼくらの」が好きで毎回ないてしまいます。。
本の感想とかもしっかり書きたいけど、ないちゃうし切ないしで、
しっかり読み込むことができなかったので、感想を読んで
「そうだったんだ!」と気づくところが多かったです。
単行本は2月、8月発売だからそろそろ9巻がでるんじゃないかと
楽しみ半分怖い感じです。
雑誌も自分では読めない(チキン・・・)ので、感想をいつも楽しみにしてい
ます!
これからもがんばってください!
by うみ (2008-08-09 13:32) 

さくら

>うみ様

こんにちは、初めまして。
感想をお読み下さった上にコメントまでお寄せ下さり、
ありがとうございます。
ネタバレがかなりありますけれど、大丈夫でしたか?

単行本未収録の話がたまってきているので
うみさんのおっしゃるとおり、
そろそろ次の九巻が出るかもしれません。
私は待ちきれないので、本誌を追いかけるようになりましたが
単行本で通して読むのは、また違った楽しみがあるので
早く出ないかなぁと待ちわびています。

また宜しければ感想を読んでやって下さい。
頑張ります。励ましのお言葉、ありがとうございました。
by さくら (2008-08-12 14:52) 

ちんちら

さくらモチ様

はじめまして。
私も最近「ぼくらの」の感想を書くようになりました。
初めて読んだ時は救いのない漫画だな、と思いました。
それに少年少女たちがあまりにも死に対して向き合いすぎていて。
こんな少年少女達を描きたかったんだろうな、と思いました。

私は深い話の作品が好きで。
55回は、イスというものの考え方が好きでした。
ぼく->ぼくら->ぼくらの、は正直かなり強引かなと(笑)

トラックバックさせてもらおうと思ったらやってないんですね。残念。
といっても私もほとんど使わないのですが。

これからも感想がんばってください!

by ちんちら (2008-08-26 17:02) 

さくら

>ちんちら様

こんにちは、初めまして。コメントありがとうございます。

仰る通り、「ぼくらの」という作品には救いが無いですよね。
私も、何度読み返しても胸が潰れるような思いがします。
でも不思議なことに、
死を意識すると、「残された生」も嫌でも意識してしまうので、
鬼頭先生はそうした事も含めて狙って描かれてるのかなと
思っています。

「ぼくらの」発言は、強引かもしれませんが、
私は感想でも書きましたように
「やっと主題が出た!」という思いでいっぱいでした(笑)。
最後の戦闘の前ですから
ちょっと大袈裟に無理っぽくでもタイトルを出して頂けて
私は嬉しかったです。

トラバは、ブログを始めた当初は受け付けていたのですが
エロ広告と宣伝ばかりだったので
止めてしまいました。すみません。
記事やブログへのリンクはご自由になさって構いませんので
宜しければ貼ってやって下さい。

応援のお言葉もありがとうございます。
ちんちら様もご感想を書かれているとのこと、
頑張って下さいませ。
ありがとうございました。
by さくら (2008-08-26 21:13) 

ちんちら

さくらさん

ハンドル誤って申し訳ないです。
さくらさんの25日が近づくと憂鬱という言葉が印象的です。

救いが無いと書いたのは、全員死ぬことをはじめから決めていたからです。
多分死を意識した少年少女達を描きたかったのだろうと思いましたが。
深い話ですし、その中に救いもきっとあるんだろうと思います。
死を意識しなければ生も意識できません。
それはパンドラの箱でしょうが。

「ぼくらの」というタイトルはどんな作品にも応用できるものだな、と思っていました。もう少し必然性があれば良かったかな、と個人的には思いましたが、タイトルに触れない場合もあるのでやはり「やっと触れてくれた」と私も思いました。

トラバは私も日に100通位宣伝用やエロが入っていましたが、設定を変更して今はへんなトラバはあまりこなくなりました。
といっても全然使っていません。
私もあまりトラバをするほうではないので。
ただ新しい作品の感想書き始めはやっぱりみんなと繋がったほうがいいかな、と。
あまり「ぼくらの」の感想を書いている人はいないようなので。

もしよかったら私の感想も読んでみてください。
検索すると簡単に見つかると思います。

by ちんちら (2008-08-27 17:16) 

さくら

>ちんちら様

こんにちは。
ハンドル名の件はお気遣いなく。
わざわざありがとうございます。

>「ぼくらの」というタイトルはどんな作品にも応用できる
その後に何の言葉をつけるのか、
それを読者に委ねていたり、
主要登場人物のあだ名が単語になってたりするのも
深いですよね。
これから
まだ知らない単語を思わせるような出来事があるのかなと
期待しつつ怖がっています。

コメントありがとうございました。
by さくら (2008-08-29 23:00) 

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