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感想:小野不由美「丕緒の鳥」十二国記*ネタバレあり [アニメ・ゲーム・漫画・小説]

小野不由美氏の小説・十二国記シリーズの書き下ろし新作が
新潮社の雑誌yomyom(ヨムヨム)Vol.6で発表されました。
タイトルは「丕緒(ひしょ)の鳥」です。
1.jpg

6年振りの新作だとか!
私が初めて十二国記を読んだのは4〜5年ほど前なので
初めてお迎えする新作でもあります。
ネットで噂として情報を耳にしてから本当に楽しみにしていました。

実は、発売日の2月27日はバタバタしていたので、
入手できたのは昨日(29日)です。
うちは田舎なので、入荷はまずしていないだろうと思い、
取り寄せをお願いするべくyomyomのメモを持って最寄りの書店に行ったら、
「あ、yomyomですね。こちらです」と店員さんに言われて、
文芸書のコーナーに連れていかれました。
そこに文芸書のコーナーがあったのも初めて知りましたが(笑)
yomyomが入荷されていたのにも驚かされました。
最後の一冊でした!!!
裏表紙に傷みがあったのが残念ですけれど、待つのは嫌なので、
買えて良かったです。


昨日中に終わらせなければいけない原稿があったので
ざーっと読んだ後、これが終わるまで封印し、
そして日を跨いで読みました!!

シリーズファンの方に、是非お勧めします!
他の新作がいつ出るのか、
また、これがいつ単行本化されるのかが分からない現状では
増刷が掛かる今の間に入手されるのをお勧めします。
また、シリーズ未読の方も、
これを機に読まれたりアニメを見られたりするのも良いと思います。
(私はアニメの出来は良いと思っているので……)


以下、ネタバレを含む感想です。未読の方はご注意下さい。
感想を書く前に。

十二国記シリーズは全て読んでいて、
単行本も手元にあるのですが
何分、読むのが久し振りですので、
設定や登場人物などで
曖昧だったり間違えていたりする記述があるかもしれません。
もし文中に誤ったことがありましたら是非お教え下さい。


さて。
今回は慶の国
──陽子が女王となった直後を主な時間軸とするお話でした。
あまりこういう呼び方をするのは好きではないのですが、
私はこのシリーズのファンなので、思わず脳内で叫びました
「小野主上ーッ!!!!」

新作を読めて幸せでした。
そして、もっとがっつり
(長いお話を)読みたいなぁとの欲も出ました。
十二国記、大好きです。



読む前は、慶国のお話だという点以外は知りませんでした。
「丕緒の鳥」というタイトルなので、何かの暗喩かと思いきや、
丕緒という人物のお話でした。
(尤も、本当に「丕緒の鳥」という言葉自体、比喩だったわけですが)

久しぶりの新作に、初登場の人物が主人公……とあって、
多くの読者が、喜びながらも探るように(今回はどうなのだろうかと)
読まれたかと思います。
それが、慶国の民が新しい女王を迎える時の
気持ちにも似ているのではないかと
ちょっと想像してしまいました。
尤も、女王が続き、
不遇な世ばかりの慶国の民には諦めムードが漂っていて、
陽子を迎える点についても、皮肉交じりで、
違うと言えば違うでしょうが。

シリーズ小説を書く時のテクニックみたいなもので、
今回のように初登場の人が主な時は
読者の知っている情報を入れて
彼らをホッとさせることがあるのですが、
この話では、偽王と陽子の一件がそれに当たると思います。
初読の読者への説明も兼ねているので、一石二鳥なのかもしれません。
また、今回も女王だと知って
「長く続かないだろう」と落胆している丕緒たちに向かって
「そんなことないですよ。それに陽子は頑張ってるし」と
読者が心の中で言いたくなるように台詞などが仕向けてあって、
上手いなぁと思いました。



これまでの宜しくない世のせいで、
陽子を甘く見ていた
(上記のように諦めていた、考えることすらしなかった)人が、
その人柄や考え方に触れて、彼女への見方を変えて、
新しい時代の到来を感じる……というのは、
この十二国記シリーズの王道パターンだと思います。
実際、何度かこのようなエピソードが多く使われています。
本ごとに主人公は替わっていますが、
やはり陽子が主だという認識で合っているはずです。
で、陽子が嫌いな人は面白くないかもしれませんが、
私はこのシリーズの中で陽子が一番好きで、
思い入れもありますので、
話の最後で陽子に呼ばれた丕緒が彼女と話すシーンは、
やはり読んでいて嬉しくなりました。
陽子が、立場が下の者相手でも礼儀を欠かさず
(王としてではなく、人に対する最低限の礼儀として)
丕緒を「あなた」と呼ぶのがとても好きです。
アニメの声優さんの声で、脳内で再現してみても、
凛とした強さの中に、
優しさや親しみを伴った柔らかみを感じられました。



射儀は、クレー射撃のようなものだと想像しました。
果たしてこれが合っているのか……全く自信がありません。
でも、それで音楽を奏でようとするのは凄いですね。
時間も労力も金も掛かることです。
だからこそ、そういう専門職の方々が総出で頑張っているようですが。
慶の民全てが陽子に会ったり声を聞いたりすることは無理ですが、
少なくとも、彼女と直に関わった人がこういう心境の変化を体験して
良い方に替わっていくのは、いいと思います。
読んですっきりするというか、「あぁ、良かったな」と素直に思えます。
陽子と丕緒の場合は、それこそ射儀が会話の代わりになるのでしょう。
そう、文中で祖賢が言ってましたが(P37)
読んだ後に「心が晴れる」ような作品でした。
「何となく心が温もって、自然に笑みが零れる」
お話だったと思います。



ちょっと引っ掛かったのは、
陽子のために本当に新しい陶鵲を作らなければならないと思った丕緒が
羅人府の房間にこもった時に、
スランプに陥るというか
何も案が浮かばない自分を知って愕然とするシーンです(P47)。
それが、十二国記に対する小野先生の状況ではないですよねと
確認したくなりました。
作中で丕緒が素晴らしい陶鵲を作り、
最後に陽子から賜った言葉で新作のネタを思い付いたように
どうぞ小野先生も今回だけでなく、
また次の作品を出して下されば良いなぁと
ファンの一人として切に願いました。
できれば、戴の国の続きを……!
彼らの現状を早く知りたいです。

もう一つ、P27の「とんでもございません」が気になりました。
正しくは「とんでもないことでございます」ですね。



それにしても、最後の丕緒の想像
(一羽の鳥が矢を避けて陽子の元に飛んでいく)は
素敵だと思います!
陽子と丕緒が二人だけで射儀を楽しむ図も
ありありと頭の中に浮かんできました。
今回、挿絵は無かったのですが、
山田氏の絵でもアニメでも良いのでこの図を見てみたいです。
蕭蘭が作った梨の木の花が咲くシーンも。
さぞかしきれいなんだろうなと思いました。



感想は以上です。
お読み下さってありがとうございました。
せっかくなので、
小説を読み返したりアニメを見たりしたいと思います。




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2008-03-01 16:33  nice!(0)  コメント(0) 
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